- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 文庫
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このシリーズは漫画みたいに読みやすいので、細切れでも何かの度につい手に取ってしまい速攻で読破。
今回も5つの話が入った短編集で、こんな感じのパターン通りの展開を見せる。
- 精神的な部分に起因する症状(不眠、尖端恐怖症、強迫神経症、イップス、嘔吐症)を持った患者が伊良部の病院を訪れる
- とりあえず注射
- 伊良部がいろんなところに首を突っ込み出す
- カウンセリングはしない
- 伊良部の「逆療法」のせいで状況が悪化
- 最終的に何とかなる
前作『イン・ザ・プール』に続き2巻目ということもあり、もしかしたら、伊良部一郎の過去など、登場人物の突っ込んだところまで掘り下げがあるかも?とも期待したが、最低限に終わったことで、却って続刊への期待が膨らんだ。
少しだけ主要登場人物について掘り下げたのは以下。
- 伊良部の(変人ぶりを補強する)学生時代のエピソードが明かされる:「義父のヅラ」
- 常に無愛想なボディコン看護師・マユミが初めて「人間っぽさ」を見せる:「女流作家」
- これまで伊良部の話の中にしか登場しなかったイラン人が、ついに本編に登場する:「ハリネズミ」
最後のイラン人(2つある台詞の一つが「先生、困ラセル。アラーノ神ガ許サナイ」笑)が、その最たるものだが、このシリーズの良い所は、ヤクザや作家、プロ野球選手などを、期待通りにデフォルメして描いてあること。伊良部の口癖の「上野の外国人(イラン人)に頼めば何でもやってくれる」なんかは本当に酷すぎる。
結局、ステレオタイプで面白いところは雑なままで行って、患者の立ち直りシーンを少しだけ丁寧に描くというメリハリをつけた人物描写(というか90%くらい雑?)がいいのだと思う。
今回の読みどころの一つは、運動神経ゼロのように見える伊良部が、一部のスポーツに若干のセンスを見せるところ。(「空中ブランコ」「ホットコーナー」)
一冊目の一番始め「インザプール」でもそうだったが、巨体が動くとそれだけで絵になる!
宙に舞う伊良部は、海面に出現したクジラに似ていた。ああそうかと公平は納得がいった。これはホエール・ウォッチングと同じなのだ。だから団員がみんな見物に来るのだ。P45
続刊もあるということで、すぐにでも読みたいくらいだ。