Yondaful Days!

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目下のライバル〜たかぎなおこ『まんぷくマラソンローカル旅』『海外マラソンRunRun旅』

まんぷくローカルマラソン旅

まんぷくローカルマラソン旅

たかぎなおこさんのマラソンエッセイ漫画全4巻を取り上げる後編。
3巻目にあたる『まんぷくラソンローカル旅』では、やや競技としてのマラソンという要素は薄まり、バラエティに富んだマラソン大会や地方の食の魅力を伝えることがメインとなっている。(3巻目、4巻目ともに、タイトルが「〜旅」となっているので、旅が中心という意識なのかもしれない)

  • 立山若葉マラソン(10?)[千葉]
  • 奥川健康マラソン(5?)[福島]
  • 小布施見にマラソン(ハーフ)[長野]
  • 八幡川リバーマラソン(1.5km)[広島]★川の中
  • たんのカレーライスマラソン(2〜5km)[北海道]★材料集めがマラソンでゴール後にカレーを作る
  • 松島マラソン(10?)[宮城]★震災のため、この年だけハーフなし
  • 伊平屋ムーンライトマラソン(ハーフ)[沖縄]★夜道を走る
  • 大阪マラソン(フル)[大阪]

この年は2011年のことなので、序盤から震災当日のことが書かれている。震災の伝え方についてはメインではないので、身の回りに起きたことのみを最小限に伝えているが、被災地応援の意味を込めて6月には福島の会津若松の大会(奥川健康マラソン)、11月には松島マラソンに出ている。
その他にも、八幡川リバーマラソンのときには、広島の平和祈念式典のあとの灯篭流しに出たり、など、訪問先の地方のことを思う優しさが随所に見られる。また、「海外マラソン」の方では、結局シリーズを通じて落選し続けた東京マラソンにボランティアで参加した話が書かれており、そういう作者の優しさが、色んなマラソン仲間との繋がりを生み、作品全体の温かみの背後にあるのかなあという感じがした。つまり、マラソンも「人間力」なのかなあ…。
この巻では、出ている大会が特にバラエティに富んでいて、特にカレーマラソンでは、担当編集の加藤さんが大食い大会で大会新記録(10分間で9皿)を樹立して優勝という活躍を見せていて面白い。
そして、大阪マラソンでは、記録を更新し、4:17:06と、前回のサブ5達成に引き続き、サブ4.5を達成している。「絶対歩かない」という強い意志を最後まで貫いた結果で、尊敬の念でいっぱいになる。(しかも、前2日間はほぼ徹夜の状態…)


最終巻にあたる『海外マラソンRunRun旅』では4つの大会について描かれている。

この巻で、今のところシリーズは終了ということになるが、インタビューを見ると、どうも当初の構想とは違ったようだ。

たかぎ「本当は前作の『まんぷくローカルマラソン旅』にメドックラソンを収録して、シリーズを終わらせようと思っていたんです。ところが、メドックはリタイアしちゃったんで……(笑)」
加藤「これでファイナルはいかがなものか、という予想外の事態になり(笑)」
たかぎ「メドックは描く要素も多かったので、それならもう1冊描こうということになったんです。『まんぷく』は、もともと大阪マラソンを描くつもりはなかったんですが、加藤さんと2人で抽選に当たったし、実際に出てみたらすごく面白かったのでメインに持ってきたんです」


ワインが飲めることで有名なメドックラソンは、大会の説明を読むだけでも楽しめるが、やはり、シリーズを通じて初めてのリタイアということで、作者本人としても相当思うところがあったようだ。岩本能史さんの本を読んでもそうだが、こういった挫折と深い後悔についての話があると、それまでのおちゃらけた雰囲気がぐっと引き締まり、人間的な成長が見えるような気がする。

浅利「たかぎさんをそばで見てきて、加藤さんはどう思いますか?」
加藤「一見するとインドア派で、人見知りで、大勢の中でわいわいというタイプではないんですが、すごく芯がしっかりしている人です。走っていて、きついのはあと少しというところでふつうはペースダウンするのに、たかぎさんは粘るんです。シリーズで少しずつ記録を伸ばして成長してきたわけですが、それは読者さんに自分の進歩を見せなきゃ、ということをたかぎさんが意識していたからだと思っています。その気持ちが徐々に強くなっていったのを傍(はた)から見ていて強く感じます。だから、メドックラソンでのリタイアは、相当悔しかったみたいです(笑)。あのときの悔しさを作品に生かして、今度こそシリーズファイナルを描くぞ、という気持ちになったんだと思います」


その後のリベンジはバンクーバー(4:19:53)で果たし、さらに、台北ラソンでは大雨にもかかわらず自己ベストを更新(4:14:26)するという、怒涛の快進撃。しかも目標タイム4時間15分ピタリなので、有言実行力がものすごい。
台北ラソンでは21kmのタイムが2時間5分と、最終タイムのほぼ半分なので、ペースを保ってラストでも十分な速さで走れる足を残せている。無謀にもサブ4を目指そうとする自分としては、練習時には、遅くともこのくらいのペースで21kmを走れるようにならなくては…。(と書きつつ、ここで描かれているたかぎさんほど速く走れる気が全くしないのだが…)


とにかく、今後の練習では、まずは、大雨の中でも台北ラソンで4時間15分で走ったたかぎなおこさんをライバルに見立てて、自分を奮い立たせよう、そして、優しさと人間力で、どんどんマラソンの輪を広げていこうと思うのでした。