- 作者: 美内すずえ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1994/06/01
- メディア: 文庫
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この巻では、姫川亜弓の母・歌子さん(サリバン役)が非常に魅力的な女優として描かれています。
実の娘・亜弓との共演を無理なくこなした歌子さんが、マヤとのいわば真剣勝負によってその実力をフルに発揮するシーンは非常にプロレス的です。さらに、マヤが歌子さんに認められたことは、この巻までに膨れ上がった亜弓へのコンプレックスを中和する働きがありました。(逆に、母を乗り越えるべき壁と設定している亜弓さんにとっては屈辱の敗北となりました)
月影先生に指導を受けないままで舞台に立った「奇跡の人」シリーズで、歌子さんの存在は、北島マヤの成長の一端を担う鍵となっています。教育によって人間性を獲得して行くという意味では、劇の内容が似通っている『狼少女ジェーン』のときには無かった要素なので余計に目立ちます。
(「ジェーン」のときの“教師”役だった桜小路君の力不足という面もあるかもしれません)
なお、この巻の解説は中島梓(栗本薫の別ペンネーム)。「主人公の現実にスターへとのぼっていくドラマ」と、そのヒロインたちの演じるさまざまな「劇中劇」自体との重層構造によって成立している「バックステージもの」(最近だと、ナタリー・ポートマン『ブラック・スワン』もこれに当たるのでしょうか)というジャンルの中でも出色の出来としています。
ここら辺の構造的な分析は読みやすく、さすがに評論家だけあります。それにしても、グイン・サーガもガラスの仮面以上に続くと思っていたのに・・・。