記事のタイトルは「田島貴男 DC」としていますが、「田島貴男 のHome Studio Concert ~ディスコグラフィー ・コンサート」が正式名称。
本当に素晴らしい企画で期待が高まります。
3枚ずつのピックアップということで、1/23(土)の配信ライブで対象となるアルバムは以下の3枚です。
毎回書くようですが、自分は、ポニーキャニオン 時代からオリジナル・ラブ に入ったので、東芝EMI の頃のアルバムは後追いで、当時の思い出もへったくれも無いのですが、当時聴いていた音楽を思い起こしつつ、アルバムを聴き直してレビューし、気持ちを盛り上げます。
決意表明はコチラ⇒迎撃!田島貴男「ディスコグラフィー・コンサート」(に向けた準備) - Yondaful Days!
対象アルバム
LOVE! LOVE! & LOVE!(1991年7月12日)
結晶(1992年5月1日)
EYES(1993年6月16日)
SESSIONS(1992年8月26日)※企画盤
1991年~1993年の音楽
1991年の音楽 - Wikipedia
シングル
アルバム
⇒ドラマタイアップの当たり年。1989年にベストテン、1990年にトップテンが終了しているのも関係あり?
1992年の音楽 - Wikipedia
シングル
1位 米米CLUB :「君がいるだけで/愛してる」
2位 浜田省吾 :「悲しみは雪のように」
3位 B'z:「BLOWIN'」
アルバム
⇒尾崎豊 の亡くなった年。
1993年の音楽 - Wikipedia
シングル
アルバム
⇒ビーイング の年。なお、Wikipedea情報によれば、1993年をピークとするビーイング のブームは「1990年のB.B.クィーンズ のヒットを契機に始まった」という。え!B.B.クィーンズ がビーイング の始祖なんだ…。
1991年~1993年は、高校2年生~大学1年生の時期。
高校生の頃の自分にとって、音楽はテレビから流れてくるもので、学校ではユーミン やサザンのアルバムが…という話をしている人もいたが、CDを買うことはしなかった。
家にCDラジカセはあったものの、図書館で借りることがしばしばで、おそらく勉強優先のためなのか、歌モノを避けて、歌詞のないものばかりを聴いていたように思う。(G-クレフ、クライズラー&カンパニー 、カシオペア 、スクエア、その他ゲームミュージック )
ただ、流行りものは聴いていた。高校時代はLINDBERG 、プリンセス・プリンセス 、米米CLUB 、ドリカム、ユニコーン など。あと、2つ下の弟が1992年売上トップのチャゲアス 『SUPER BEST II』を買ってきていたので、このアルバムは結構聴いた。
いやいや、思い出すと、いわゆるガールポップ と括られるのか、谷村有美 や遊佐未森 を好んで聴いていたのがこの時期だと思う。
大学に入ってからはカラオケで歌うためにCDを借りてテープを作るのが好きだった。親の車を運転させてもらうときにテープを入れるのが嬉しかったのを思い出す。
ただ、具体的にこの人のアルバムは全部聴いているのいうのはあまり無く、一人挙げるならば小比類巻かほる 。『silent』(1991)あたりまでを一番よく聴いていて、おそらく新盤(中古盤でない)で初めて買ったアルバムは、『silent fiction tour 1991』(1992)というライブアルバムだと思う。
そんな1993年の自分は、オリジナル・ラブ のことをまだ知らない。
LOVE! LOVE! & LOVE!(1991年7月12日)
ここまで説明したように、東芝EMI 時代のアルバムはリアルタイムではなく後追いで聴いているのだが、その中でもこのアルバムには実は思い入れがない。
というのも名曲が多い故に、他の企画盤やベストアルバムと比べてこれを聴きたくなるタイミングが少なかったから。ジャケも2枚組ならではのゴージャス感があるし、これぞ信藤三雄 というカッコ良さに満ちているけれど。
だから他のアルバムでいつも気にする曲順等もあやふや。ただ、聴き直すと、「I WANT YOU」~「DARLIN'」の流れは大好きでよくここを聴いていたことを思い出した。
このアルバムの楽曲は、メロディラインは避けてベースラインやサックスを辿る聴き方をすることが多いけど、中でも「I WANT YOU」はいつもそう聴いていた。この曲はライブでは聴いたことがない…と思ってクレジットを確認すると、作詞は井上トミオ(井上富雄 さんのオリジナル・ラブ での作詞曲はこれだけでは?)!ということで、レア曲ですが、作曲は田島貴男 ということもあり、演奏可能性はあるのでは?
結晶(1992年5月1日)
心理学こそ最強の学問である!とか言いたくなってしまうほど1曲目「心理学」が凄い。ラブソング全盛の時代に、名前にLOVEが付くバンドにもかかわらず「変わらないのか変わりだすのか」が繰り返されるサビは独特で、後半にちょっと不安になる変拍子 がしつこく続いて1曲6分の濃厚過ぎる世界。
2曲目の「月の裏で会いましょう」のポップス度が高いのと比べると、「心理学」の濃厚さが際立つ。なお、企画盤「SESSIONS」は、1曲目2曲目の順序が逆で、しかも通常1曲目に入れにくいと思われる「ピアノ弾き語り」も、独特のアレンジで引き込まれ、こちらも最高。(『SESSIONS』は終わりも「ヴィーナス」のピアノ弾き語り)
なお、Wikipedia によれば以下の通り。この発言を読むと、「心理学」と、「スキャンダル」 そして、やはり歌詞が面白い「愛のサーキット」の世界観は繋がっているのですね。
今作では作詞を田島と木原龍太郎 とが半分ずつ手がけているが、田島は
「詞に関しては、音が出来る前に僕の中に歌いたい題材っていうのがあって。ある意味でそれにもとづいて曲を書いたところってのがあったから、この曲は僕が詞をつけたいっていう割り振りみたいなものは、なんとなくあったんです」
「普段つきあっている、僕のまわりの人たちの心の中に、変化みたいなものが起こってきた。っていうのを去年、生活しているうちに感じて、それを題材として詞を書いたんです。僕がそれを書いたこと自体、僕も変化してたっていうことなんだと思うんですけれど、例えば『心理学』っていう曲だと、セックスとかオカルトっていう方向性で書いたんです。自分の判断力として霊とか超能力とか、っていうのに頼る人が出てきた。テレビをつければそういう特集番組を年中やっているし。僕のまわりにはいたんです」
と、リリース当時のインタビューで答えている。
さて、Wikipedia にあるように、木原と田島で作詞を分けているというが、ラブソングに近かったりポップス度が高いのは全て木原曲。「心理学」「ミリオン・シークレッツ・オブ・ジャズ」「スキャンダル」も癖が強過ぎる。
「スクラン ブル」は大好きなのに、ライブではおそらく聴いたことがないので演奏してくれることを期待したい。
なお、『LOVE! LOVE! & LOVE!』~『結晶』~『Sessions』についてはプロデュースを手掛けた井出靖さんのnoteに当時の思い出話が、宣材などの写真と合わせて綴られていて興味深い。
当時のことを知っているファンの方は、既に読んでいると思いますが、こんな雑文を読むより1000倍くらい貴重な情報が盛りだくさんなので、まだ読んでいない人は是非。
この記事の第一回に、1991年10月21日、オリジナル・ラブ の初のホール・コンサート(渋谷公会堂 )の様子が書かれていて、ここに載っている動画が、本編ラストで「夜をぶっとばせ」~幕が下りる~アンコールで「TIME」。カッコよすぎて驚きました。「TIME」は聴いてみたいけど、弾き語り向きではないので、今後バンド形態での演奏に期待。
EYES(1993年6月16日)
続けて聴くとはっきりわかるが、『結晶』とは断絶があると感じる。
リアルタイムで聴いていなかった東芝EMI 時代は、アルバムの印象は結構いい加減で、特に『結晶』と『風の歌』に挟まれて、何となくぼんやりしたイメージしかなかった『EYES』については、今回聴きこんで大きな発見があった。
誤解を恐れずに言えば、『EYES』はアイドルのCDアルバムに近いつくりだ。
特に、『結晶』の後に出た『SESSIONS』との違いが顕著だが、『EYES』以前は、歌唱が楽器より前に出ないくらいの絶妙なバランスだった。
よく田島貴男 が言う、ピチカート・ファイヴ 時代に小西康陽 から教えられたという「感情を排した歌唱」が『結晶』まではクールでカッコよかったし、歌詞も、意味が強過ぎず、同じ言葉の繰り返しなどが多かった。
それが『EYES』は大きく変わった。
田島貴男 の歌が前面に出たアルバムになったように感じる。
アイドルの歌を生かすようにアイデア を出し合って楽曲制作や演奏が行われるのに近い雰囲気がある。
このアルバムはメンバー全員が作詞・作曲にクレジットされており、オリジナル・ラブ として最もバンドっぽいアルバムではある。そのメンバーの意図なのか、プロデューサー田島貴男 の意図なのかはわからない。
ただ、他人への楽曲提供は、この時期(『結晶』が出た1992年5月から『EYES』が出る1993年6月くらいまで)に集中的に行われていることを考えると、田島貴男 が自身を客観的に見た上で、そのボーカルを生かす作曲作詞を心掛けたと考えるのは自然だと感じる。
この時期の楽曲プロデュース*1
1992年5月 石田純一 「砂金」「ジゴロ」(作曲)
1992年7月 クレモンティーヌ 「ねぇ、ラモン」「リタがダンスを踊るとき」「サントロペで」(作曲・編曲)
1992年7月 本木雅弘 「THE CRYSTAL」「BLUE NOTE」(作曲・編曲)
1992年10月 池田聡 「ヘヴン」(作曲)
1992年10月 井上睦都実 「東京タワー」(作曲・編曲)
1992年11月 高野寛 と「Winter's Tale~冬物語 ~」
1992年12月 KOiZUMiX PRODUCTION「SEXY HEAVEN」(作曲・編曲)
1993年7月 井上睦都実 「夢で逢いましょう 」(作曲・編曲)
1993年7月 アンナ・バナナ『High-Dive』(アルバム・プロデュース)
1993年時期不明 「Never Give Up」(CX系「ウゴウゴ・ルーガ」エンディング・テーマ)
月刊カドカワ 1994年7月号 (『風の歌を聴け 』特集)の萩原健太 による全アルバム解説では、「ヴォーカリスト としての田島貴男 の成長ぶりも聴き逃せないポイント」という健太さんの弁と合わせて田島貴男 の言葉が引用されている。
歌うってことに関して目からウロコが落ちた時期。それまではソングライターとしての意識が強かったのか、曲に合わせて歌い方とか変えていたんですけど、このアルバムから”自分の声に合わない曲は歌えねえや”っていうか。自分の声をいかにうまく響かせるか、すごく考え始めた時期でしたね。
ほら、これ見ると、アイドルをプロデュースするような考え方でアルバム作っているじゃないか、と…。
続けて歌詞について。
月刊カドカワ の同じページで歌詞については、田島貴男 の次のような言葉が引用されている。
歌詞の面でも、たとえば『レッツ・ゴー』とか、それまで僕が試行錯誤を続けてきた”生きること”みたいなテーマに関して、ようやくこの時点での結論が出せた気がして。そういう意味でもすごく自信を与えてくれたアルバムです。
「LET'S GO!」は本当に偉大で、傑作アルバム『結晶』と『風の歌』のどちらにも近いテイストを持っている。歌詞も「終わりの始まりをここで始めよう今 Let's Go!」というサビは意味が重くなり過ぎず、繰り返し要素の入っているのは『結晶』に近く、全体の内容は『風の歌』に近い。
それと比べると、やはり『EYES』の二大看板「サンシャイン ロマンス」「いつか見上げた空に」の歌詞は、これぞ木原龍太郎 (『いつか見上げた空に』はクレジットとしては田島貴男 と共作)というのか、東芝EMI 時代のオリジナル・ラブ の曲で最も歌謡曲 っぽい楽曲(悪い意味でなく)でありながら、田島貴男 のボーカルの良さが最高に出た傑作。
「サンシャインロマンス」のカップ リング曲「ティアドロップ」も作詞・木原龍太郎 で同様の印象。*2
そして、「サンシャインロマンス」路線の曲は以降のオリジナル・ラブ では絶滅?してしまったのだけれど、宮田繁男 *3 と村山孝志 が主要メンバーのFIRST IMPRESSION「STARTIN' OVER」(1995年)が印象深い。この曲も本当に大好き。
VIDEO www.youtube.com
それ以外の曲も、今もライブでよく演奏する「灼熱」は当然として「妖精愛」「Wall Flower」「砂の花」など名曲ばかりが揃うこのアルバム。今回のディスコグラフィー コンサートでは、この3曲のうち1曲は演奏してほしい。
「I Wish」はPUNPEE との「Love Jam Vol.4」のときに演奏していた気がするけど、PSG「愛してます」越しに聴いてもやはり名曲。↓
VIDEO www.youtube.com
そんな中で「JUDGEMENT」はやっぱり面白い楽曲なんだけど、この曲が『EYES』っぽくなくて、『結晶』までのオリジナル・ラブ っぽい感じがするので、まとまりすぎるのを嫌った田島が、1曲くさびを打ち込んだ感じでしょうか。
という風に掘り下げていったら、思い入れが無かったこのアルバムもとても好きになりました。
演奏してほしい3曲
さて、ここまでを踏まえて演奏してほしい曲を考えると、以下の6曲でしょうか。3曲に収まりませんでした。
「I WANT YOU」
「DARLIN'」
「心理学」
「スクラン ブル」
「Wall Flower」
「いつか見上げた空に」
セットリスト
月の裏で会いましょう
GIANT LOVE
DEEP FRENCH KISS
WALL FLOWER
WITHOUT YOU
砂の花
LOVE VISTA
フェアウェルフェアウェル
愛のサーキット
ティアドロップ
ヴィーナス
I WISH
感想
想像以上に良かったです!
特に、定番曲を避ける選曲が素晴らしく、「もしかしたら、これをきっかけに多く演奏される曲になるのでは?」、逆に「この曲はライブで演奏されることはもうないのでは?(笑)」と色んなことを想像してしまいました。本人も「見えない展開」と言ってましたが、煉獄さん風に言えば、「よもやよもや」の楽曲の連続でした。
事前に「演奏してほしい曲」として個人的に挙げていた6曲(上にあります)の中で唯一演奏された「WALL FLOWER」は、楽器を絞ることでさらにメロディの良さが際立つようだったし、この曲に限らず、思い出補完が働いているのか、ギター一本とはとても思えないです。
それ以外に、上に挙げなかったけれど演奏してほしかった「GIANT LOVE」「砂の花」「フェアウェルフェアウェル」は比較的最近演奏した気がしていた(故に挙げなかった)のですが、「フェアウェルフェアウェル」を聴いたのは2010年の”好運なツアー”だったので、もう10年以上前でした。
タイトルに引きずられて「寛大な愛」を歌ったものと勘違いしてい「GIANT LOVE」は改めてゆっくり聴くと、「刹那的な愛」について歌った曲で、むしろとても不誠実で、それが良いです(笑)
そして、予想していなかった「WITHOUT YOU」「LOVE VISTA 」「愛のサーキット」そして「ティアドロップ」。これらは全て選曲の意外さを超えて演奏が素晴らしく、原曲を「惚れ直す」きっかけを作ってくれたのが2021年の田島貴男 の凄いところですね。
「ティアドロップ」は、自分にとって変な思い出がある曲です。おそらく1996年の『Desire』発売前で、ライヴ自体にも行く前、とにかくオリジナル・ラヴ を摂取したい!と渇望していた自分が、ファンイベントの”Origimal Loveナイト”みたいなものに初めて行ったときのことです。終盤に「ティアドロップ」がかかって、「聴いたことはあるのにこの曲知らない!!」「何故?あれほど勉強してきたのに!!!」と、出題範囲を間違えて勉強してきてしまった定期テスト のように頭が真っ白になりました。当時、全アルバムと企画盤は繰り返し聴いたのですが、出会った当初は聴いていた『Very Best』は、以降ほとんど聴かなかったので、ノーマークだったのです。(そういう聴き方をしていると「Winter's Tale」もノーマークになるが、こちらはさすがに聴けばわかる)
で、この曲は「サビ始まり」であり、「サンシャインロマンス」以上に、歌謡曲 よりの歌詞と楽曲構成と思っていたので、田島自身もあまり好きではないんだろうな、と思い込んでいたので、まさか今回のコンサートでピックアップされるとは…!なお、サビの「ぎみっよぅら!」か「でぃびっどぅら!」が癖になります。(この曲についてはほぼ耳のみなので「Gimmie your love!」という歌詞であることに気がつかず、スキャット と誤解していました…)
しかし、アルバム3枚からと言いつつ、アルバム未収録からも演奏されたので、「微笑みについて」「ディア・ベイビー」は当然として、全く演奏しない「冒険王」とか期待です。
それにしても、繰り返しになりますが、期待を遥かに超える内容で、企画自体が本当に良いですし、この流れからの発展として、当然、過去の楽曲の再演奏をパッケージで商品にしてほしいなあと熱望してしまいます…。
次は2/20に『風の歌を聴け 』『RAINBOW RACE』『Desire』(アルバム未収録曲は「接吻」「微笑みについて」)からの選曲となります。
いよいよ、自分がリアルタイムで聴いた時代に入るので楽しみです。