記事のタイトルは「田島貴男DC」としていますが、「田島貴男のHome Studio Concert ~ディスコグラフィー・コンサート」が正式名称。
買い忘れている人は早くチケットを買いましょう。
2021年一月から半年間に渡って、Original Loveのアルバムを3枚ずつピックアップし、その中から選んだ曲のみでライブする月に一度のプログラム「ディスコグラフィー・コンサート」。
第二回は、『風の歌を聴け』、『RAINBOW RACE』、『Desire』からピックアップ。
▼チケット購入URL https://originallove.moala.live/products/hsc-3-st
▼チケット価格 1,500円
■生配信予定日時:2021年2月20日(土) 21:00~22:00
■アーカイブ閲覧可能時間:生配信終演後~2021年2月24日(水)23:59
http://originallove.com/news/2021/01/23/3292
前回⇒迎撃!田島貴男DCvol.1『LOVE! LOVE! & LOVE!』『結晶』『EYES』編 - Yondaful Days!
前々回⇒迎撃!田島貴男「ディスコグラフィー・コンサート」(に向けた準備) - Yondaful Days!
さて、突然ですが、自分は読書好きのように見せかけて、本は「買ったら読まない」「人から借りたら読まない」というのが習慣づいてしまっています。要は図書館で借りるものが最優先で、どんなに面白そうな本でも購入した瞬間に優先順位が下がり、数年手に取らないことがザラです。
最初にそういう言い訳をしたのは、まだ、この本を読んでいなかったから。
ポップスの作り方 田島貴男(オリジナル・ラブ) (ギター・マガジン)
- 作者:田島 貴男
- 発売日: 2016/10/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
しかし、何となく予感がして本棚から引っ張り出して読んでみたら、まさしく今回のディスコグラフィー・コンサートの基本コンセプトが書かれているではないですか!
すなわち、この本の中では、田島貴男自身が、過去作について3枚ずつに区切って振り返っているのです。(この本の前半は語りおろしスタイルなので、田島が能地祐子さんに語っている口調ですね)
オリジナル・ラブの歴史をアルバム単位で区切ってみるならば『LOVE! LOVE! & LOVE!』『結晶』『EYES』の3枚と、初のベストアルバム『SUNNY SIDE OF ORIGINAL LOVE』までがメジャー・デビューしてからの第一期ということになる。わかりやすく言えば、宮田(繁男)さんがドラムスの時代ということ。まったく意識はしていなかったけど、今になって思えば最初のアルバム3枚は3部作っぽい感じだね。p76
『風の歌を聴け』、そしてレコード会社を移籍してからの『RAINBOW RACE』、『Desire』という3枚。これもまた、なんとなく3部作っぽい感じになっている。(略)
「接吻」前後は所属事務所を変わったり、制作まわりの環境も少し変わった時期だった。(略)
最終的に小松、佐野っち、そして第一期から(木原)龍太郎さんが残って、その形でバンドをやることになった。ここからがオリジナル・ラブの第二期、『風の歌を聴け』の時代。p84
ひとまず『Desire』でワールド・ミュージック的アプローチはやりきった感があって、そこから今度は全然違う方向に舵を切る。ここからがまた結果的に3部作っぽくなっているんだけど『ELLEVEN GRAFFITTI』『L』『ビッグクランチ』の3枚。ドラムンベースとか、当時のクラブ・ミュージックやサンプリング音楽の類を聴くようになって。ちょうどデ・ラ・ソウルやベックなんかも盛りあがってたし、そういう部分を自分もやってみたくなったんだ。聴くのは好きだったけど自分の音楽ではやってなかったようなことをやってみようか、と。p88
という風に、ここまでは明確に3枚ずつに区切って語られています。
ただし、『ムーンストーン』以降は、本の中でも「音楽以外の面での難題が続出していて大変な時期」ということで、語り口自体が少し変化して、3枚毎には区切られていません。
3枚ずつ区切ると『ムーンストーン』『踊る太陽』『街男 街女』 で区切ることになりますが、ファンは誰もがそう思っているように、これは分けられないだろうという2作についても次のように話しています。
『街男 街女』と『東京 飛行』は、自分的にはショートムービー2連作みたいなイメージがある。p98
普通に考えれば、「第4期」オリジナル・ラブは、メジャー時期の最終ということで、『ムーンストーン』『踊る太陽』『街男 街女』『東京 飛行』の 4枚でまとめてディスコグラフィーコンサートを行うのでしょう。
その後のことを考えても、次を『白熱』『エレクトリックセクシー』『ラヴァーマン』とする方が区切りが良いです。
ずっと「第3期」のディスコグラフィーコンサートに期待をかけていましたが、やはりファンも一緒に苦しんだ感のある「第4期」は、その時期の思い出話みたいなものも含めて楽しみになってきました。
対象アルバム
- 風の歌を聴け(1994年6月27日)
- RAINBOW RACE(1995年5月17日)
- Desire(1996年7月19日)
1994年~1996年の音楽
1994年の音楽 - Wikipedia
シングル
- 1位 Mr.Children:「innocent world」
- 2位 広瀬香美:「ロマンスの神様」
- 3位 篠原涼子 with t.komuro:「恋しさと せつなさと 心強さと」
アルバム
- 1位 DREAMS COME TRUE:『MAGIC』
- 2位 竹内まりや:『Impressions』
- 3位 Mr.Children:『Atomic Heart』
1995年の音楽 - Wikipedia
シングル
- 1位 DREAMS COME TRUE:「LOVE LOVE LOVE/嵐が来る」
- 2位 H Jungle With t:「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」
- 3位 福山雅治:「HELLO」
アルバム
- 1位 DREAMS COME TRUE:『DELICIOUS』
- 2位 trf:『dAnce to positive』
- 3位 松任谷由実:『THE DANCING SUN』
シングル
- 1位 Mr.Children:「名もなき詩」
- 2位 globe:「DEPARTURES」
- 3位 久保田利伸 with NAOMI CAMPBEL:「LA・LA・LA LOVE SONG」
アルバム
- 1位 globe:『globe』
- 2位 安室奈美恵:『SWEET 19 BLUES』
- 3位 B'z:『LOOSE』
1994年~1996年は、大学2年生~大学4年生の時期。
オリジナル・ラブのシングル「接吻」は1993年10月発売で、勿論これがヒットして知ってはいたのだが、自分はほとんどこの曲を意識しておらず、1994年4月発売のシングル「朝日のあたる道」で本格的にオリジナル・ラブを知ることになる。
ただ、時期的には、それも決定打にはなっておらず、1995年4月発売のベスト盤『The Very Best of ORIGINAL LOVE』を聴いたのが、オリジナル・ラブにハマるきっかけだった。なお、1994年はミスチル『Atomic Heart』をよく聴いた。ミスチル、スピッツは初期は渋谷系として括られることもあったように思う。
この1995年あたりの、自分の音楽的嗜好の変化は途轍もなく大きなものがある。1994年までは、いわゆる渋谷系の音楽どころか洋楽も全く聴かずにいた。CDTV(番組開始は1993年)を見て良さそうな曲をレンタルCDで借りる、というくらいしか音楽にはお金をかけなかったので自すべてはCDTVの掌の中で音楽を聴いていた感じか。
ところが、おそらく1995年初頭くらいの時期に図書館*1で借りた小沢健二『LIFE』とコーネリアス『THE FIRST QUESTION AWARD』を聴いて衝撃を受け、むしろ渋谷系を熱心に聴くようになる。(おそらく、それまでは歌メロ以外の音楽は聴こえていなかったのだと思う。)
なお、自分にとって音楽の「カンブリア爆発」が起きたこの時期に、大学時代の友人だったid:atnb(今でも仲の良い友人です。ピチカート・ファイヴのファン。)に押し付けられるようにカセットテープのダビングを5本くらいもらって、これは自分の音楽の幅を広げるのに決定的な役割を果たしたように思う。
橋本徹のフリーソウルシリーズ が1994年に開始ということなので、それに影響を受けて編まれたテープなのか、色々な楽曲が入っていてとても勉強になっただけでなく、過去の名盤に食指を伸ばすきっかけとなった。
ということで、オリジナル・ラブにハマりだしたのは、ちょうど『RAINBOW RACE』が出た頃で、そこから『Desire』が出るのを待つ期間は、自分にとって長かったとともに勉強の時期だった。
延々と、当時の最新作『RAINBOW RACE』を正座して聴きつつ、初期3部作を聴き、企画盤『Sessions』のほか、『SUNNY SIDE OF ORIGINAL LOVE』(1993年12月8日発売)、そして『WILD LIFE』『SUMMER LOVE』を聴く。このうち、『SUMMER LOVE』はジャケも好きだし、波の音が入っているのも自分にとっては新鮮で、本当にリゾートに行っているような気分になる大好きなアルバム。
さて、「覚醒」した自分が、生まれて初めて発売日に買ったアルバムはCornerius『69/96』(これはタイトルの通り発売日は96年の6月9日)、少し遅れて待ちに待った『Desire』が出るのだった。
風の歌を聴け(1994年6月27日)
改めて聴いてみても色褪せない。
何も言えねえ。という言葉で済ませたいくらいのアルバムで、多くはコメントしないが、演奏を望む曲だけを書くと、聴いたことがないわけではないが演奏機会の少ない「時差を駆ける想い」を挙げたい。(以下にも収録されていることを考えるとレア曲というわけではないのですが…)
大学生時代に3度ほど行った海外旅行の際は、ウォークマンで聴くためにお気に入りの曲をテープに詰め込んだ。そこに絶対に入れていたのが「時差を駆ける想い」。国内の遠距離では味わえない「時差」を感じることになるのだから、ここぞとばかりに、この選曲。
今聴いても見知らぬ国で夜眠るときに遠くに聞こえる雑音や匂いを思い出す。
また、ライブでほとんど演奏していないという「二つの手のように」。
なお、この3枚のアルバムの解説は、本当に『ポップスの作り方』が最高の教科書になっているが、『風の歌を聴け』からは、基本的にすべての曲で田島貴男がギターを弾くようになったという事実は、アルバム全体の印象にも大きく影響を与えているように思う。このあたりのギタリストとしての田島貴男の意識の変化の話は第二章に詳しいが、とても面白く読んだ。
RAINBOW RACE(1995年5月17日)
自分にとっては、ながら聴きではなく、純粋に音楽のみに耳を澄まして聴いた、言い換えれば「正座して聴いた」回数の一番多いアルバムで、今回聴いてみて、改めてアルバムの良さが体の隅々に染み込んでくる。
結局、この2枚を聴いた、95年頃のこの時期に、ようやく自分はドラムを中心としたリズム楽器が耳に入るようになって来たのだと、今わかる。
それまで歌メロのみを聴いていたのが、ベースラインや他の楽器のメロディが聴こえるようになり、さらにドラムを中心としたリズム隊に耳が行くようになる、とリスナーとしての自分も少しずつ成長していった気がする。
実際、『風の歌を聴け』『RAINBOW RACE』の2枚は、ドラム佐野康夫とベース小松秀行という、二人がいたからこそ出来たアルバムで、『ポップスの作り方』によれば、この2枚の2年間は「がっつり、毎日が真剣勝負の活動をやって燃え尽きてしまったんだ(p87)」という。
だからこそ、当時を回想する田島のこんなつぶやきは、想像を掻き立てる。
あの時はそういう感じでやってみたかったんだけど、もしそのまま佐野っちと小松と一緒にやっていて、3人で『Desire』を作っていたらどうなっていただろうと考えることはある。たぶん、全然違うアルバムになっていただろうな。(p87)
なお、14年前に『RAINBOW RACE』について書いた文章を読むと、『RAINBOW RACE』についてというより、『東京 飛行』後の宙ぶらりんな気持ちがよく表れていて興味深い。(かなり踏み込んでものを言っていて「何様だよ」と思ってしまう笑)
pocari.hatenablog.com
さて、今回、聴きたいのは、「ブロンコ」と比べると登場回数の少ない「ダンス」(どちらも「Let’s Go」の遺伝子を受け継ぐ曲と思う)。そして、やはり首都高を走ることがあれば絶対に脳内を流れる「流星都市」。そして、ドラムがうるさい「ホモ・エレクトス」。
Desire(1996年7月19日)
先行シングル「Words of Love」(6月5日発売)は『Desire』まで繰り返し聴いたから今でも思い入れのある楽曲。カップリングは「ガンボ・チャンプルー・ヌードル」で、「何だこれ」感はアルバムを聴く前から既にあったが、それでも『Desire』の1曲目「Hum a Tune」には度肝を抜かれた。
この「なんか違う!」は、癖の強い楽曲もだが、主に「歌い方」に対してのもの。のちに能地祐子さんが書いていた「大瀧詠一を思い起こさせる」というコメントを読んで、「おお!そうか!」と思い、大瀧詠一やはっぴいえんどを聴きこむきっかけとなった。
自分の場合、初めて行った音楽ライブはオリジナル・ラブのDesireのツアー(府中の森)だったことも含め、すべてが楽しく新鮮な音楽ライフを送っていたことを思い出す。
ただ、聴き直すと、やはり『Desire』は前2作とは大きく異なる。
はっきり言えば『Desire』は一曲一曲は思い入れのある楽曲も多いが、自分にとっては一枚を通して聴きにくいアルバム。
収録時間の関係もあるのかと考えたが、確認すると『Desire』は前2作よりも収録時間が短い。(詳しくは以下)
pocari.hatenablog.com
コンピ盤『Light Mellow Original Love』を編んだ金澤寿和さんが「その時期(東芝EMIの時期)の田島貴男は音楽的ベクトルを一本に集約させていったのに対し、自分の型ができ上がったあとのキャニオン期は、逆にそれを拡散させていく。」*2と書いているが、まさにその通りで、音楽的ベクトルを一本に集約した到達点が『風の歌を聴け』『RAINBOW RACE』なのだと、今回聴き直して実感した。(そしてそれが、ドラム佐野康夫とベース小松秀行との協働の中でこそ到達した地点であるということを、その後「再結成」を果たしたアルバム『ラヴァーマン』で音を通して理解できた。)
ただ、ポニーキャニオン期の、田島貴男博士の研究発表のようなCD類は本当に面白くて、一枚一枚勉強しながら聴いた。
『Desire』は、まさに「ZIGZAG」のような「折れ曲がって渦巻いてこんがらがってる」道の始まりとなったアルバムともいえる。
さて、そんな中でも変な曲である「黒猫」が今回一番聴きたい曲。大好き過ぎる「Hum a tune」「青空のむこうから」は、少なくともどちらかをきっとやってくれるでしょう。Vol1で「愛のサーキット」を演奏したことから考えると「Masked」もあり得るのか?
セットリスト
- 朝日のあたる道
- The Best Day of My Life
- Your Song
- 心
- ガンボ・チャンプルー・ヌードル
- 黒猫
- 二うの手のように
- 流星都市
- Masked
- ブロンコ
- ミッドナイト・シャッフル
- 少年とスプーン
感想
レア曲という扱いの 「Your Song」「流星都市」「二つの手のように」が聴けた!
それだけで満足ですが、特に「流星都市」は、今後のレパートリーとして演奏されることは確実では?と思わせる完成度でした。
3月26日からの弾き語りツアー(大阪、東京、静岡、愛知)が楽しみですね。
ただ、色々と期待が高まり過ぎたせいか、あと二押しくらい(具体的には「時差を駆ける想い」「ホモ・エレクトス」)欲しかった。そう考えると、「朝日」と「ブロンコ」は両方とも演奏は良かったんだけれども、今回はご遠慮いただいた方が…とか色々なことを考えてしまいました。
実は、先週以降仕事が忙し過ぎて気が落ち着かず、ライブの「おかわり」を一度も観ることが出来なかったのは本当に残念ですが、思い返すと、新兵器「バリトンギター」仕様のリゾネーター・ギターで演奏した「Masked」は、なかなかの新感覚で良かったです。
曲自体は「少年とスプーン」と並んで『Desire』の“統一感のなさ”を代表するような曲で、自分の中では『結晶』の「愛のサーキット」と同位置にある「微妙な曲」なのですが、ノリノリに演奏している様子も含めて、とても楽しい。
こういう「新しいこと」を仕込んでくるのは流石だと改めて思わされました。
そして今回のDCは何といっても新しいアルバム『骨tone BLUES』の発表がありました。MCでは、「ライブが終わったらすぐに買える」という意味のことを言っていたような気がしますが、実際には予約が開始で3/25に発売(順次発送)。
「初の弾き語りロックンロールアルバム」という謳い文句で、「BLUES」というアルバムタイトルからも納得ですが、 『東京 飛行』から3曲(「しゃれこうべ」(←何故ひらがな?)「遊びたがり」「ZIGZAG」)というのは驚きです。「築地オーライ」(『街男 街女』)も合わせて、最近は比較的よく演奏される曲と言えるのかもしれませんが、ここに来て敢えて『風の歌』色が薄めな選曲というのが面白いですね。楽しみです。
田島貴男、初の弾き語りロックンロールアルバム「骨tone BLUES」発売決定。 / NEWS / ORIGINAL LOVE OFFICIAL WEB SITE
次回は3月20日(土)。ついに大好きな『L』を含む、ディスコグラフィーコンサートの個人的なクライマックスです!
何とか仕事を上手く納めて万全な体制で迎えたいと思います。
*1:これは図書館も覚えていて、井の頭線新代田駅が最寄りの代田図書館。先にも書いた通り、音楽を聴きはするがお金をかけることがなかった。
*2:こちら→Light Mellow on the web 〜 turntable diary 〜 : ■ LIGHT MELLOW オリジナル・ラブ・ LIGHT MELLOW チャー