Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

黒井克行『工藤公康「42歳で146km」の真実―食卓発の肉体改造』

工藤公康「42歳で146km」の真実 (講談社+α新書)

工藤公康「42歳で146km」の真実 (講談社+α新書)

もともと、春頃に読んだ幕内秀夫『粗食のすすめ』で言及があり、工藤公康(現在横浜ベイスターズ)の食生活には興味を持っていたのだった。それからだいぶ日が経ってから、図書館でこの本に出会えたのは、食をもう一度見直そうというサインなのかもしれない。
内容としては、副題にあるとおり、健康維持のための食事についての考え方が示されているが、基本的なコンセプトは、幕内秀夫の著書と大きく変わらない。(以下、4章を要約)

  1. 身土不二(その土地で育った人は、そこでとれるものを食べるのがベスト)
  2. 一物全体食(魚でも野菜でも材料を捨てずに食べる。例えば大根の葉や魚の内臓)
  3. 旬にこだわる(温室栽培や輸入物よりも、その季節、その地域でとれたものを食べる)

特に(1)が特徴で、日本人には、欧米で作られた栄養学は、そのまま適用できないとされ、乳製品やパン類が推奨されないことの根拠になっている。逆に(2)は、玄米食が推奨される根拠となり、とにかく米を食べるために、おかずを摂る、というくらい米をたくさん食べるのが健康の秘訣とのこと。結局、(1)〜(3)をまとめると、行き着くところは、日本の伝統食といえる、ご飯と味噌汁、ということになる。
工藤の奥さん(作中は「お母さん」とされる)は、いろいろな本を読み漁り、各地の食材を(水も)取り寄せるほど、偏執狂的に食の道を突き進む一方で、それがストレスにならないように「あまり気にしない」一面もあり、締めるところは締める、というかたちで、心理的な面も含めてうまく家族の健康を管理しているようだ。
また、プロ野球投手の食事ということで、登板前のげんを担ぐ工夫や、5人(!)の子どもがいる家庭ということで、食事の際のコミュニケーションなど、単純に食事内容だけの話に終始していないところが面白かった。
最終章はレシピと冷蔵庫公開があり、なかなか親切な内容。にんにく粒ごとと、コンビーフ!を入れるトマトカレーは、試しに作ってみたが、ちょっと珍しい感じだった。

最後に、「お母さん」の述べる基本の五箇条を。食事だけに限らず、いろいろなことに通じる考え方だと思う。

  1. 人から聞いたことは鵜呑みにしない
  2. 本で読んだ知識をそのまま実践しない
  3. 常に疑問を持ち安易に妥協しない
  4. 現在のやり方が必ずしもベストではなく、さらに上を求める
  5. 食の世界は奥が深く、舐めてかかったら命取りになる

補足

本文中で「この材料は絶対に使用しない」とされながら、その理由が明記されない部分があるので少し確認。

  • 白砂糖(P99):検索すると、センセーショナルな言葉がいろいろ出てきた。確か「一物全体食」の関連で、幕内秀夫の著書にも言及があったと思うので再読時に確認してみよう。
  • サラダ油(P159):おそらくトランス脂肪酸の問題を言っているのだろう。こちらも、うちではバリバリ現役ですが。