Yondaful Days!

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エッフェル塔に鉤十字がはためいた日〜『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ』

戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅 (大型絵本)

戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅 (大型絵本)

「ジョージはかわいいこざるでしたが、とてもしりたがりやでした……」ではじまる、ジョージの絵本は、今から50年以上も前にレイ夫妻によってかかれました。

ふたりは、ドイツ生まれのユダヤ人。学校を卒業してからそれぞれブラジルにわたり、いっしょに仕事と生活をするようになります。新婚旅行でふたたびヨーロッパを訪れますが、しだいに戦争の足音が近づいてきて、ついに4年も滞在したパリを脱出します。ドイツ軍が侵攻してくるわずか2日前、しかも、ハンス自身が組み立てた自転車に乗って!

わずかな荷物のなかには、冬のコートに守られたジョージの原画もありました。ジョージは、ニューヨークをめざすレイ夫妻と長い旅をとともにしたのです。

処女作『ひとまねこざるときいろいぼうし』が出版されるまでのドラマを、丹念な取材をもとに、簡潔な文章と写真やイラストなどで構成。レイ夫妻について知りたい方はもちろん、ジョージの絵本に親しんできた子どもたちにも手にとってもらいたい、絵本仕立てのはじめての伝記です。

リンク先の訳者からのメッセージに、この絵本で描かれるストーリーは全て書かれています。

1939年に、パリで「フィフィのぼうけん」として生まれたおさるのジョージ(の原稿)は、1940年に戦火に追われたレイ夫妻(H.A.レイ)とともに、パリから南下し、スペイン、ポルトガルを経由してブラジル(二人は元々ブラジルに住んでいた)に渡り、やっとのことでニューヨークに「脱出」しました。本書では明るく描かれているこの脱出行が成功しなければ、『おさるのジョージ』は、世界中の子どもたちを楽しませることはなかったのです。
シャンゼリゼ通りをナチスの軍隊が行進し、エッフェル塔にはためくフランス国旗が、ハーケンクロイツに変わった1940年6月14日は、当時生きていた人たちだけでなく、フランスという国そのものに大きな傷跡を残したに違いありません。
おさるのジョージ」製作の裏話*1みたいなものは全くなかったのが残念ですが、主要国の歴史ももっと整理して勉強しておきたい、と久しぶりに思った一冊でした。

*1:アニメでよく見ていて、黄色い帽子のおじさんって、かなり金持ちで、かなり変わった人だなあとよく思うので。