- 作者: 初野晴
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/10/02
- メディア: 単行本
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ハルチカシリーズは、芝居がかった台詞回しと、漫画のような設定(奇抜な部活動)、そして、強引だが題材が楽しいトリック部分が特徴的な学園ミステリで、一冊に四編というちょうど良い長さの内容。
- 「ストリングラフィ」とは糸電話の原理を応用した楽器のこと。糸電話の使い方が印象的。
- 「周波数は77.4MHz」ではローカル局のFMはごろもの人気番組「七賢者への人生相談」がまず題材に上がる。これと、ヘルメットをかぶった美人の地学研究会・部長を強引に絡めてくるという、ハルチカシリーズならではの力技が堪能できる作品。
- 「アスモデウスの視線」では、一ヶ月に三度の席替えを繰り返した担任教師が学校に来なくなった理由を探る。“席替え”を題材に持ってくるのは、とても良いと思う。
- 「初恋ソムリエ」。多数の助手(初恋ソムリエール娘)を従える初恋研究会代表・朝霧亨。このあり得ない設定だけで大満足だ。ただ、初恋の記憶を匂い*1から再現するというメインのアイデア自体は、一冊目に収録している「オモイデマクラ」と発想が似ているのが残念。登場人物にも「発明部のオモイデマクラみたいな話になってきた」と言わせているので、かなり自覚しているのだろう。ただ、強引すぎる展開は、やはり面白い。
どうでもいいが、最近、NHKの土曜アニメ『バクマン』のあとに放送されている『日常』を楽しんで見ていくうちに「萌え」とは何であるかを次第に理解してきた。「萌え」とは、「お約束的爽快感」。つまり、立ち過ぎたキャラによる漫画的なセリフ回しや仕種、それらの過剰な言動が「お約束」のルールに入っていれば入っているほど、スカッとする。それが「萌え」だというのが今の自分の認識。その意味では、ハルチカシリーズは間違いなく「萌え小説」だ。
全体的に見ると、一作目だったこともあり『退出ゲーム』の方がインパクトが強かったが、この本も安定した面白さを保っている。次も早く読んでしまおう。ところで、前も書いたけど単行本の装丁はとてもいい。3作目もジャケ買いものの装丁です!
- 作者: 初野晴
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: 単行本
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参考(過去日記)
- ドタバタでも筋の通った青春ミステリ〜初野晴『退出ゲーム』(2011年6月)
*1:匂いと記憶というのは、根拠となる研究論文を持って来なくても実感として理解しやすいからよく使われるのだと思う。しんちゃんの「オトナ帝国」でも重要なポイントとなっていた。