Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

色弱とカラーユニバーサルデザインについて知る2冊

ちょっとしたきっかけがあり、色弱について理解を深めようと2冊の本を手に取った。
読んだ2冊はそれぞれ非常に読みやすい本。著者はいずれもNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構の活動に携わる人たちで、そういう団体があるということも知ることができたのは良かった。

当機構は、広く一般市民や団体を対象として色使いに関する評価・改善提案を行います。この活動を通じ実社会の色彩環境を人の多様な色覚に配慮したものに改善してゆくことによって、全ての人がより公平で文化的な生活ができる社会の実現に寄与することを目的として設立されました。

別の本の紹介動画だが、以下が分かりやすい。これを見れば以下の文章をすっ飛ばしてもいい(笑)。

栗田正樹『色弱の子を持つすべての人へ』

色弱の子を持つすべての人へ―20人にひとりの遺伝子

色弱の子を持つすべての人へ―20人にひとりの遺伝子

いわゆる「色弱」についての基本的な考え方が短時間で理解できる良書だと思う。
まず、色弱は、日本人男性は20人に1人、女性は500人に1人いる遺伝的な特性であること。また女性の保因者(色弱の遺伝子を持っているが本人は色弱ではない人)は10人に1人いるということがわかった。
ここで「色弱」と書いたが、特に、色弱色盲などの呼称をめぐる現状については、この本で学べて大きく前進できたように思う。
例えば、2005年度以降、眼科用語集の改訂により「色盲」という言葉は使われなくなったが、「色覚異常」という言葉は残った。ただし、当然「正常」「異常」という言葉にも抵抗はあるため、血液型と同様に、C、P、D、T、A の5種類の色覚型で呼ぶことを基本とし、このうち男性の95%、女性の99%を占めるC型以外を「色弱者」と呼ぶことがカラーユニバーサルデザイン機構によって提唱されている。*1

また、実際に、この本で書かれているように、青系から黒系の色の見分けについては、C型よりもP、D型の方が敏感で、暗いところでものを見分けたりするなど「明度差」の感じ方にその差が表れるという。ゴッホ色弱だったというのも有名な話だ。*2したがって、以下の図のように考えるのが実態に近いのだろう。

(本書P43より引用)
カラーユニバーサルデザイン機構のHPから紹介されているオンラインのカラーテストサイトX-lite "Online Color Challange"*3も、いわゆる正常/異常ではなく、自分がどの色合いに敏感かを理解するのに良いと思う。
また、Youtubeで以下のような動画も。


そのほか、色弱であるために困ることについても多くの事例が示されており、理解しやすい。
例えば、ボールペンの黒字と赤字の見分けや、カレンダーの日祝日の見分け、色だけで表示されたトイレの使用中表示、地下鉄路線図やUNO、焼き肉の焼き加減などなど。ただし、色のみで判断を要される部分は少ないため、実際にはそれほど困らなかったりするようだ。
自分でもエクセルで作成したグラフの色使いなど、気になる部分が増えた。以下のサイトなどを参照にしながら、できるだけバリアフリーな色使いに直していきたい。

なお、著者はイラストレーターであり、この本もカラーのイラストの点数が多く、とても読みやすい。めくったときの印象からすると表紙は、やや硬い感じがするので、その点は勿体ない。多くの人に読んでもらいたい本です。

伊賀公一『色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線』

色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線

色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線

こちらはAmazonでも批判があるように、確かにタイトルに偽りがある。決して、カラーユニバーサルデザイン最前線について書かれた本ではなく、著者の伊賀公一が小学生のときに自分が色弱だと知ってから、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の理事になった現在の活動までを追う、いわば自伝である。


色弱が理由で怒られた図画の時間(人の顔を緑色で描いた等)や科学との出会い、読書にはまった小学生時代から、進路変更について悩んだ中学高校までは、まだ普通。一浪して早稲田の社会学部に合格し、徳島から東京に出てきてからの生活は、まさに波乱万丈。2年生から国立の米軍ハウスでヒッピー生活を始め、ヒッピーのコミューンを当たりながら2度に分けて日本一周の無銭旅行に出た話などは、色弱と全く関係がないが面白い。しかし、例えば写真の現像、コンサートの照明係などアルバイトやサークル活動の中で、ポツリポツリと色弱が原因で失敗するエピソードが挟まれる。
大学を中退して結婚してからのエピソードも波瀾万丈だ。
生まれた子どもを育てながらアルバイトを渡り歩いたのち徳島に戻る。コンピュータショップから新たな生活のスタートを切れたのは、裏山から石を拾ってきて鉱石ラジオを自作したりした小学生時代からの積み重ねがあったから。お金を稼ぐことよりも、人の役に立つことをしたくなった著者は再度上京し、色弱の人をサポートすることに勢力を傾けることになる。あれよあれよと言う間にCUDOの立ち上げに携わり、現在に至る。
色弱にもかかわらず、カラーコーディネーターの資格(1級)を取得するエピソードなどは、ここまで読んできた山あり谷ありの半生があれば納得するしかない。


結局、色弱の人を介してでなければ、色弱のことを知ることはできないという意味で、人物中心に書かれた2冊の本は、自分にとって理解しやすかったし、ためになった。今後は、もう少し詳しい本も読んでみたい。
この2冊でいえば、どちらかといえば、栗田正樹さんの本をオススメです。

*1:カラーユニバーサルデザイン機構 色弱者について

*2:例えば、以下の記事などは、その観点で書かれたもの>ゴッホの本当のすごさを知った日

*3:色を順番に並べ直していくことで、色覚特性を把握できる。結果は、敏感に感じ取れる色合いがゼロに近い数値でグラフ化される http://www.xrite.com/custom_page.aspx?pageid=77&lang=ja