- 作者: 原田宗典
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/08/21
- メディア: 文庫
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原田宗典は、大学生のときによく読んだ気がするが、久しぶりだ。
書棚では、懐かしいタイトルを辿りながらも、なるべく新しいこの本を手に取った。
真理先生
先日、難読漢字の読み方についてどう扱うかで作者の立ち位置が分かるという風な話を書いたが、そういう意味では、原田宗典はとても信頼のおける人である。以下は、武者小路実篤の『真理先生』を薦められての部分
「え!?あれ『マリ先生』じゃないの!?マリ先生っていう女教師が主人公の青春小説かと思ってた!」
「ばーか。『シンリ先生』っていうお爺さんが主人公の非常に哲学的な小説だよ。」
p53
自分も今の今まで『マリ先生』と思っていた。原田宗典は30代後半で知ったということで、同じくらいの時期になるのが救いか。
実際に読んでみると、この後、原田を実篤に傾倒させるほど凄い小説だったというから、自分も読んでみなくちゃという気になる。
ところで、本を読んで知ったが原田宗典の住んでいるのは調布市仙川。
そして、武者小路実篤記念館も調布市内にある、ということで、調布市立図書館で初めて借りた本として非常なる縁を感じ、実篤を読めと言う導きを感じずにはいられない(笑)。
御大切
原田宗典が嫌いな言葉である「愛」。
その言葉に胡散臭さを感じ続けていた原田が、ものの本を読み、「LOVE」に対する翻訳語として、明治初期に現われた新しい言葉であるということを知り、溜飲を下げる。
その後、何と訳すべきかという自問を続け「和」かな、ということになるのだが、その後、「御大切」という言葉を知り、衝撃を受ける。
隠れキリシタンたちが、「LOVE」の翻訳に困って、結局あてた言葉が「御大切(おんたいせつ)」ということらしい。
確かに「愛」という言葉は軽々しく使われ過ぎて、到底それで「地球を救う」ことは出来ない気がする。
久しぶりに読んだ原田宗典は、年相応にエゴが取れて、いい意味で普通な感じになっていた。
同じ調布市在住ということで贔屓にしたい作家だ。