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ラジコンの達人からも学ぶ48歳〜山本昌『133キロ怪速球』

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

テレビ中継が減ったこともあり、最近ではほとんど見ないが、10年くらい前まで は、やはりプロ野球は自分の関心の中にあった。*1
だから現役選手で知っている人というと、必然的にベテラン選手となる。
中でも 山本昌はその名を知っているのは当然ながら、48歳ながらいまだに現役の選手ということで、これまで折に触れて工藤や桑田、松井などのプロ野球選手関連の本を読んできた自分にとって、その「言葉」に興味があった。


この本は、史上24人目の200勝投手となった翌年の2009年に出版された山本昌初の自著。
独特の投げ方もあり、何となく「オレ流」の激しい人かと思いきや、予想外に謙虚。
お世話になった監督、コーチ(星野仙一落合博満高木守道山田久志他多数)を実名を挙げて素直に尊敬し、今中、近藤ら、同じ中日でライバルとして戦友として汗を流したチームメイト達に対する評価も、尊敬しすぎない程度で心地良い。これまで読んだ工藤、桑田、松井の本は、自分との闘いがメインだったように思うので、ここまで他のプロ野球選手の名前が出てくるのは面白い。
勿論、書いた当時で既に43歳ということで、人間が丸くなったのかもしれない。

  • 1歳の頃、家に配達してもらっていた16本の牛乳瓶のうち、12本を飲んでいたこと。
  • 人生初試合(小学4年生のとき)で0-36で負けたこと。
  • 全く呼ばれると思わないまま大学進学の内定をもらい、ドラフト指名(5位)を受けて急遽プロ入りを決定したこと。
  • 事実上戦力外選手として「島流し」にされたプロ5年目の米国留学。

それぞれのエピソードからは、決して野球エリートではなく、努力があったからこその現在の状況ということがよく分かる。


また、山本昌といえば、すぐに連想するラジコンの話にもページが割かれているのが嬉しい。*2
ラジコンの達人たちから学んだことが投球に活かされているというあたりは、桑田の趣味(ピアノやワイン)に対する取り組み方との差が典型的に出ているかもしれない。趣味を通して自分をコントロールていく術を掴んでいく桑田に対して、山本昌は、かなり「聞く耳」を持っているというか、他の人のやり方に刺激を受ける人のようだ。本の中では武豊棚橋弘至小田和正に、竹下恵子、中条きよし夫妻まで、色々な人とのつきあいについても触れられている。
こういう部分も、普段なら「交友関係が広いことの自慢か!」と毒づいていたかもしれないが、自然体で書かれており、むしろ好感を持てた。


信じられないことだが、自分も来年は40歳。
常に年齢について考え、決断を下してきた山本昌の言葉は、重みを持って感じられた。
そこから学ぶことのできる部分は、やはり当然のごとく「努力を続けること」、そして「思っているほど時間は残っていないと知ること」。

人生は一回きり。だからがんばりどころ。僕たちの世界は5年、10年経てばメンバーもほとんど入れ替わるスピードだ。同世代の人たちに僕がいわせていただくなら、チャレンジでなくともいい。トライしてほしい。試してほしいのだ。
挑戦、チャレンジは、どうも言葉の響きとして重い。退路を断つ。何かを捨てる。そんな語感がある。だけど、トライ、試すなら「ダメでもOK」の響きがある。やってダメなら、次いってみよう!少しでもいいところがあったなら、取り入れてみる。僕はそうしてきたし、間違いもなかったと思っている。P182

桑田は書かないだろう軽い言葉の中に、200勝投手となり、今も現役を続けるプロ野球選手の重みが込められている気がした。

*1:とはいえ、自分はスポーツ観戦自体はあまり得意ではない。サッカーも野球も贔屓の固定チームを持って応援したことがほとんどない…。

*2:それ以外に、クワガタについても熱く語るページがあり、面白かった。