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漫画&クイズで迫りくる富士山噴火について学ぶ〜鎌田浩毅・高世えり子『もし富士山が噴火したら』

もし富士山が噴火したら

もし富士山が噴火したら

昨日28日午前7時43分ごろ、富士五湖直下を震源とするM(マグニチュード)5・4の地震が発生し、最大震度5弱を観測した。
その後に起きた地震を辿ると明らかだが、同じ場所を震源とする地震が頻発しており、今日29日も夕方に、東京でも震度3となる地震が起きて不安は募るばかり。一応、zakzakの記事から専門家意見を抜粋。

  • 気象庁「(この地震について)富士山の活動とは関係ない」
  • 千葉大津久井雅志准教授「マグマだまりの中の炭酸ガスが発泡し、地中での上昇を繰り返して地上に一気に吹き上がる現象が噴火。地震の揺れがマグマだまりを刺激することになり、影響が心配です」
  • 東京大学地震研究所の武尾実教授「富士山のマグマだまりは地下10キロ以内に1つ、15キロより深い場所に1つ。少なくとも2つあるといわれています。噴火発生前には地震が頻発する傾向にあり、警戒が必要です」
  • 気象庁関係者「すでに日本は地震活動期に入っている。M9の東北地方太平洋沖地震によって活発となったプレートの動きが富士山の火山活動に影響を及ぼしている可能性が高い」


さて、つい先日の1/25の東海地震予知騒動にも踊らされてびくびくしていた自分は、1/28の地震のあと、早速本屋でこの本を購入。結果、かなり勉強になった。
自分にとって日本の火山学者といえば、3.11以降は、つい群馬大の早川由紀夫教授を思いだしてしまう*1が、それ以前は、この本の著者である赤シャツのイケメン・京大の鎌田浩毅教授だった。
この本は、そんな鎌田教授の教材を高世えり子が上手く漫画にしたもので、基本的には漫画のクイズ数ページ+鎌田教授の解説1ページという構成で、あっという間に読める。漫画&クイズ好きのよう太と一緒に、すぐに漫画部分を読んでしまった。
漫画は以下の3章構成で、1章、2章は、主人公に自分を重ねることによって、多くの人が自分事として富士山噴火を捉えることができる。

  1. もし東京出張中に富士山が噴火したら
  2. もし富士登山中に噴火がはじまったら
  3. もっと知りたい、富士山と噴火の基礎知識

このような防災シミュレーションを示した本は、被害の甚大さを訴えるタイプのものが多く、結果として、「こんな大変なことは自分には起きない」と思考回避の逆効果を生んでいた気がする。したがって、いくら「教育」目的でサバイバル知識が入っていても、すぐに実践には結びつかなかった。
しかし、この本の登場人物は飄々としており、1章で大阪から出張に来ている主人公は、生死というよりは、仕事のために、サバイバルする。富士山噴火は、付近の人にとっては、避難等も含む、相当大変な動きを強いることになるが、出張中のビジネスマンにとっては、「面倒なこと」の一つに過ぎない。この本の対象としている読者からは、ほとんど「地元の人」は除かれている。その潔い部分が、本を分かりやすくしている部分なのだと思う。
さて、大切なことを列挙すると以下の通り。

  • 富士山噴火は、短期的には予知できる可能性が高い。(群発地震などの存在。ひずみ計などが示す異常値などから把握。この漫画では、数週間前から噴火が直前に迫っていることをテレビで放映)
  • 飛行機はすぐに止まる。
  • 東名高速など富士山に近い高速道路などもすぐに閉鎖される。
  • 溶岩は東京にまでは来ないが、火山灰は積もる
  • 火山灰によるコンピュータや電気系統のトラブルが続出する可能性がある。
  • 火山灰は、微小なガラス片であり、角膜を傷つける。(コンタクトは×。ゴーグルが◎)
  • 積もった火山灰を処理する際には、水で流さない。(側溝が詰まる。乾くと固くなる)
  • 火山灰堆積後の降雨による泥流(土石流)には要注意。*2
  • 富士山は、山頂ではなく山腹から噴火する可能性が高い。


なお、鎌田教授の常時携帯しているサバイバルグッズは水、食料、ペンライトと書いてあり、自分の経験*3も踏まえて、早速ペンライトを購入した。
また、富士山噴火を考える際の基礎資料として、ハザードマップが何カ所かで紹介されている。日本の活火山は110あるので、付近の火山のハザードマップは見ておいた方がいいかもしれない。(東京に近い火山は、箱根山がある)
火山ハザードマップデータベース(独立法人防災科学技術研究所)


ただし、前回の噴火(1707年:宝永の大噴火)のときもそうだが、東海地震などと連動して起きる可能性が高いのは本当に怖い。直接の被災地になってしまえば、火山灰対策どころの話ではなくなるだろう。しかし、来るのは確実との話なので、覚悟を決めて、防災用品を改めて拡充しようと思った。

*1:正しいことを言っているときもあると思います。でも独特の意見に同意できないときが多過ぎます。知らない人は教授の名前でググってみてください。

*2:土石流について参考→土曜解説「新燃岳の噴火と火山防災」2011年02月12日

*3:3.11のとき秋田で停電に会い、怖い思いをした。→http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20110401/sinsai