- 作者: 岩本ナオ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: コミック
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しかし、この話、3巻くらいまでは話が平板で緩すぎて、ほとんど盛り上がらないのが寧ろ新鮮。
ここまでつまらないと逆に興味がわいてきて7巻まで読破。
一番のポイントは、岩本ナオのやる気。
毎週アニメ放映を楽しみにしている『バクマン!』*1を見ていて、漫画家って夢はあるけど、スピード感が半端ない大変な職業なんだな、と改めて思ったのだが、『天狗の子』には『バクマン!』の熱血が全く感じられず、月刊flowers大丈夫かと思ってしまう。
また、4巻でカレーを作るシーンが出てくるのだが、ストーリー上も「不味いカレー」であることを考慮したとしても、ここまで不味そうにカレーを描くか?(ルーが完全にベタ塗り。ブラックカレー*2以来!)羽海野チカが描く美味しそう(そして楽しそう)な料理の数々に慣れてしまった自分には、衝撃的だった。
この人、嫌々漫画描いているのではないかと不安になってしまう。
へたうま(へたへた?)だとか、オフビートだとか、ローファイだとか、いろいろ言葉はあるだろうが、とにかく体温が低い。
特に「上手くない」と評判の絵柄についての自分の印象は「古臭い」。子どもの頃に親戚の家で見た「りぼん」の裏表紙の(「ときめきトゥナイト」が連載していた頃の)「日ペンの美子ちゃん」を思い出す。
今の時代に、このクオリティを出せるのは珍しいと思う。
そして、わざとやっているのでは?と思うほど輪をかけてやる気のない「あとがき」。
コミックならではの要素を入れようと気合いの入りまくった『ワンピース』なんかと比べると、あまりの落差に愕然とする。とにかく、この「あとがき」は、凄い。このレベルなら、ページ割いて描くなよ、というほどの力の抜け具合。大丈夫か?小学館?と、もはや監督を責めたいほど。
でも、いい味があるのは確か。
話自体も、4巻になって、主人公の秋姫がタケル君にフラれてからは、登場人物の設定がやっと定着してきて、普通のマンガとして読める。そして、今の女子高生はこんな感じなのかもと、リアルに感じさせる秋姫の親友たちの行動とセリフ。
- 主人公の女性が最後に死んでしまうらしい純愛小説「虹空」(映画化されている)にみんなで夢中。
- 雑誌「月刊女子」「エロカワ」を読んで、そして「虹空」に影響されて“ほんとの恋”を探そうと奮闘。
- 「校長、ついにYes,we can 口にしたな」「絶対言うと思ってたぜ」「なんかさー時事ネタ、絶対取り入れてくるよね」「もっとさー南北戦争のリー将軍引用してほしいよなー」とコマの隅で呟かれる、無駄にリアリティのある雑談。
すべてがストーリー本体とは無関係にもかかわらず、この話の中ではとても重要。
通常なら、「主人公が天狗の娘」という設定を生かして、うる星やつらみたいなドタバタストーリーを作ろうとするはずなのに、一貫して地方の女子高生の日常に重きを置いたバランスがいいのかもしれない。
4巻以降は、登場人物たちにしっかり愛着を持てる良い作品になっていると思うので、初めて読む人は一巻だけで止めないでほしいです。