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『デルフィニア戦記』感想その1〜デルフィニア戦記とワンピースのこれから

伝説の終焉〈1〉―デルフィニア戦記 第4部 (中公文庫)

伝説の終焉〈1〉―デルフィニア戦記 第4部 (中公文庫)

デルフィニア戦記全18巻読破。ストーリーについてWikipediaから引用。

前国王の妾の子であったために、国内の貴族の陰謀によって王位と命を狙われて城を脱出し、追っ手の者たちと単身で戦う若き国王ウォルの前に、異世界から落ちてきたという謎の少女リィが現れ、助太刀をするところから物語は始まる。
王位の奪還、隣国との争い、謎の暗殺集団(ファロット)との戦いなどを通して、ウォルとリィを中心とした多くの魅力的な人物が活躍する姿を描き出した一大英雄譚である。

12月から読み始めてそれこそ一気読みしたわけで、自分は非常に楽しく読んだが、評価が分かれる部分もあるようだ。
物語は、デルフィニア王ウォルと、異界から現われた少女リィを中心に展開するが、一番の問題点は、リィが万能過ぎること。馬より早く地を駆け、剣を振るえば誰にも負けない様は、作中でも「戦女神」と称されるが、物語全編に渡って、その力を如何なく発揮する。
ワンピースに喩えて言えば、リィはルフィにあたるのだが、それに匹敵する強さを持つ人物が作中にほとんど出てこないので、「戦記」であっても、デルフィニアが勝つに決まっている物語なのだ。そこがバランスが悪すぎると感じさせる部分だ。
そういう意味では、リィと唯一渡り合えるレティ(と隣国タンガと暗殺者集団ファロット一族)の策略によって、囚われの身となる、第四部の展開は非常にスリリングだったのだが、結局のところ、この危機も、リィと同じく異界から来たルウの手助けにより、信じられないほど派手な展開(戦記と謳っておきながら、超能力ものとしか言いようのない展開)で逃れる。
リィがタンガを脱出してからは、最後だからということで(?)無敵状態のやりたい放題で、痛快を通り越して「あんまりだ・・・」と思わないでも無かった。*1読者の評価が分かれる部分だろう。
ただし、やりたい放題のあとは、巧く幕を引いて綺麗に終わっているように思うし、全18巻という長さもちょうど良かった。


少し話の軸をワンピースに移す。
エース救出を思い起こさせる国王ウォルの救出劇など、ワンピースと重なる部分もあったが、絶対無敵の主人公と、他国と比べて人材が豊富すぎるデルフィニア国の快進撃を楽しく読めたのは、この先どうなるかという展開の面白さを、物語にあまり求めていなかったことにある。登場人物の魅力が物語の推進力になっていたことは確かであり、ワンピースで言えば、ウォーターセブンまでは、同様に読んだ。
しかし、その後のワンピースは、「ルフィが強くなること」に軸がスライドしており、物語のバランスが崩れてしまっている。悪魔の実を食べた「能力者」は飽和状態で、それらと渡り合うためのルフィの度重なる「ドーピング」、さらに能力の底上げを図ることのできる「覇気」という力。例えばウソップが、この後の物語に関わっていく隙はほとんど無くなってしまったようにも思える。、
ワンピースの一番の魅力であった「仲間たちとの協力」が、第二部(61巻)以降の展開でどのように見られるのかは、尾田栄一郎の手腕に期待している部分だ。第二部は、いわば、デルフィニア戦記で描かれることの無かった、快進撃のその後の話なのかもしれない。(そういえば、61巻の発売日は2月4日とのこと。楽しみです!)

*1:ここら辺は、作中人物から、そのような能力があるなら最初から使っていれば・・・というような基本的なツッコミがある。笑