Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

新年の挨拶は「むけおめ」で〜『あたらしいみかんのむきかた(2)』

あたらしいみかんのむきかた 2

あたらしいみかんのむきかた 2

通称「みかむき」で知られるこの本は、みかんのあたらしいむきかたに燃える主人公むきおくんの話と、実際に、例えば表紙にある「すずめ」をどうむくかという「むきかた」の説明が、交互に現れます。
2巻は「むきおのこくさいこうりゅう」「むきおのおとしだま」「むきおのはつゆめ」の3作で、21個のあたらしいみかんのむきかたが紹介されています。
案の定、よう太が気に入って、ストーリー部分を朗読してくれたのですが、何となくいい加減に読んでいた部分でも、ストーンと落ちる感覚があってさらに楽しめました。特に、むきお君の鉛筆書きで書かれる「思ったこと」の部分は、ずれているけど無邪気なコメントが連続したあと、急にブラックなものが来たりして不意を衝かれます。
簡単な動画紹介があったのでリンク。


さて、このタイプの本は読んで笑っておしまい!と、なりがちなのかもしれませんが、作っている方としては本気なのだということが、岡田好弘さんによるあとがきを読むとわかります。

もともと捨てられるはずのみかんの皮に価値をみつけて命を与えていくことは「もったいない」という言葉が伝える日本人の心に通じるものがあると思います。制限の中で生み出すこと、和を求めること、シンプルな造形美、そういったキーワードによる創作であり、そして最も日本的な果物で作る「みかむき」は、まさに日本的な芸術なのです。今から後このアートが日本の新しい伝統文化の始まりになればと思います。

イラストと文面の「お笑い」部分は神谷圭介さんが担当しているのに対して、実際の作品写真や作り方など「芸術」部分は、岡田好弘さんが担当しており、両者で熱意のベクトルが全く別なのでしょう。読む側としても「コレ笑える〜」だけじゃ、岡田さんに申し訳ありません。
そこで、実際に作ってみることにしました。(なお、線描きには蛍光ペンを、切るのは果物ナイフを使用)
→→→→(うさぎ)
→→→→(すずめ)


ほら、作ってみると何かちょっと楽しいじゃないか。(実際は、ちぎれないようにむくのが大変で、お祭りの屋台の「型抜き」を思い出しました)
一通り笑って楽しんだあとは、主人公のむきおくんのように

ぼく むくよ

と決意してしまうこと請け合いの本です。
その意味では気軽な気持ちで手にとってはいけありません。覚悟しましょう(笑)

関連本

生き物の持ち方大全―プロが教える持つお作法

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同じく作画担当が神谷圭介のコチラの本は、Amazonの取り扱い状況を見ると、絶版扱いなのでしょうか。
あたらしいみかんのむきかた』と笑わせ方の意図は似ています。
どこまで本気かと言えば、やはり「みかんのむきかた」の岡田好弘さんの本気は、ここには無いので、単なる悪ふざけに終わっている部分はあります。(ただし、本書で持ち方指南をされている松橋さんは写真家で、実際に生物の持ち方について詳しい方。)
これを読んで、それじゃあ、ミニブタを「バグパイプづつみ」という持ち方で持ってみよう!とか、オオカマキリエスプレッソホールドで持てたらモテるかもなんて思いつく人はそうはいないでしょう。
これは笑って済ませて良い本だと思います。
その意味では、このタイプの本のあり方として正しいのかもしれません。(笑)