- 作者: 藤原一枝,はたこうしろう
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2002/05/01
- メディア: 大型本
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自分が感じるこの絵本の一番の魅力は、風景の上手さ。
山、川、市電、そして、海。
都会から田舎に行って過ごす数日間は、子どもには、忘れられない思い出、まさに「まほうの夏」になる。
子ども時代に、少しでも似た経験を持っている大人は、絵本に描かれる風景から、「まほうの夏」を思い出すと思う。
冒頭で子どもたちはこう嘆く。せっかくの夏休みなのに。
夏休み……
お父さんもお母さんも、お仕事だって。
きょうも、学校のプールとゲームと麦茶。それとポテトチップス。
あーあ、なにかおもしろいことないかな。
そしておじさんから来たはがきをきっかけに「さらば東京」と告げ、田舎(舞台は愛媛県)での「ぼくたちの夏休み」が始まるのだ。
田舎での二人の兄弟の生き生きとした表情が本当に幸せそうで、こっちまで楽しくなる。
一方で、「まっ黒にひやけ」したり、子どもたちだけで川に遊びに行く、といった話は、もしかしたら今ではあまり見られないのかもしれず、僕らの世代の懐古趣味なのかなという感じもする。
でも、せっかくの夏休みは、3DSで妖怪ウォッチ2の妖怪ともだちを増やすのではなく、少しでも僕らの信じる「まほうの夏」に触れさせてあげたい。
と、書いたあとに、この夏休みの鉄板メニューの絵本と、この満足感は前にも味わったことがあると思いだして再読したのが『なつのいちにち』。
絵柄が全く異なり気が付かなかったが、作者は同じく、はたこうしろうさん。
- 作者: はたこうしろう
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: 大型本
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こちらは、冒頭に「きょうはひとり。おにいちゃんもいない」と書かれており、『まほうの夏』とは設定が大きく異なる。田舎に住んでいる小学生一人が体力を使い切って過ごす夏の一日の話。
『まほうの夏』では背景が白い部分も多かったが、『なつのいちにち』では、ページの隅まで塗り残しなく、夏の風景が描かれる。森に虫取りに行ったり、夕立にあってびしょ濡れになるシチュエーションは全く同じだが、海水浴の場面はなく、神社で休んだり、昆虫・カエル、牛など生物がアップでリアルに描かれているので印象は全く異なる。
『なつのいちにち』は、都会から田舎に行くシーンや、兄弟でワイワイ楽しむシーンがない分だけ、より、一人の子どもが夏と向き合う感じになっており、かなり濃密な夏を楽しめる。
おしゃれなアート作品として眺めるなら『なつのいちにち』かもしれないが、ワイワイガヤガヤ感を重視すれば『まほうの夏』も捨てがたい。
どちらにしても、こういう「日本の夏」を下の世代、下の世代へと受け継いで行けるといい。
そのためには、知恵と努力が必要だ。
補足
関連するゲームとして、ずっと欲しいと思っているカードゲームがこちら。
昔プレイステーションであった『ぼくの夏休み』も含め、もしかしたら団塊ジュニアあたりのノスタルジーを狙って商品化されている?
なつのたからもの R・クニツィア作「ノミのサーカス」のリメイク作品
- 出版社/メーカー: ニューゲームズオーダー
- メディア: おもちゃ&ホビー
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