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スカッと爽やかに驚きたい人にオススメの恋愛小説『イニシエーション・ラブ』(ネタばれなし)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

帯の紹介文は以下の通り。

評判通りの仰天作。
必ず二回読みたくなる小説などそうそうあるものじゃない。
(読売新聞書評2004年12月21日より)

ちょうど、マーティン・スコセッシ&ディカプリオの映画『シャッター・アイランド』が同じような惹き文句で売っている。以前も少し書いたが、こういう作品は、事前に「仕掛け」があることをばらしても大丈夫なほど面白い話なのか?と、逆に不安になる。『シャッターアイランド』についていえば、映画を見たわけではないが、「驚くぞ驚くぞ」という煽りがしつこすぎて、本編が逆につまらなかった、という感想を述べている人もいたので、『イニシエーション・ラブ』もそうなのでは?とさらに警戒感は強まる。
ところが、先日のスゴ本オフid:cha-cha-kiさんより紹介があり、スゴ本のdainさんも「絶対にぐぐっちゃだめ!」という言葉とともに激賞していたので、読んでみた。


で、感想だが、これは良かった。
この本の良さは、超さっぱり感。伏線もわかりやすいところに配置されているし、トリック自体は、叙述トリックものでは、むしろよくあるタイプだと思う。しかし、勿体つけた感じがしないし、ストーリー自体の駆動力が強く、文体が軽いので、サクサク読めてしまう。
散見された伏線について深く考えると、トリックを見破ってしまい、どんでん返しカタルシスを得られなくなるかもと不安になったのもあり、とにかく読み始めたその日に読破。背表紙にあるように「最後から二行目」で、アレ?何だこれ??ということになり、背表紙で予言された通りポイントを読み返すことになった。
二度目の読書で、登場人物への印象が変わり、物語が大きく変わって見えるところが、この物語の醍醐味だが、個人的には、もう少し怖い感じのどんでん返しが好み。でも、恐怖要素が少ないから、リアル感あふれる恋愛小説としての魅力が増すのだろう。
二度目の読書時には「禁」を解いてググって、以下のページを参考に読んだ。素晴らしいまとめ!


ところで、新本格の流れを受け継ぐ作家として、こんな人がいるのは知らなかった。イニシエーション・ラヴ自体が、一連のシリーズになっているようだが、竹本健治の「匣の中の失楽」のオマージュ作なども読んでみたいし、少し長い付き合いになりそうな作家だ。
そういえば、80年代のヒット曲をタイトルにした全12章のうち、もっとも興奮した章のタイトルが、松崎しげる愛のメモリー」で、何だかなあ(笑)と思った。