Yondaful Days!

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書店POPに騙される人続出中〜樋口有介『ピース』

ピース (中公文庫)

ピース (中公文庫)

書店のPOPが物凄い(↓これを含めて平積みの周りに複数のポップが並べられている書店多数)ので、そこまで推すのならば・・・と買った本。


ところが、イマイチ消化不良だったので、Amazon評を見ると「書店のPOPに騙された」の嵐。その通り!確かにその通りなんだけど、別に全部がダメとは思わないので、岡村靖幸的に言えば、「チャームポイントを調査」した結果を以下に整理しました。

『ピース』の魅力はこれだ!

読後、すぐにしっくり来なかった理由は、自分がスッキリ系のミステリを求めていたからなのだろう。
帯の惹き文句に「意外な犯人、ラストのどんでん返し」とあったので、全ての伏線が一点で繋がるようなラスト*1を期待してしまっていたのだった。しかし、この物語は違った。連続バラバラ殺人の犯人が判明しても、それぞれの人生は続く。郷原宏による解説は、人物造形を含めて樋口有介の小説の巧さを褒めちぎるが、読み終えてみると、確かに、人物が生きている!それが、この小説の一番の魅力だ。


『ピース』における人物造形の巧さをひとことで言い表すならば「わだかまり」ということになろうか。序盤でバラバラ殺人の犠牲になる清水成子も、自分の人生を振り返るとき、いくつもの「もしも…だったら」を思い出す。

人生とは思い通りにいかないもの。そんなことは分かっていて、その事実を受け入れてしまえば今の暮らしも、楽といえば、まあ楽なんだけど。 P36

多様な登場人物それぞれの“思い通りに行かない人生”が、お喋りな人は自分語りで明らかにされ、寡黙な人は最後まで謎が残る。実際に歩んできた道だけではなく、歩むかもしれなかった道への未練も、その人の人生をつくる重要な要素であり、この作品内での人物造形の巧さは、まさにそこに出ているのだと思う。*2


この“思い通りに行かない”雰囲気は、ラストまで残り、だからこそ、読後感は「何かしっくりこない」感じになるのだ。いわゆる“絶海の孤島”系のミステリでは、ゲームスタートとエンディングが明確で、島を出るときは悩みは全て解決している。登場人物は、読者のスッキリのための駒に過ぎないので、悩みが深すぎる登場人物はエンディングを迎える前に確実に消されてしまう。余談だが、今年の春の名探偵コナンの映画(沈黙の15分)は、本当にひどくて、ある登場人物は、トリックのために8年間意識不明で寝込んでいたりするのだ。あまりに“駒”過ぎるので可哀想に思ったほどだ。


また、この物語のいい所は、表紙を見れば、バラバラ連続殺人の理由を思い出せるところ。忘れっぽい自分にはとても嬉しい表紙だ。
なお、樋口有介は、10年以上前に読んだ青春ミステリの印象が強い。『ピース』とは異なる作風の本も読んでみたい。

で、何で書店はここまで推すの?

(調査中)→誰か教えてください。フリーメーソンの陰謀かな。

*1:おそらく多くの人は、読み終えた時に、回収されなかった伏線のあまりの多さに絶句しているはず。自分もです。

*2:ここら辺は、『鋼の錬金術師』について過去書いた内容と同じかもしれない。つまり『KAGEROU』に無い部分