遅くなったが、この話題。
第2回将棋電王戦(主催・株式会社ドワンゴ、公益社団法人日本将棋連盟)五番勝負の第2局は、「米長邦雄永世棋聖を偲ぶ会」の執り行われた3月30日(土)、東京・将棋会館「特別対局室」で行われ、コンピュータソフト「ponanza」(開発: 山本一成〈いっせい〉氏/第22回世界コンピュータ将棋選手権4位)が佐藤慎一四段に141手で逆転勝ちしました。コンピュータソフトが現役プロ棋士に勝ったのは史上初めてです。これで対戦成績は1勝1敗になりました。第3局は4月6日(土)に船江恒平五段と「ツツカナ」が同所で対局します。
この日の電王戦は、ponanzaが数手目から長考し、疑問手をいくつか出す昼前の序盤と、サトシンが有利なかたちからいくつかのミスを経て圧倒的不利になる終盤を見た。
前回見たときの、阿久津主悦七段と矢内理絵子女流四段*1の司会もうまかったが、今回の野月浩貴七段と山口恵梨子女流初段(えりりん)の司会も面白かった。*2
特に序盤は明るいムードで、ponanzaの長考時間に、野月七段が話していた無駄話(棋士仲間でのスノーボードの帰りに光瑠君の対局を見ていたことなど普段の様子)も場を盛り上げ、えりりんの、(アプリ「将棋ウォーズ」を作り、ponanzaの山本一成さんも運営に携わっている)会社HEROZ紹介時に、説明文の一言一句をことごとく噛む様子なども楽しかった。
しかし、夜は厳しかった。途中で、控室に集まっていた棋士が検討を打ち切り、敗色が濃厚になり、サトシンが残り時間を使い切ると、ニコファーレの緊迫した雰囲気が伝わってくるようだった。
そして負け〜記者会見〜番組終了までの一連の流れは、息もつけないほどの内容。
- ひたすらに肩を落とすサトシン。
- サトシンへの気遣い溢れる(でも、やり過ぎない)ponanza開発者の山本一成さんのコメント
- スタジオで、涙するえりりん。
- サトシンは犠牲者というわけではなく、現役プロ棋士全員が、敗戦を自らのことと受け止め、前に進みたいという主旨の発言をした野月七段の目にもうっすらと涙。
もちろん一回勝負だから実力というより運やミスの要素もあるとは言え、負けてしまった。素人的には、序盤、そして終盤に至っても、サトシンが圧倒的に有利と感じられる展開になっていたにも関わらずあっさりと負けてしまう将棋というゲームの難しさを感じた。
それ以上に、「犠牲者」となったサトシンを皆が思いやり、コンピュータ開発者側も、プロ棋士側も今回の対局を糧に前に進もうとする様子が美しかった。初戦以上に意味のある戦いで、関係者の温かい空気が伝わり、一部とはいえ、番組を見て良かった。
さて、記者会見には、次(4/6)に対局を控える船江五段(ふなえもん)も同席しており、師弟愛溢れるPVも披露された。
プロ棋士の実力も四段から五段へと上がるが、コンピュータ側の実力も上がるので、やはり今回同様厳しい対局になるのだろう。対戦するツツカナは、唯一インタビューPVが無く、ポイントがよく分からない(開発者がメディアに出るのを嫌う人なのかもしれない)が、何とか勝ってコンピュータ将棋より星をリードしておきたい。
なお、直前のエキシビジョンマッチが本日放送されるとのこと。(2013/04/05 20:00開始)
何故、この人なのかはよく分かりませんが…。
参考(電王戦関連の将棋本特集)
- 将棋マイブームに火をつけた一冊〜米長邦雄『われ敗れたり』
- コンピュータ側の「稽古」を知る〜コンピュータ将棋協会監修『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』
- あから2010に心はあるのか?〜田中徹&難波美帆『閃け!棋士に挑むコンピュータ』
- 「顔」と読書の関係〜保木邦仁×渡辺明『ボナンザVS勝負脳』
- エレガントな将棋、あります〜野崎昭弘『ロジカルな将棋入門』
- 電王戦に向けておさらいの一冊〜岡崎裕史『コンピュータvsプロ棋士 名人に勝つ日はいつか』
- 努力は人を裏切らない、のか?〜大崎善生『将棋の子』
- この時機を狙ってた!〜羽海野チカ『3月のライオン』(1)
- 二階堂!タカハシ!NHK杯!〜羽海野チカ『3月のライオン』(2)
- 桐山のアタマをかち割ってやってほしいのです!〜羽海野チカ『3月のライオン』(3)
- やっと少年漫画っぽくなってきた〜羽海野チカ『3月のライオン』(4)
- 突然の超展開におろおろ〜羽海野チカ『3月のライオン』(5)