結局、今年もCDは、カバー曲「ボラーレ!」1曲だけだったオリジナル・ラヴ。
新曲(オリジナル曲)の発表が出来ないだけでなく、相変わらず、所属の問題が明確にならないなど、ファンには心配な日々が続く。
しかし、web上では、今年から始めたtwitterと併せて、原則平日は毎日更新のdiaryがあるので、むしろ、昨年よりも身近に感じられるようになったくらいだ。
さて、最近の田島貴男diaryでは、新曲制作の様子が度々アップされるが、作詞について書かれている内容は個人的に興味深い。そもそも音楽的な部分に疎いこともあり、このブログでは、オリジナル・ラヴを取り上げるときは、歌詞中心で話題にすることが多いからだ。
そういう中で、何となく心に引っ掛かりを覚え、少し反論したい気持ちになったものをひとつ取り上げる。
25時から書き始まる歌詞だから、一日24時間の社会の役に立つことはない。
でもそういう歌詞こそ価値があるのではないか。
社会の役に立つ歌詞はどこか嘘くさい。
そういう歌詞は本当は価値などないのではないか。
ここで書かれていることは、何となく分かるが、反発したい気持ちもある。
歌詞が、それのみで価値を問われることは無いのではないかと思ってしまうのだ。
例えば、ひとつ前のエントリで取り上げた槇原敬之作詞作曲のSMAP「Love & Peace Inside?」の歌詞を取り上げる。
自分の心が変わればきっと
同じ様に世界も変わるはず
思いも寄らない方法で
世界は変えられるんだ(SMAP)
これを、次のように変えただけでだいぶ印象が変わるのではないだろうか?
自分の心が変わればきっと
同じ様に世界も変わるはず
思いも寄らない方法で
世界は変えられるんだ(鳩山由紀夫)
ぐっと説得力が低く、価値のない歌詞に激変したのではないか。少なくとも僕にはそう思える。
いきなり宇宙人的な感性が入り込み、近寄りがたくなったように思える。
歌詞が必死に「Trust me!」と言っているのが見える。
鳩山さん支持者の方には以下の例ではどうだろうか。
何か、物凄く危険な感じがしてくるのではないか。*1
比喩自体が誤っている可能性があるが、歌を映画にたとえるならば、歌詞は脚本、歌手が役者、楽曲・歌唱が演出・効果に当たるのではないかと思う。*2勿論、脚本の良し悪しは映画の出来を決めるし、出来た映画の良さのひとつとして、脚本が取り上げられることはあるが、それだけが評価の対象になることはあまり無いのではないか?
歌に戻れば、歌詞そのものが、それだけで評価されることは殆ど無くて、むしろ聴き手からすれば、歌い手の個性や、その表現の仕方(楽曲の良さを含む)が土台にあり、その上で歌詞の内容が問われてくるのではないかと思う。
僕は、SMAPの「Love & Peace Inside?」は、聴く人の心に響き、「社会の役に立つ歌詞」であると思う。確かに、他の歌い手が歌えば、聴くに堪えない恥ずかしい歌になっていたかもしれないが、SMAPが歌うことで、この歌詞は非常に高い価値を持つものになっていると思う。
田島貴男の言葉に反論するなら、歌詞そのものだけで価値のありなしは決められないし、ましてや、社会の役に立つ歌詞が価値が無いということはあり得ない。
いやいや、そんなことは、当然、田島貴男も分かっているのだ。ボラーレはカバーする歌手の個性によって聴こえ方が変わることを書いた日記(コチラ)があったし、それこそ映画監督のように、歌手にどのように歌えばいいか指示ができる歌謡曲時代のディレクターの話を書いた日記(コチラ)もあった。
だから、今回のエントリは、単なる揚げ足取りであり、別に田島貴男に徹底反論したいとかそういう気持ちは無い。ただ、自分と音楽との関わりについて、少し考えるきっかけを与えてくれたので、とても良かったと思うのだった。
参考(過去日記)
- SMAP『We are SMAP!』年末に是非オススメの一枚
- 岡村靖幸の復活に必要なもの(2005年7月):作品の「解釈」とミュージシャン・リスナーの関係性について
- 『東京 飛行』を語る(7)〜ジェンダー(2007年1月):アルバム一曲目「ジェンダー」の批判。特に歌詞。
- 『Rainbow Race』に見る、オリジナル・ラヴの理想形(2007年5月):田島貴男に歌ってほしい歌詞について。
- YUKI『メランコリニスタ』(2006年2月):「世界に一つだけの花」という曲と「主語のある」歌詞について。
*1:ここら辺の論理展開は、この本をパクッています。いずれ取り上げるかも。→
*2:ひとつ前のエントリで「Love & Peace Inside?」と併せて取り上げた「SMAPのポジティブダンス」は、SMAPを、歌手としてというより役者として扱い、メンバーの個性に合わせて作られた楽曲であるように思う。特に歌の下手な中居君の使い方がうまい