(まだの人は、まずこれを予約しましょう。話はそれからです。)
Overblow Tour 2012 Live in Shibuya Club Quattro
- アーティスト: ORIGINAL LOVE
- 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
- 発売日: 2012/11/21
- メディア: CD
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前回のOverblowツアーでは初日に行って不満たらたらな文章を書き散らかしていたので、今回の初日参戦についてもぶーたれるのではと不安に思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことは全くありません。大満足でした!
さて、田島貴男文化祭(通称たじ★フェス)こと「ひとりソウル・ツアー2012」のメニューは以下の通りです!
- ジェンダー
- 築地オーライ
- ひとりぼっちのあいつ
- Good Morining Good Morining
- Deep French Kiss
- Deeper
- Masked
- 踏み固められた大地
- ビター・スウィート
- Hum a Tune
- 黒猫
- 接吻
- セックスと自由
- ディアベイビー
- The Rover
- JJJ
(アンコール)
- フリーライド
- カミングスーン
- 好運なツアー
(アンコール2)
- 夜をぶっとばせ
総論
オリジナル・ラブは昨年デビュー20周年を迎え、ファンも長くやっている人が多いから、ある程度、パターン化された流れの中で変化を楽しむ、という古典落語的な楽しみ方もある。
しかし、オリジナル・ラブ(田島貴男)のライヴには毎回「驚き」を求めてしまう自分にとっては、それでは物足りない。実際、今だから言うものの、昨年2月のひとりソウルは大興奮だったが、11月のひとりソウルのときは、既にマンネリを感じてしまっていた。*1予想段階でしつこく新曲というカンフル剤を切望してしまった理由もそこにあった。
ところが、そんな不安はどこ吹く風!今回はダレるような時間がほとんどなかった。よく(意味を考えないままに)進化とか深化とか書くことで、全てが前に進んでいるように錯覚してしまうことがあるが、今回は錯覚ではない。去年と同じ「Masked」一つとってみても、今回のひとりソウルは確実に進化した。
ポイントは何か?
2月のひとりソウルのときは、やはり「求道者」「音楽研究家」としての田島貴男が見えすぎてしまった感じがある。新たな技と合わせて新曲(「フリーライド」「セックスと自由」「好運なツアー」)をやったことも含めて、“学習発表会”的な部分があった。(うちの子の通う小学校では生徒たちが自分たちの学んだことを発表する会があります。観客に向けた発表ですが、観客の要望に応えたりはしません。焼きそばも売りません。)
今回の進化は何かと言えば、“学習発表会”ではなく、もっと観客の要望に応えて、客を楽しませることを目的とした“文化祭”的な進化なのだ。(強引)
田島貴男文化祭は、色んなみどころがあってホントに楽しかった。
「音楽ってこんなに楽しい、かっこいい」が伝わるカントリーブルースコーナー
あの、リゾネータギターというのでしょうか、仮面ライダー龍騎*2に、そのままライダーとして出てきそうなギターのカッコよさと、今回ギター演奏に大活躍したワインボトルを切って作ったスライドバー。さらには、田島貴男しか着こなせない全身ゴールドの衣装。そんなルックスの下で繰り出されるカントリーブルースアレンジの楽曲の響きは格別で、『Desire』の中で一番苦手だったはずのMaskedが、まずます好きになっていきました。そして、「たゆたう」というフレーズから「たゆたうドングリ たゆたうシマリス」(ぼのぼの)を思い出して常に意識が散漫になり、これも思い入れの少なかった「踏み固められた大地」。Overblowツアーの「哀しいノイズ」と同じですが、原曲よりもゆっくり大事に歌うことで倍増して伝わってくるものがありました。この時点で、欽ちゃんの仮装大賞でいう合格点は超え、頭の中では合格ファンファーレが流れていました。
「ひとりでできるもん」大道芸コーナー
ひとりソウルでは普通だったら一人でやらない曲もやる、というMCのあとに演奏された「Hum a tune」。通常の編成ではできないので、むしろ前回のバンドツアーでやる方が難しいかもしれない。元々が演奏時間の長い曲ですが、その長さが嬉しかった。
そして、演奏前に時間をかけてチューニングをし、“カレーのにおいがする”前奏に続き始まった「黒猫」のギターにはまたもや聴き惚れてしまいました。
「ビター・スウィート」からのこれら3曲の流れは、1996年の『Desire』から1997年の『ELEVEN GRAFFITI』の時代に戻ってしまう固め打ち。選曲がツボ過ぎて、頭がぼんやりしてしまった時間です。仮装大賞の得点盤は振り切れて壊れてしまいました。
文化祭の華 ステージでの「皆さんの要望にお応えします」的コーナー
ライブ後の感想で多く聞かれたように、この日のピーク*3は、以下の2曲までの流れだと思います。そして、それぞれ、観客の要望をわかりながら、それに応えるようなアプローチになっていたのが素晴らしかったです。研究発表的な要素は最も少なく、エンタメ寄りのアプローチになっていました。
まず「Deep French Kiss」も、どのくらい演奏されていないのかわかりませんが久しぶりのナンバーで、この時点で多くの人はスイッチが入っていたのでしょう。その後の「Deeper」は選曲にも驚きましたが、“ひとりソウル技術”を結集して、いやらしさを増幅させた楽曲となっており、女性陣は危険だったようです。自分はマイケル・ジャクソンのライブ映像でしか見たことがありませんが、多分あと一押ししていれば、“興奮しすぎて失神”する人が出ていたのではないかと想像します。
そしてもう一つ。「接吻」を踏み台!にして「セックスと自由」から「ディアベイビー」で最高潮まで盛り上げるという、この流れが素晴らしかったのです。
「ディアベイビー」という楽曲が潜在的に持っている“馬鹿さ”*4をどう増幅させるか、それを知り尽くしたパフォーマンスになっていました。ブレイク部分でロボットダンスこそ大々的には出なかったものの、口を尖らせてのドラム演奏(真似)、ヘッドホンを抑えながらのDJ(真似)、そしてサタデーナイトフィーバーのポーズで会場を多いに盛り上げておいて、終盤での「S」「O」「U」「L」の身振り。この「S」が最高過ぎて、心の中の得点表示板は真っ白な灰に燃え尽きるほど爆笑しました。あの下らない感じは、どこかで見たことがあると思ったら、さるマンの「ちんぴょろすぽーん」*5に似ているのかもしれません。
とにかく、これまでのライブで無かった2曲を導く流れ(の発明)が、ひとりソウルショウ2012の最大の成果かもしれないと思ってしまったのでした。だから、「ディアベイビー」のあとは、あまり長過ぎずに2曲で終わって大正解。アンコールはオーソドックスだったかもしれないけど、もう、それ以前が素晴らしすぎて、既にその余韻の中で過ごしていました。*6
テーマ展示「寂しい秋」
さて、オープニングに戻ります。
突然の「秋深し…」という言葉に続き、「皆さん寂しくありませんか」という呟き風MCから始まった一曲目は「ジェンダー」。これが歌詞間違えが多過ぎるグダグダぶりで、ジェンダーの歌詞はダメダメ説という持論を裏付ける形となりました。(持論については下にリンク張りました)
それにしても、何故、一曲目がここまでグダグダなのか?おそらく、ツアー全てを通して「ジェンダー」を一曲目に使うつもりはないのでは?(全公演で一曲目に使うつもりだったらもっと練習して来い!と心の中の星一徹が叫んでいます)そして、もっといえば冒頭3曲(街男〜飛行3兄弟)は全体の中ではむしろ浮いてないでしょうか?*7
これらの謎を解くにあたり、いつも頼りにしているオリジナル・ラブ歌詞研究科の方の意見が参考になりました。
- 俺だけじゃ ひとりじゃ 半分しか世界がない 足りない(「ジェンダー」)
- ごったがえすシチーを後に旅立つ日が来たのさ たったひとりで(「築地オーライ」)
- ひとりぼっちのアイツが来たカウンターまた午前2時過ぎ(「ひとりぼっちのアイツ」)
つまり冒頭3曲は全て「ひとり」に関する曲だというのです。オープニングからしつこく「秋=寂しい=ひとり」を連発していた理由がここで分かります。この3曲は、「寂しい」というテーマで縛った楽曲だったのです。
つまり、テーマが変われば曲も変わります。ずばり仙台公演では「秋=食欲」というテーマになり、これに伴って冒頭3曲はこうなります。
- サーディンの缶詰
- 少年とスプーン
- 液状チョコレート
あー、これだったら絶対に行きたい。「寂しい」じゃなくて「食欲」のときが良かった…。
次回以降
ただ、やっぱり新曲は演って欲しかったという気持ちもあります。
というのは、今回の形式を認めてしまうと、来年も、みんなが切望する楽曲(流星都市?アイリス?etc.etc.)を入れて、もしくは、アレンジし直して、というタイプの「ひとりソウル2013」が一丁上がりで出来上がってしまうからです。それには後ろ髪を引かれつつも心を鬼にして断固拒否したい。
やはり曲作りというかたちで最新型の田島貴男を見たいのです。
それにしても、今回これだけファン向けのサービスに徹していながらMCでは初めてのお客さんにもフォローを入れるという念の入れよう。さらに、投げキッスの連発や「こんばんは、原辰徳です」という謎のMCなど、その他こまごましたところにもサービスの行き届いた「たじ★フェス」。パフォーマーとしての能力(サービス精神!)が大幅にアップした初日でしたが、あまりに満足しすぎたせいで、かえって望みが高くなり、『白熱』前の一連のライブのように新しい作品が生み出される過程も見たいよな…と無い物ねだりをしてしまうのでした。
過去日記
- 『東京 飛行』を語る(7)〜ジェンダー (2007年1月) ←「ジェンダー」=頭でっかち論(肩に力が入り過ぎていて読みにくい!一部、今と意見が異なる部分も…)
- オリジナル・ラブ「Overblow Tour」初日(6/29@渋谷 クラブクアトロ)感想!(2012年6月) ←鞭と鞭(笑)
- 田島貴男ひとりソウルツアー感想(11/26(土)渋谷クアトロ初日)(2011年11月) ←絶賛しているようにも見えるが、確かにブギーバックのことしか書いてないw
- 田島貴男ソロ・ライブひとりソウルショウ2/9感想(2011年2月) ←ひとりソウルでも新曲披露してるじゃんか…今回も…
*1:感想には「今夜はブギーバック」のカバーのことしか書いていない…;
*2:調べてみると、一番似ている感じなのは仮面ライダーガイかな?http://p-bandai.jp/tamashiiwebshouten/item-1000015347/
*3:いや、ピークではなく、オーガスムスという言葉が適切だったのかもしれません(笑)
*4:切なさの裏返しというべきか。楽曲自体は別に「お馬鹿」ではありませんが。
*5:「ちんぴょろすぽーん」については知らない方は画像検索してください
*6:今回、少し前側に行ったこともあり、自分を知っている人に後ろから見られているという事態に・・・。終盤冷めていたように見えたみたいですが、そんなことはありませんよ。
*7:ただ、「ひとりぼっちのアイツ」は良かったです。やっぱりこれは盛り上がる曲です。ただ「ジンバック」とか「バーボンロック」という部分を観客に歌わせようとするのがよく分からなかったです。それを歌うと「ヘイ!マスター!」が歌いにくい。