Yondaful Days!

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恐るべし北島マヤの「孤独力」〜美内すずえ『ガラスの仮面』11

ガラスの仮面 (第11巻) (白泉社文庫)

ガラスの仮面 (第11巻) (白泉社文庫)

北島マヤ17歳(くらい?)の心の動きが目まぐるしいです。

  • 期せずして姫川亜弓と同じ舞台に立つことになった「夜叉姫物語」。舞台が終わって、近づいてきた亜弓さんの握手+「まってるわよ」のひとことで、自らを分かってくれる人の存在に救われたマヤ。
  • 演劇への情熱が再び盛り上がり、月影先生に教えを請うも断られた上、「まず汚名を返上しなさい!」と一喝されてションボリ。
  • 立ち直り、川辺で子ども相手にパントマイムの練習するマヤ。
  • 文化祭での「女海賊ビアンカ」の一人芝居成功後、久しぶりに月影先生にアドバイスを授けられ、もっと教えてください!と頼むも、「自分の演技を伸ばすことができるのは自分自身だけ」とまたもや断られ、決意を新たに。
  • 一人舞台「通り雨」に向けてパントマイムの練習を続けるさなか、テレビで姫川亜弓の一人芝居「ジュリエット」の練習風景を見て、久しぶりに自信を失うマヤ
  • 再度、月影先生に演技指導を依頼し、観客のことが分かるようになった褒美に、指導を受け、「気づき」を得るマヤ
  • 直後に月影先生が発作で倒れ、真っ青なマヤ
  • 速水真澄に、月影先生の病状を相談したあと、無意識のうちに速水真澄を信頼していたことに気づくマヤ

月影先生姫川亜弓、速水真澄、主要登場人物の一言一句に感動し、動かされ、究極的には誰にも頼らず独りで道を切り開いていく北島マヤの性格は、勿論、この漫画の重要な核となっていますが、より普遍的には、こういった反応の良さと行動力は、さまざまな成功譚に共通する部分なのかもしれません。


ところで、この巻で何度も(主に柱の陰から)登場する一ツ星学園演劇部の部長

くやしいわ
たったひとりでやっている芝居になど負けたくない……!
北島マヤ! 危険な子……!

と名台詞を吐くシーンは勿論、ほとんどの場面で「白い眼」になっている!という、ガラスの仮面には珍しいキャラクタです。横山光輝の漫画によく出てくるタイプの顔をしています。(例 バビル二世のヨミ様)
文化祭で、本家の演劇部以上の人気を勝ち得たあとの一人芝居「通り雨」を警戒して、部員に出した指令が「どんな稽古をしているかしっかり見張ってらっしゃい!」。泥団子食べさせたりしないあたりが優しいです。気になるなあ。


この巻には、絵だけ見ると爆笑を誘う亜弓さんのパントマイム練習シーンなど、名シーンもありますが、「通り雨」の練習を終え、マヤが布団を被りながら麗に呟くセリフが切ないです。

ねえ麗…
あたし お芝居やっててよかった
たとえひとときでも
この劇の間は
あたしに家族ができるのよ
あったかい家族という虹の中で生きられる…