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重くあるべきトップの言葉〜『生声CD付き [対訳] オバマ演説集』

生声CD付き [対訳] オバマ演説集

生声CD付き [対訳] オバマ演説集

歴史の転換点に立つ人物の言葉に触れながら、英語力向上に役に立つという意味で、お買い得な本。ブックレット形式は、(量が多くて全部読めないということがないので)心理的に負担になりにくいのもいい。


日本では、スピーチやディベートという習慣がアメリカと比べて一般的でないためか、あまり国家首脳の名演説というものには目が向かない。「米国大統領スピーチ集」の類は相当な数あるが、近年、取り上げられることの多かった小泉首相ですら、その演説集がパッケージ化されて語学習得のために売りだされてはいたりはしないだろう。
だから、日本国首相の言葉とは同列には比較できないが、今回、オバマのスピーチを聞いて、あまりの格差に愕然とした。
演説ではないものの「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金を何で私が払うんだ。」「公立校に行かなくて、みんな何で私立に行くんだろう」「(年収が)1億円あっても、さもしく1万2000円が欲しいという人もいるかもしれない。」など、あまりに飲み屋のオヤジレベルの発言と比べると、オバマの以下の言葉は、いろいろな意味で涙が出てくる。(純粋に感動して/自国首相が情けなくて)

If there's a child on the south side of Chicago who can't read, that matters to me, even if it's not my child.

(シカゴ南部に文字の読めない子どもがいたとしたら、それは私にとって重大な問題なのです。たとえそれが私の子どもでなくても。)

If there's a senior citizen somewhere who can't pay for their prescription and having to choose between medicine and the rent, that makes my life poorer, even if it's not my grandparent.

(どこかに処方薬の代金を払えないお年寄りがいて、薬代を払うか家賃を払うかの選択をしなければならない状況にあるとしたら、それは私の人生を貧しくします。たとえそれが私の祖父や祖母でなくても。)

If there's an Arab-American family being rounded up without benefit of an attorney or due process, that threatens my civil liberties.

(アラブ系アメリカ人の家族がいて、弁護士や法の適正手続きに守られることなしに検挙されているとしたら、それは私の市民的自由を脅かすものなのです。)

It is that fundamental belief -- it is that fundamental belief -- I am my brother's keeper, I am my sisters' keeper -- that makes this country work.
(それは基本的な信念であり、それがこの国を機能させているのです。)

※訳文は演説集より。2004年民主党大会基調演説。このあとで有名な「There's not a black America and white America and Latino America and Asian America; there's the United States of America. 」という言葉が出てくる。


勿論、これがオバマの心の底からの言葉かは計りしれないし、これから行おうとしている政策と一致するかどうかもわからない。しかし、政治家の言葉は、国民に誇りを持たせ、奮起させる「重い言葉」であるべきだろう。麻生さんが、首相になる以前から『とてつもない日本』というメッセージを送っていたのは、まさにそのためだったと思う。
しかし、最近の言動からは、それを全く感じない。「言葉の大切さを理解していない麻生総理」*1というモリタクの指摘には激しく同意する。

こんなに、言うことがコロコロと変わる総理大臣は見たことがない。言葉がいかに大切かを分かっていないから、ものを考えずにその場の思いつきでポンポン口にしてしまうのである。もちろん、そうした点を国民はよく見ている。麻生総理の支持率低下の最大の要因は、まさにそこにあるとわたしは思っている。

引用の記事では“「3年後に消費税率を上げる」ではなくて、「3年間は消費税率を上げません」と言うべきではなかったのか。”とも書かれているが、これもその通りだと思う。これほど重要な発言にもかかわらず、伝え方に配慮が無さ過ぎる。例の「たらたら飲んで〜」にしても、発言の一部を切り取って記事にするマスコミの悪意も多少はあるだろうが、それ以前の問題として、一国の首相として言葉があまりにも軽い。
それは、当たり障りのない言葉を選ぶということでは当然なく、伝える相手のことを考えた上での、自身の頭から出る言葉であるべきだ。つい最近のJ-castの記事から裁判官の言葉を引用すれば、魂のこもった言葉であるべきだ。

「ありきたりの言葉は、被告人は聞き飽きている。被告人の人格に届くように言葉に魂を込める。『反省している』という言葉が本心からかどうか、自分の言葉でぶつかれば分かる。その手応えは量刑を決める際に考慮する」

麻生さんは、小さい頃から吉田茂の孫として大事に扱われた*2故に、周囲の緊張を解く「ざっくばらんトーク」を、処世術として身につけていったのかもしれないが、それは首相としては通用しないどころか逆効果であることにそろそろ気づいてほしい。
勿論、既に指導力という点で疑問視されているので、事態が好転にしくいのだろうが、国民を惹きつけるところはあるので、今後も、麻生首相の「重い言葉」に期待していきたい。
〜〜〜
さて、肝心のCDは、なかなか聞き取れません。ただ、口調と単語単語で全体の空気には乗っていけるのですが・・・。

*1:同じSAFETY JAPANの記事で、少し前には花岡信昭氏の、麻生首相の言葉に対する全く逆の評価の記事も書かれていたのだが・・・。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/y/128/

*2:だから誰も感じの読み間違いを指摘しなかったのだろう。