Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

苦手分野の攻略法〜『学習まんが少年少女日本の歴史(13)』『風雲児たち(3)』

天地明察』で興味を持った徳川家宣・綱吉の時代について歴史漫画2冊を固め打ちした。


まずは自分が中学生のときによく読んだ小学館の『学習まんが少年少女日本の歴史(13)』
江戸時代前期(1650年前後~1700年前後)を描いたこの巻では、登場する将軍は4代・家綱、5代・綱吉、6代・家宣。
天地明察』の登場人物にはあまり焦点が当たらず、明暦の大火(ふりそで火事)などのイベントや朱子学(綱吉が推し進めた学問として登場)、幕府の窮状については触れられるが、酒井忠清堀田正俊がやや多めに登場するくらい。
貞享暦を記念して井原西鶴が発表した「暦」について、西鶴と町人が話している部分の注釈として、渋川春海の名前が挙がるが、関孝和も含めて本編には登場しないのが残念。
大きな政変がないこともあり、「士農工商」という副題の通り、内容も、大名の参勤交代、庶民の農作業、町人のくらしと元禄文化井原西鶴近松門左衛門松尾芭蕉)と、人々の暮らしを追った内容となっている。


『漫画日本の歴史』に比べると、『風雲児たち』では、庶民の暮らしや町人文化については多くを触れない。(貞享暦や渋川春海については書かれていない。)しかし、庶民にとっての江戸時代を僅か3ページだがこのように評価する。

三百年間の江戸時代は「将軍家さえ安泰であればそれでよい」とうとんでもない時代であったことは動かしがたい事実である。
(略)
国は三百いくつに分断され 
上は中をおさえ
中は下ににらみをきかし
下はそれ以下をさげすんで不満を解消するという
それまでの日本人にはけっしてなかったヒクツなヒクツな人間がつくりあげられていく…
最悪といいたくなるほどの時代であった。
しかしそれでもなお…
その底からつきぬけてくる五月の風のようなさわやかな一面を否定することはできない
それは中世ヨーロッパの暗黒時代とは比べようもない明るい世界である

風雲児たち』では、その「明るさ」のルーツを辿れば保科正之人間性にたどりつくということが謳われている。庶民よりも歴史的人物の生き方や意志を追いかけることで歴史を語るのが『風雲児たち』のスタイルで、ちょうど、この巻の前半では、『天地明察』でも大活躍だった保科正之(松平正之)にスポットが当たるのだ。

のちの八代将軍吉宗はさまざまな善政を行ない
十五代中最大の名君、幕府の寿命を伸ばした中興の祖としてあおがれている
その吉宗が生涯尊敬しつづけ政治の手本として影響を受けた人物こそ
吉宗の代より百年も前のこの保科正之であることを知る人はあまりにも少ない
吉宗の事業のほとんどは保科正之が行なっていたことをより大規模にして再現したにすぎない


ということで、『天地明察』のキャラクターも活躍の巻が読めて満足だったし理解が深まった。
このようにして自分が苦手に感じている歴史関連の本をいくつか読んでいると、歴史を学ぶ向き、不向きというのは、想像し、共感する力がどこに一番働くかで大きく左右するのではないかと思えてくる。
自分は国同士のパワーバランスにあまり興味が湧かず、関連する人物や国が多い時代の話は頭に入らない。登場人物が出来るだけ少ない時代の話であれば、ある程度、網羅的に把握することができるので興味が湧く、というタイプらしい。したがって、ギリギリ楽しく勉強ができたのは鎌倉時代くらいまでで、中世以降の日本史や世界史には苦手意識がある。
逆に、国同士のパワーバランスや各時代の生活・文化の移り変わりに興味が湧く人は、日本史・世界史なんでもござれ、ということになるのだろう。
結局、苦手意識というのは、興味を置くことが出来るポイントが多いか少ないかでしかないのだと思う。
すると、自分のようなタイプが苦手意識を減らすには、想像し、共感できるポイントを少しでも増やしていけばいいことになる。つまり、陣取り合戦のイメージで、各時代時代の視点を増やしていくことで、(興味を持ちにくい部分に挑戦しなくても)全体の見通しも良くすることができそうだ。
その意味では、幕末時代の各藩の状況を説明するのに江戸時代まで遡って人物を追いかける『風雲児たち』は、自分には合ったテキストかもしれない。今も続きや少し先など、いくつか読んでいる巻があるので、また近いうちに感想を書くかも。