- 医薬経済社
- 1575円
書評/健康・医学
本が好き!さんより献本です。ありがとうございます。
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以前から、「コーヒーが●●病の予防に効果!」などという記事がたびたび出るのを疑問に思っていた。
自分の解釈では、薬学・医学研究者にコーヒー好きな人が多く、自己防衛本能が働いて、自然にそういう結論が出やすくなるのではないか?と思っていた。
が、この本を読むとそうではないらしい。
謝辞の部分にもあるように、英語の論文だけでも1356篇、その他に日本語のものが山ほどという膨大な資料をもとに書かれた以下のような結論には、何も否定できない。
いや、ひとつだけいうならば、先日読んだ『夜中にラーメンを食べても太らない技術』では、コーヒーは、缶コーヒーに限らず、「悪い油」の塊だから避けるべき、という話があった。が、膨大な論文を前にしたら、「悪い油」理論もお手上げだろう。
本書の前半(第一章)は「珈琲一杯の薬史学」として、コーヒーの歴史を辿り、本題である後半(第二章)では、病気の予防効果に関係する化学成分に踏み込んだ内容になっており、全体的には小難しい内容が多い。
そんな中で、「お!」と思ったのは、パーキンソン病予防効果の部分。
パーキンソン病は、確か(『レナードの朝』で有名な)オリバー・サックスの著作で読んだ覚えがあるが、幻視などの症状が出てしまう厄介な病気で50歳を超えて発症する。
パーキンソン病を予防するコーヒーの効果は、タバコに比べるとずっと弱いものだ。実は喫煙とパーキンソン病の疫学調査結果は明確で、喫煙者はパーキンソン病にならないと言い切れるほどである。(P72)
このあとですぐにタバコの害についての説明があるものの、タバコに、こういった効果があるとは知らなかった。(ちなみに自分は非喫煙者です)
あとは、コーヒーは一日に何杯飲んでいいかという話が印象に残った。(P83)
- 医薬品としての標準的な考えではカフェインの一日最大摂取量は900mg
- 一杯のコーヒーに含まれるカフェインは100〜150mg
- つまり一日に6〜10杯が限度
その後、メタボ予防の方法(P96)として、「コレステロール低下薬を服用する」よりも「毎日一杯のコーヒーを飲む」方が2倍の効果があることし、「毎日5杯」なら「糖吸収抑制剤を服用する」方法の半分の効果がある、と述べていることから考えると、作者のメッセージとしては、5杯くらい飲んどけ、という話なのだろうか。
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本書P43によれば、医薬品・健康食品に関する情報は、信頼性の低い順に以下の順に並べられるという。
- サクセスストーリーや権威者の意見
- 生体材料を使った試験管実験
- 小規模ヒト試験・動物飼育試験(数10〜100人程度)
- ヒト対象の大規模疫学試験(数千〜数万)
- 新薬の臨床試験
再び『夜中にラーメンを食べても太らない技術』を挙げるが、「深夜に宅配ピザを食べたくなったらオリーブオイルをかけて食べろ」などという、ネタ的は面白いながら信頼性に欠ける話よりも、疫学調査に裏付けられたコーヒーを毎日一杯飲み、地味に健康になっていこうと思ってしまうのだった。