Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「石川くん」

石川くん (集英社文庫)

石川くん (集英社文庫)

元はといえば、真緑のカバーに親しみやすい子ども(石川くん)の絵、という装丁に引かれて購入した本。
しかし、中身の濃さは想像以上で大満足だった。
これまで自分が漠然と抱いていたのと全く異なる「本当の」石川啄木像が次々と露わになっていく。
〜〜〜
この本は全26回に渡って、歌人枡野浩一石川啄木の短歌を、今の言葉の短歌に訳したうえで、関連エピソードを紹介するという体裁。
枡野浩一の文章には、エピソードに合わせて、「石川くん」への手紙が挟まれるが、ほぼ90%以上が苦言・あてこすり。(それは当然「愛情の裏返し」ではあるのだが。)
ゆえに取り上げられる短歌も、「石川くん」の性格がよく現れたものが選ばれる。

一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと
(枡野訳:一度でも俺に頭を下げさせた/やつら全員/死にますように)

どんよりと
くもれる空を見てゐしに
人を殺したくなりにけるかな
(枡野訳:どんよりと/曇った空を見ていたら/人を殺してみたくなったり)

巻末の「石川くん年譜」も読みやすいし面白い。
金銭関係のトラブルに端を発する「絶交」「絶縁」などが人一倍多いだけでなく、自分の披露宴をボイコットしていることもわかり、変人ぶりがうかがえる。
〜〜〜
しかし、そんな石川も26歳という若さで亡くなってしまう。
また、合わせるようにして、石川くんの家族も続々と亡くなる。
かくして、悪口ばかりのこの本も、何となくしめっぽく終わるのだが、短い人生の中で天才・石川啄木がどう生きたか、興味のかきたてられる良書だった。
本文中にも、いろいろな参考資料についての言及があり、これらの中からピックアップして他の本にも当たってみたい。さしあたってはこれか・・・。


⇒実際に読んでみて衝撃を受けました!:石川啄木が嫌いになれるエピソードベスト4〜関川夏央・谷口ジロー『かの蒼空に』(2011年12月)