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道州制で日はまた昇るか―地方分権から市民主権へ

道州制で日はまた昇るか―地方分権から市民主権へ

道州制で日はまた昇るか―地方分権から市民主権へ

地域を元気にするための政治のあり方、それが道州制

中央集権⇒地方分権(ネットワーク型国家)=市民道州制

本書は、大前研一創設の「政策学校一新塾」のメンバーが、現行政治の根本的な問題点と、その処方箋としての道州制について、図表を駆使しながらわかりやすく描いた本。最終章で、ある程度現実的な「道州制後の日本社会」が、成功イメージ的に描かれることで、これからの日本に希望を持てる内容となっている。

なぜ、都道府県でなく、道州制なのか?

道州制の区割り案には、日本全体を大きく9〜13に分ける複数の案がある。(いくつかの団体から出されている)
東北各県は、いずれも東北道*1もしくは、北東北道南東北道のどちらかに入ることになるが、案ごとに大きく動くのは新潟県福井県。それぞれ、北陸、北関東信越、また北陸、関西というかなり差のあるグループに入ることが提案されている。
なぜ、都道府県ではなく、道州制なのか、という理由は以下の通り。

  1. 国の“大きな仕事”を地域に委譲するため
    • 河川管理:県をまたがる場合が多い
    • 空港・港湾:都道府県ごとに空港がつくられる現状は異常
    • 電力・ガス・水道・鉄道:すでに道州制をイメージさせる大きなブロックで運営されている
  2. 財政基盤の安定のため
    • 現在の都道府県ごとでは、すでに先行きが怪しいところが多い*2
  3. グローバル化に対応する成長戦略のため

つまり、無駄を省いた効率的な運営のため、地域の多様化のために都合のよい大きさとしての道州制ということだ。
ラストでは、「生き方を選べる国・日本」として、それぞれの地域の魅力に満ちた道州の様子が描かれている。理想的だなあ、と思うと同時に、現在の都道府県制度の中で進行している地域の同質化には、特に地方都市ほど危機感を持っており、それへの打開が求められていることを感じた。

副題「地方分権から市民主権へ」の意味

面白いと思ったのは、道州制というのが、ゴール地点ではなく、スタート地点として描かれていること。簡単に言えば、現在の中央集権的な日本では、「市民」はどんどんやる気をなくして、国家と住民が分離していくのに対して、道州制導入後は、住民がもっとまじめに地域のことを考える=民度が上がる素地ができる・・・直接的に書かれているわけではないが、そう読み取った。
ところで、先日の参議院選挙では、選挙制度そのものが、今後の日本を考える上で、適していないのではないか?という、諦めに近い気持ちを抱いてしまった。*3投票率という「量」ばかりが話題になるが、どれだけ自分の生活(1年後ではなく、少なくとも10年後、もしくは老後)と結びつけて投票できているか、という投票の「質」は、選挙ごとに落ちていると思う。
テレビも、政治家も、投票する側も、誰かを叩くことばかりに一所懸命になって、本来議論されるべき長期的な政策について真剣に考えようとしていたとは思えない。例えば、数年後に上がることが間違いない消費税についての論議が行われなかったことは、非常に残念だった。年金や環境対策の財源も含めると、税金全体を「上げない」という選択肢はあり得ないだろう。また、丸川珠代が当選したことも、自分としては、やや「想定外」のことだった。
しかし、それは、衆愚政治だとか、民度が低い、というよりは、日本全体の大きさが、一国民の想像の及ぶ範囲の外にはみ出てしまっている=いわばファンタジーになってしまっていることに大きな原因があるのではないか?つまり、地に足のついた「市民レベルでの議論」が活発化されるためには、住民一人一人の意識改革ではなく、政治が行われる規模も重要なのではないか?ということを、今回、道州制について読みながら思ったのだった。
繰り返すが、「国民一人一人が・・・しなければならない」とか「一票が日本を変える」という主張も分からないでもない。しかし、そういった言葉が、そろそろ白々しく響くようになってきたと思うのは、自分だけではないと思う。日本を変えるための一歩として、道州制の導入は、非常に有効だと思う。

*1:この本では、〜道という呼称になることが前提で書かれているが、道路と紛らわしいので、イメージ的には、北海道以外は、〜州のような気がする

*2:そうはいっても、くっついても厳しい地域もある。本文中には書かれていないが、道州制議論が活発ではない四国などは、道州制後の地域に魅力を感じていないのかもしれない。

*3:もともと、7月頃に書いた文章だったので、多少、鮮度が落ちております。が、まだまだ美味しくいただけます。