Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

伊藤潤二の方程式(2)「罪悪感」

4/11のテレビドラマ「世にも奇妙な物語」で伊藤潤二の「地縛者」が映像化されるという。数多く映像化されている伊藤潤二の作品だが、これまで見たことがなかったので、楽しみにしている。

今回、前田敦子が、『世にも奇妙な物語 25周年スペシャル・春?人気マンガ家競演編』の「地縛者」でシリーズ初主演を果たすことが決定した。「富江」「うずまき」などで人気を誇る伊藤潤二原作「地縛者」をドラマ化した作品に出演する。

 ある日、街中に地面に縛り付けられたように同じ姿勢で全く動かない人間が現われ始める。危険を感じ誰も近づこうとしない中、「青空こころの会」で社会福祉士として働く浅野範子(前田敦子)は“地縛者”となった人たちに声をかけ始める。やっと口を開いてくれた人の話から分析しその土地になにか強い愛着があるために動けなくなっている、という推測をたてる。が、ついには範子の身近な人間までもが地縛者となってしまい驚きの真実が明らかとなっていく…というまさに奇妙な物語。


この「地縛者」という話は、今回取り上げる、伊藤潤二の王道テーマが含まれる傑作で、珍しく筋もシンプルで、これをドラマ化する題材に選んだというのはうなずける。


さて、伊藤潤二作品の面白さの源泉に個人的に切り込むシリーズ第二回。今回取り上げるのは、『恐怖博物館(4)案山子』で収録作品は以下の通り。

  • 赤い糸
  • 中古レコード
  • 贈る人
  • サーカスが来た
  • 蜂の巣
  • 地図の町
  • 首のない彫刻
  • 薄命
  • 寒気
  • 案山子
  • 遺書


地方の村落での、聞いたこともない奇妙な風習に主人公が巻き込まれる、というのは、伊藤潤二の黄金パターンのストーリーで、ここで収録されている話では、「地図の町」や「橋」、表題作の「案山子」がある。
しかし、「案山子」の面白さをもう少し突き詰めると、もう一つの黄金パターンが見えてくる。


それは、すなわち「罪悪感(後ろめたさ)」だ。
絵柄やストーリーの奇抜さが派手すぎてつい見落としてしまうが、伊藤潤二の物語の恐怖の核心には、「後ろめたさ」がある。
「案山子」でいえば、騒動に巻き込まれる2家族のうちの一方、川で亡くなった子ども(茂ちゃん)の話は、妻の連れ子を疎ましく思った夫が、茂ちゃんを溺死させ、犯行を隠していたというのが根本にある。「ばれたら大変なことになる」という「後ろめたさ」が、物語から感じる恐怖を強固なものにしている。
「蜂の巣」は、やはり殺人の後ろめたさ、「遺書」は、いじめの後ろめたさ、「中古レコード」は、泥棒の後ろめたさがあるからスリルが増す。そして、「富江」の第一話も、富江のクラスメイト達の「罪悪感」が恐怖の鍵を成していた。
これについて、ドラマ化された「地縛者」では、「罪の意識」という言葉をわざわざ使って主人公が説明している。


地縛は愛着からくるものじゃなかったの?

罪の意識が原因!?

このように、心の内に秘めておきたいことが、目に映るものとして現れるというのが、伊藤潤二の恐怖漫画の根底にある。
殺人犯罪や、異形の怪物も恐怖の対象となるが、それ以上に怖いものは、これまで生きてきた自分の人生の中にこそある。
突飛なシーンや絵にカモフラージュされているが、伊藤潤二の漫画が人気があるのは、その部分で多くの人に響くからではないかと思う。


なお、恐怖博物館シリーズは、現在、伊藤潤二傑作集と名前とサイズを変えて出版されているようです。『恐怖博物館(4)案山子』と同内容のものはこちら↓


「地縛者」が収められている本はこちら↓

伊藤潤二傑作集 11 潰談 (ASAHI COMICS)

伊藤潤二傑作集 11 潰談 (ASAHI COMICS)