Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

大感動の『モテキ』最終巻

モテキ(4) (イブニングKC)

モテキ(4) (イブニングKC)

良い!
最終回はイブニング連載時に読んでおり、そのときは不満が残っていたが、完全に払拭された。
今思えば、読んでいない話が何話かあり、理解が不十分だったこともあるが、登場する女性陣の中で最も惹かれないタイプの小宮山夏樹に焦点が当たる展開自体が嫌だったんだな。(なお、タイプは、結局終盤に出番のなかったいつかちゃんが一番、土井亜紀が二番です。)


モテキ』のどこが、他のマンガと違うのか。
例えば、設定にやや共通点のある漫画でいえば『Bバージン』の展開は、いかにも少年マンガ的で、変身する話。もっといえば「努力すれば変われる」話。『モテキ』は、こういう展開を、とにかく避けたところにキモがある。
最終的には、主人公だけでなく、他のメインキャラクターも含めて、誰もが「もがいても変われない」話。と書くとネガティブだが、モテ期の自分と、非モテ期の自分が、揺らぎながら併存しているのが人間。本当の自分だとか、昔の自分だとか、変わる前だとか、変わった後だとか、そういうものの線引き自体に意味がない、というのが作品のメッセージ。
主人公の藤本幸世が、太ったり痩せたりを繰り返すのも、太っていた自分がダメで、ダイエットして「ダメ」が消えたのではなく、どちらも同時に、藤本幸世の中に存在することの暗示だろう。また、、物語自体が、かなり理屈っぽいので、ダイエット(ウォーキング)とか、ある意味作品の鍵となる「ライヴ」とか、肉体的なものを意識して取り入れているのだと思う。


そんな「変われない現実」を目の前にして、絶望するのでなく、「変われないんだけど変われる」と半ば開き直るのが、一番最後に藤本幸世の出した結論。*1
この、“辿りついた”感じは、ちょっとした達成感があって、最終回にふさわしい。4巻は、少し早足で、「名言」濃度も高すぎるほどだが、言葉だけの薄っぺらいものにならずに、物語がそれに説得力を持たせているのも見事。
自分は、この漫画から、確実にポジティブものを得たし、目に映るセカイの彩りが少しだけ増したような感じがしたのでした。

*1:あえて詳しく書きません。気になる人は作品を読んでみて!ちょっと書いてみると、結局、自分の頭の中のイメージや肉体として存在する「自分」よりも、他者とのコミュニケーションの中に存在する「自分」の方が、世の中へ影響力がある、ということかなあ。