- 作者: ますむらひろし,原作:宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1995/03/30
- メディア: 文庫
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一応、バージョンについて簡単に説明する。『銀河鉄道の夜』は、宮沢賢治によって何度も書き直された作品で、いくつかのバージョンがあるが、大きく分けると、話がコンパクトにまとまった最終形と、ブルカニロ博士が登場し、哲学的な議論が追加された初期形の2バージョンがある。(つまり最終形では、それらの追加シーンは削除されている)
ますむらひろしは、S58年に最終形バージョンを発表し、S60年に初期形バージョンを発表しており、内容が重なるところも当然あるが、その二作品がそのまま収録されているのがこの本である。
したがって、この本が特徴的で、かつ面白いところは、この二作品を並べて見ることで、ますむらひろしの漫画技術の向上と、賢治の原作へ少しでも近づこうという意図がよくわかることだ。
「作画技術」でなく「漫画技術」と書いたのは、作画が劇的に上手くなっているわけでないのに、全体の流れがスムーズになっているからだ。つまり、コマ割りや、場面の見せ方(カット)の工夫が上手く作用して、より賢治の原作からイメージされるものに近くなっている。
先日読んだ『イーハトーブ乱入記』で、直接の指摘のあった部分も多く、漫画の奥深さを改めて感じることのできた本だった。
『銀河鉄道の夜』については、朗読⇒映画⇒漫画⇒と来たので、そろそろ、活字で読んでみてもいいかなあと思っている。(笑)