Yondaful Days!

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ネタバレなしで強烈にオススメする!〜石黒正数『外天楼』

外天楼 (KCデラックス)

外天楼 (KCデラックス)

この文章は石黒正数『外天楼』をオススメするために書いたものだが、まず裁判員精度のことを書く。
裁判員制度が導入されて、今年5月でちょうど3年が経つ。3年経った時点で、運用状況を検証することになっているが、この中で「守秘義務」の解釈についての議論がある。

裁判員は、公開の法廷で行われた審理は話してもいいのですが、判決を検討した評議の内容は、話してはいけないことになっています。
誰がどのような意見を言ったかが公表されると、発言を遠慮したり萎縮したりする恐れがあるという理由です。
一方、参加した印象や感想を話すことは、構いません。
自由に議論をするため、関係者のプライバシーを守るために、何らかの形で守秘義務が必要だ、という点では、ほとんど異論は聞かれません。
問題は、話していいことと、いけないこととの境界があいまいなことです。
例えば、裁判員が、判断が難しかったと話した時に、事件の内容が複雑だったという感想であれば、評議の秘密に当たりません。
ところが、評議の中で、あんな意見、こんな意見が出てきて、判断に迷った、という意味になると、評議の秘密にあたる恐れがあります。
表現の仕方や話の文脈によって違うわけです。

「難しかった」という呟きが「参加した印象や感想」なのであればセーフ、「評議の内容」に関わるものと判断されればアウトになってしまう。これでは、確かに、どこまでが話していいことなのか判断しづらい。
これに似たケースが、リアル脱出ゲームをはじめとする謎解きイベントにもある。

この公演は7月から始まって、9月末まであります。ブログ、TwitterFacebookでのネタバレになるような発言、写真のアップロードは固くお 断りしています。帰り道も気を付けてください。大きな声でネタバレ内容を話していて、うっかり隣に次回参加の方がいるかもしれません。


裁判員制度守秘義務同様、リアル脱出ゲームの場合、どこまでがネタバレになるのかというのは、結構難しい。
例えば、twitterで以下のような書き込みがあった場合を例に考えてみよう。
A.●●からの脱出、行ってきた!
B.●●からの脱出、脱出成功しました!難問揃いで最後の謎まで辿りつけないかと思った。
C.●●からの脱出、あまりネタバレになるから詳しいことは書けませんが、最後のどんでん返しには驚いた。本当にオススメです!
D.●●からの脱出、1問目の答えは「トナカイ」で、2問目の答えは「99」で…
このとき、Dは論外。Aはネタバレ要素がゼロ。その中間にあるB、Cはグレーゾーンにあたる。許される許されないの判断はあるが、ネタバレ要素はゼロではない。
例えば、Bのツイートは以下のネタバレ情報を含む。

  • 脱出成功者がいるということで難易度が推測できる。(ただし、これは通常、「禁止事項」には入らない)
  • 問題数が多いことが分かる。
  • その上で最後の謎が提示されることが分かる。


さらに、Cのツイートは以下のネタバレ情報を含む。

  • 驚きの展開が最後に配置されていることが分かる


どちらも許容出来る人も多いだろうが、ややCのネタバレ情報は罪が重い。イベントのクライマックスがどこに来るかという一つの大きなポイントをばらしてしまっているからだ。勿論、オーソドックスな型ではあるのだが、「通常のパターンに嵌らない」という驚かせ方(例えば、中盤にどんでん返しがあり、あとはスムーズに進む)もあり得ることを考えると、これから当該の脱出ゲームに挑む人にとっては、Cは、想像の幅をかなり狭めるツイートになってしまう。


twitterやブログは、見たくない人は見なければいいが、例えば、歴史が長いはずの書籍というメディアでも結構大々的にネタバレをしてしまっているものもある。


ミステリは、伝統的に、当然ネタバレ禁止のはずだが、それでも未だに「ラスト1ページの衝撃」というような帯文を見かけることがある。このような書かれ方をしたミステリは十中八九が叙述トリック(代表的なのは、一人称の主人公が犯人など叙述方法がトリックに含まれているもの。)であり、完全にネタバレしていることになる。
「それでもあなたは騙される」という程度にしておけば、ぎりぎりセーフのはずなのに、売るためには、本当は内緒にしておくべきところまで見せてしまう。
面白いことの大半が「意外性」に依存している作品は、本来は、そうと気づかずに手に取って、クライマックスで本当に息をのむのが最も望ましいはず。そうではなく、大口を開けたまま絶叫するタイミングをいつ来るかいつ来るかと心待ちにするような物語は、消費のされ方として健全ではないと思う。


さて、外天楼。
Amazonレビューが60以上もついているから只者ではないことは明らか。
内容についての惹き文句は、『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之監督の「極上の異世界ミステリですよ!」大絶賛コメントのみで余計な煽りは無いのが嬉しい。
ここまで書いてきたのは、実は、少し書き出すと、すぐにネタバレ要素に踏み込まざるを得ない物語があり、『外天楼』は、まさにそれに当たるため。自分も何度か読んだものの、やはり一読目が一番面白かったので、何も情報を仕入れずに読んだ方がいいと思う。
・・・と書くと、この文章は、やや矛盾しているようだが、上に書いたような、面白いことの大半が「意外性」に依存している作品というわけではないので、安心して読んでもらえればいいと思う。
ということで、かなり面白い漫画だということだけ仄めかしつつ、『外天楼』のオススメを終えます。