Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

榎本俊二『榎本俊二のカリスマ育児』

榎本俊二のカリスマ育児 (akita essay collection)

榎本俊二のカリスマ育児 (akita essay collection)

なぜか、小飼弾さん大絶賛の育児漫画
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自分が榎本俊二に出会ったのは、当然『ゴールデンラッキー』なのだが、あの衝撃は忘れられない。
1巻を読み始めたものの、ナンセンス過ぎてよくわからず、頭をひねりながら読み進める。しかし、読めば読むほどツボ頻度が増加していき、しまいには、それこそ箸が転んでも面白いような状態に陥っていた。
例えば吉田戦車の漫画も好きでよく読んでいたが、それとは文字通り次元が異なる面白さだった。ギャグ漫画として完全に別物で、初めて読む人に、その面白さを全く説明できない質のものだった。
その後5年くらい経ってから読み返してみると、再度「理解できない」状態に戻っていたので、何かの魔法にかかっていたのかもしれない。
最近の連載作品は全く読んでいなかったこともあり、榎本俊二と聞くと、ゴールデンラッキーにはまっていた頃の変な空気を思い出す。
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そういう意味では、育児漫画の作者として、阿部潤はイメージしやすかったが、榎本俊二というのは、どんな漫画になるか全く想像がつかず、その分、逆に惹かれた部分があった。
しかし、読んでみると、ちゃんと育児漫画になっているところにびっくりした。それでいて、榎本俊二の色の強く出たギャグ漫画としても通用する。(というか、分かりやすい漫画も書けるということに感動した。)
また、親バカや苦労話に陥らずに、冷静な気持ちで現実を分析して、笑えるエピソードを漫画に仕立てる、彼は、バランス感覚がものすごくいい作家なのだろう。
ヤブ医者、二人の子どものアトピー妊娠中毒症での入院、自身の扁桃腺手術、と問題山積にもかかわらず、辛さを感じさせないところも凄い。
そんな、この漫画のポイントについて小飼弾さんは以下のように述べる。

なぜ榎本俊二が育児というストーリーの漫画化に成功したかといえば、これを言うと怒られるのを承知で言うと、彼が男だからだろう。女では漫画家である前に母とならざるを得ない。母であることより芸術家であることを優先する例は 瀬戸内寂聴のようにありうるけれども、育児漫画の性格上、「どちらか片方を取る」というわけには行かない。そうなると、どうしても出来上がった作品は母の絵日記となる。

確かに、「母の絵日記」的な、通常の育児漫画と比べると、子どもの描写には、美化がなく、愛情も強くなく、ひたすらに榎本俊二的なデフォルメが施される。「育児は素晴らしい」などという、価値観の押し付けは皆無で、与えられた運命を「こなす」とでも言うようないい意味での力の抜けた作品となっている。

上では「榎本俊二が男だから」という書き方がされているが、同様に男が書いた育児漫画である、阿部潤『はじめての赤ちゃん』がどんなものなのか、こちらも読んでみたくなった。

今後の予定

ということで、阿部潤はじめて赤ちゃん (akita essay collection)榎本俊二の奥さんである耕野裕子愛ある暮らし (Next comics)はマストだなあ・・・。