Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

映画『銀河鉄道の夜』

銀河鉄道の夜 [DVD]

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思っていたよりも難解だった。
ストーリー的には、原作を大きく変えている部分はないといえるだろう。
しかし、言葉が埋まっていた方が安心できるのだろうか。映像として見た場合、沈黙が不安なくらいだ。朗読の場合には、岸田今日子の声を追っかけることに使っていた集中力が、余裕ができると弛緩してしまうのだろうか。ただ無心に言葉を辿っていた方が安心感があった。
当然、映像の方がビジュアル的なアピールはあるのだが、全体を通して、朗読の方が「色鮮やか」なイメージが強い。映画は、画面が暗く、色が少ない。登場人物の、特にカムパネルラの表情がほとんど変わらない点まで含めて、暗い静かな湖のような独特の雰囲気が貫かれており、緊張が途切れない。
自分は、何かしっくり来ないということを書こうとしているのだが、うまく書けない。考えてみると、ラストシーンがうまくないのかもしれない。原作通りなのだが、映画としてみた場合、さっぱりしすぎているのかもしれない。(しかも、後述するように、自分が朗読版で聞いたのは、ラストシーンの前に、「博士」のくどい説教が挟まるバージョンなので特にそう感じるのかも)
映像的に一番驚いたのは、青年と姉弟が人間であること。ジョバンニとカムパネルラが猫だから、登場人物はみな猫だと思い込んでいたのだが、結局彼らだけが人間だった。何か特別な意味があるのだろうか。
なお、ストーリーは、台詞も含めて原作に忠実な部分が多いが、「鳥を捕る人」と「ジョバンニの切符」の間に知らない話(「盲目の無線技師」「アルビレオの観測所」)が挟まれていた。青空文庫で見てみると、文庫版ではこれらのシーンは、含まれないエピソードのようだ。
青空文庫にある比較表を確認してみると、朗読版の元になっているのは、角川文庫と新潮文庫のうち、角川の方らしい(新潮社から出ているCDなのだが・・・)印象的だったイルカの登場シーンや「博士」のくどい説教シーンが新潮文庫版にはない。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/gingatetsudo_difference
これは「初期形」から「最終形」に至るまでの差の部分なのかもしれない。
ある程度、物語の形成過程を踏まえ、勉強を重ねた上で、もう一度見てみたい作品だ。