Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

新海誠『秒速5センチメートル』

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」の新海誠監督が、卒業と同時に離れ離れになった少年少女の淡い恋を描いた青春ラブストーリー!小学校の卒業と共に離れ離れになった少年・貴樹と少女・明里。互いに特別な思いを抱きながらも伝えられず、時間だけが過ぎて…。二人の再会を描いた「桜花抄」、少年・貴樹を別の人物の視点で描いた「コスモナウト」、2人の恋の行方を描いた「秒速5センチメートル」を収録。

非常に評価の高い映画であるということと、未見ながらも、「セカイ系」という言葉の説明の中で必ず引用される『ほしのこえ』の監督の作品であることのみを事前に知りながら正月休みにDVDで見た映画。
3部構成の1部「桜花抄」は、高い評価の理由の一つである背景美術には驚きながらも、主人公・貴樹の、自意識過剰で言葉が堪能すぎる中学生ぶりにイライラするなど、冷めた目で映画を見ていた部分はある。上に引用した「Oricon」データベースの説明で書いてあるような「少年少女の淡い恋を描いた青春ラブストーリー」に、没頭できるほど、自分は純真な心を持っていない。
それは、舞台を種子島に移した第二部「コスモナウト」でも同じで、高校生になってもモテ過ぎな主人公に反感を覚えすらした(笑)し、やはりセンチメンタルすぎる内容だと思っていた。
しかし、社会人になった貴樹の独白メインの第三部「秒速5センチメートル」には、グッと来た。「映像体験」という言葉がふさわしいと思うが、ラストの山崎まさよしOne more time, One more chance』での映像体験は、非常に素晴らしいものだった。この映画のテーマは「速度」ということだが、ラストのビデオクリップ(的なもの)には、非常に多くの「時間」が詰め込まれ、細かいカット割りは、過ぎ去った時間の「速度」と二人の「距離」を感じさせる力があった。そして、それは恋愛という要素だけではなく、誰にでも共感できる、もっと普遍的な要素であると感じた。それは年末に見た「みんなのうた」でも同様で、ビデオクリップという短距離ランナー的な形式は、楽曲(歌詞)+映像以上のものが、見ている側から引き出されていく力を持っているのだろう。
この、3部を見ると、小田急新宿駅両毛線岩舟駅種子島などの、写実的ともいえる細かい描写が生きてくる。センチメンタルな懐古趣味ではなく、結構キツイこともある現実を描いた作品であるということが伝わってくる。
なお、こういうDVDをレンタルした場合、結構飛ばすこともある映像特典だが、新海誠監督のインタビューは非常によかった。*1監督本人から語られる作品テーマという、情報的なもの以上に、彼の、知的で、誠実そうな語りが、自分の作品評価を上げたのは確実で、ほとんど興味の無かった『ほしのこえ』も、当初は半ば自主制作的につくったというエピソードを聞くと、観たい気持ちになってきたし、昨年末に出た小説版『秒速5センチメートル』にも興味が沸く。これからいくつかの作品を追えることが楽しみになってきた。
1時間ちょっとと短いし、いろんな人に薦めたい作品。
あと、山崎まさよしOne more time, One more chance』は、すぐにでもカラオケで歌いたいなあ。

*1:間延びしないのは、監督の喋り方もあるが、インタビューの後ろに流れる作品内の音楽がよかったのもあると思う。