- 作者: 斎藤貴男
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/03/24
- メディア: 単行本
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自分は何となくの感覚で、少なくとも今回のタイミングでの消費税増税は反対した方がいいのでは?と思っていたが、実は、消費税についてあまり知らない。というより、(源泉徴収で取られていることもあって)税制についてほとんど分かっていない、ということで読んでみた本。
読む前は、『ちゃんとわかる〜』というタイトルと「14歳の世渡り術」というシリーズ名から、消費税の仕組みについて、教科書的に教えてもらええることを期待していたが、期待に反して、消費税を代表とする安倍自民党政権の政策に対して断固反対する本で、かなり政治色の強い内容だった。これは数ページ読むと「私は、この消費税という税制は悪魔である、と考えています」(p15)というキツい表現が出てくるのですぐにわかることだが、タイトルとのギャップには面食らった。
その他にも
- 本当は、弱い立場の国民一人ひとりを痛めつけている消費税増税(p18)
- 社会的弱者の富をまとめて巨大資本や富裕層に移転するための収奪システム(p164)
- 国家のためといいながら、小さいところが辛うじて食べていくために稼いだお金までぶんどるというのが消費税増税(p129)
と、感情的な部分に訴えかけるような表現も多く、タイトルを『悪魔の税金・消費税』とでもしないかぎり、羊頭狗肉のタイトルだ!と言われても仕方がないかもしれない。
ただ指摘される内容のほとんどはもっともな内容で、その意味で、これまで自分が「ちゃんと」わかっていなかったことが分かる。
特に今回よくわかったことは、「消費税が滞納の多い税である」ということで、これは国土庁HPのグラフ*1を見ると確かにその通りで、近年は他の税の滞納が全体的に減少しているのと比較して横ばいで、滞納の率が増えているといえる。
金銭の支払いが発生するところでは常に加算されている消費税がなぜ?と思うが、これは、消費税が、利益に対してかかる法人税や所得税(直接税)とは異なり、取引にかかる税(間接税)であることと関係がある。消費者が小売店で払っている消費税を実際に税務署に収めているのは中間事業者の人たちで、利益が出なければ払わない直接税とは異なり、赤字でも余儀なく払わされる税金だから。*2事業者が自腹を切って価格を下げている状況では赤字ぎりぎりで何とか売り上げを出しても、消費税はゴッソリと持って行かれるという状況になる。ゆえに滞納が多くなるということにつながるわけで、8%から10%への増税は滞納額がさらに増えることを意味し、期待したほどの税収増が見込めない。
本書では、源泉徴収で税金を納めているサラリーマン中心の考え方では消費税の問題が見えてこないと指摘するが、まさに自分にあてはまる。
斎藤貴男氏は、これらの問題について、応益負担ではなく、応能負担(お金を払える高所得者が沢山税金を納める)という考え方に戻し、消費税ではなく所得税、法人税で税収増を目指す仕組みにすべきとしている。あとで引用するシノドスの記事でも、消費税増税が低所得者への負担が重い点を指摘しているが、この本で一貫している「低所得者いじめの消費税」という一面は非常によくわかった。
現在生じているのは、低所得者をはじめとする弱者支援が目的の一つである社会保障の財源を確保するため消費税を増税することで、増税のしわ寄せが弱者に向かってしまっているという本末転倒ともいえる事態なのである。
一方で、やや牽強付会、というか言い過ぎな部分も多かったのも確かだ。
例えば、アメリカでは逆進的で公平性に欠けるため、消費税という税そのものがないという言い方をしているが、その後、自分で調べてみて、実際には連邦政府ではなく、州や郡で課税されていると知った。
また、「源泉徴収はナチスのしくみ」(p90)という言い方や、マイナンバー制度が監視社会の実現につながるという型どおりの批判(P78)などは、素直に頷けなかった部分。
しかし、これまで自分では気が付かなかった(気が付けなかった)問題点について気づかせてくれたという意味では、非常に役に立った本だった。また、 他の本*3への直接的な批判もあり、消費税推進派の本も読んでみようと思わせるような内容だった。もしかすると年内に衆議院の解散総選挙があり、その際には争点になるはずなので、もう少し勉強しておきたい。