Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日経新聞6/24(日)

痛みの改革 迷い続く/欧州、危機のさなかの成長探し(3面:けいざい解読)

欧州各国の経済の成長戦略を独仏伊の3か国について簡単に説明し、方法論は違えど、成長を重視する各国に、消費税増税攻防のみに終始する日本の政治が遅れをとると指摘する。
3か国の成長戦略は以下の通り。

  • ドイツ:財政を使わず、痛みを伴う改革規制緩和を進める「我慢の成長」。失業保険の支出を絞り、単位労働コストを下げたことで、輸出競争力が大幅に強まり、失業率が東西統一後最低に。輸出産業が強い国にしか真似できないとの批判も。
  • フランス:政府の財政出動で需要をつくる発想で、教師や警察など公的雇用を増やし、中小企業を支える。構造改革には慎重で分配重視の政策で国民の人気は高い。しかし、国際競争率の低下が課題で、富裕層に高税率をかける政策に対して、英国が仏企業の英国移転を積極的に呼びかけるほど。
  • イタリア:合わせ技。猛反発を受けながら労働者の解雇禁止を解いて新規雇用をしやすくしる一方、ドイツの緊縮主義には乗らずに、財政支出も図る。

リオ+20閉幕/主要問題すべて先送り(5面:国際)

本日の社説で書かれている内容をさらに厳しく書いた内容。

 ブラジルのリオデジャネイロで開いた国連持続可能な開発会議(リオ+20)が22日に閉幕した。1992年にリオで開いた国連環境開発会議(地球サミット)から20年の進展を点検し再出発の場とするのが目的だったが、成果は乏しかった。

環境悪化→貧困・社会不安→環境悪化の負の連鎖が拡大するのを避け、持続可能な成長の道筋を見つけるためには、エネルギーや資源の利用効率を上げ、経済成長と資源消費の増加をデカップリング(分離)する政策や技術が必要との指摘は、まさにその通り。この問題については、温暖化ガスの削減目標引き下げの議論ばかりが先行しているとの批判で結ばれているが、確かに、こういう面で日本は沢山できることがあるはずで、今さらながら鳩山イニシアチブが恨めしい。

日本の電力、どう賄う?(9面:日曜に考える)

意見を述べる二人は、原発容認派として、日本エネルギー経済研究所理事長豊田正和氏。原発反対派として富士通総研主任研究員高橋洋氏。
経産省審議会がまとめた2030年の電源構成の主な3つの選択肢があり、このうち豊田氏は最も原発依存度が高い20〜25%案を支持。高橋氏は0%を支持するかたちだ。(2010年度実績は26%)
自分は、基本的に原発依存を20年かけてゼロにする後者に賛成で、この文章を読み、改めて、その前提として発送電分離が必要なのではないかと感じた。高橋氏の意見は全国に送電会社が1つか2つを想定している。このテーマは、もっと真面目に議論されても良いと思う。

先週もリンクした安井至教授のHPでは、今回、「国民的議論」の前提としての基本事項の説明を行っているが、今後のエネルギー供給に関する選択肢の議論について参加者の立場からの指摘が面白かった。同内容が繰り返されているが、引用すると以下の通り。

  • 基本問題委員会による議論が最悪の状況だったと思うが、原発推進派と原発反対派の自己主張による対立だけが目立ち、本来、国民による判断基準として何を提案すべきか、という議論になかなかならなかった。特に、あらゆる視点からのリスクや経済的影響・雇用への影響のように、定量的に議論すべきことも、最初は、0か100かの議論しかできなかった。
  • 委員会に参画している委員が自分の役割を誤解していて、国民に提示すべき選択肢を決めることが本当の役割であるにもかかわらず、特に、基本問題委員会で顕著だったが、自分が所属している組織にとって、どのような選択肢が有利かという議論を繰り返し、反原発派と原発推進派と、キレイに二つに分かれた議論になって、最初のうちは、中間的な選択肢も書けないという事態になったこともある。
  • 「背後霊」が声を出させている状況、すなわち、委員本人は、その場における自らの役割と自らの良心を忘れて、後ろから操縦されて何かをしゃべる状況にハマる。

そのような議論を経てまとまった案なだけに、短い時間で理解するのが困難で、うまく国民的議論が進められるのだろうかというのが懸念。最後に実際に「選択肢」について説明した事例を挙げているが、実生活へのリンクが分かりにくいのは確かで、数字の意味を考えずに、0か100か中庸かという選択しかできないような気がする。これについても「国民の特性として、「よくわからからないから選択肢の真ん中でも選択するか」、という人が多いと想定し、そのときには、これまでよりも原発が多い選択肢を入れることが有利だと考えた人々が居た」という指摘がされているが、本当にその通りだろう。

C先生:実は、昨日の土曜日、山口県立大学で似たような講演を行ってみたが、やはり、難しい。全部で90分だったが、最初の60分をこの説明に掛けたが、どう考えてみても、時間が足らない。

A君:これらの話を、なんとなく聞いたとしても、実際の生活にどのような変化があるのか、実感するのが難しい。

B君:経済的活力が7?8%低下するといっても、その意味をきちんと理解するのは困難。非常に荒っぽく言えば、それだけ給料が下がるということなのだろうが、物価がどうなるかによって、生活程度も違ってくる。

A君:それよりも、給料・物価は基本的に変わらないが、7?8%失業率が増えるという説明の方がよいのでは。

C先生:何にしても、説明を単純化しなければならないが、単純化したとたんに、「割り切り」という「嘘」が入ってくる。裁判員裁判ぐらいの覚悟をもって議論に臨むことができる人を抽出して、それで議論を行うことが唯一の方法なのかもしれない。
ちなみに、基本問題委員会は、計26回、合計68時間の議論を行ったらしい。それでこの程度のまとまりの悪い選択肢しか出せていないのだから、いかに直接的な目的とかけ離れて、委員が自己主張をぶつける議論が行われたかが分かる、ということを証明しているように思える。
 いずれにしても、国民的議論がどのように行われるか、しっかりと注視したい。


いずれにせよ与党が党内議論を「時間切れ、トップに一任」で決めているような状態で、国民に、さあ議論しろ、と言われても困ると思う。

下水の排熱を回収せよ/大阪で効率的利用を探る(15面:サイエンス)

大阪市立大学中尾正喜教授のアイデアをもとにした、NEDOの研究事業の一環で、下水管のネットワークを通じた排熱の融通を行う実証実験。データセンターのような熱を発生する施設は下水の冷気でうまく冷やし、温まった下水から下流側にある施設で熱を取り出し、暖房や給湯に使うイメージ。ピンポイントではなくネットワークで使うことを想定しているのが特徴。
排熱はこれまで十分に活用してきたとは言えない未利用資源。未利用というのは利用困難と同義だと思うが、工夫によって何とかなる部分は少しでもアイデアを練ることが必要なのだろう。

読書欄

日本の原爆―その開発と挫折の道程

日本の原爆―その開発と挫折の道程

日本にもあった原爆の製造計画について関係者たちの証言を元に再構成した一冊。当時の科学者は、日本で原爆をつくることなど到底無理だと判断していたが、原子核研究のために軍を利用した一面があるという。戦況悪化の中で、軍が一発逆転の秘密兵器をつくっているという噂は一般市民の中にも広まっていたというように、軍内部、科学者、市民といろいろな立場から当時の状況を掘り下げる内容という。


kotoba (コトバ) 2012年 07月号 [雑誌]

kotoba (コトバ) 2012年 07月号 [雑誌]

コミュニティー再生をめぐる議論について、「従来あったコミュニティの再生を図るべき」と言う論調に懐疑的な、宇野常寛×萱野稔人対談や、「縁」によってゆるやかにつながる新しいコミュニティを指向する政治学者の中島岳志のインタビューに興味あり。


それをお金で買いますか――市場主義の限界

それをお金で買いますか――市場主義の限界

サンデルというだけでなく『感じない人』の森岡正博教授が評しているので気になる。米社会の「公正」と「腐敗」を考える一冊とのこと。

この世には、お金と引き換えにすることで、必然的にその本質が失われて腐敗していくようなものがたくさんある。そのような腐敗など取るに足らないものだとして、あらゆるものを市場に取り込もうとする社会に私たちは突入しようとしているが、その魔の手を食い止めるためには、冷徹な知性によって敵の本質を見定めておく必要があるとサンデルは熱く語るのである。

⇒(参考)過去日記:『感じない男』感想(2005年4月)


クレイジーケンズ マイ・スタンダード (小学館文庫)

クレイジーケンズ マイ・スタンダード (小学館文庫)

2007年に出ていた単行本の文庫化。こんなものが出ているのか。ちょっと見てみたい。