Yondaful Days!

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タイトル通り効率重視のマラソン教本〜川越学『誰でも4時間を切れる!効率的マラソンメソッド』

誰でも4時間を切れる! 効率的マラソンメソッド (Ikeda sports library)

誰でも4時間を切れる! 効率的マラソンメソッド (Ikeda sports library)

至れり尽くせりの内容で、バランスがよく、良い意味で教科書的な本。
この本の肝はプロローグからPart1(第1章)に書いてあり、まとめると以下の通り。

  • 競技ランナー、市民ランナーの双方に広まっている走行距離重視のトレーニングは誤り
  • 40km走の練習は、すぐに次のトレーニングすると疲労が蓄積する、疲労が取れるまで待つとトレーニング回数が減る、またケガの原因になる等、デメリットが多い
  • 超回復の理論やATペースなどの基礎をもとに、トレーニングの目的を知った上で練習すると効率的に速くなることができる
  • そもそも4時間台のゴールを狙うトレーニングと4時間を切るトレーニングは異なる
  • ジョギングペースで長距離を走る練習は、1?6〜7分という4時間台のペースが見に付いてしまうため、サブ4を遠ざける。(LSD=ロング・スロー・ディスタンスは不要)
  • 有酸素運動無酸素運動閾値程度のペースを「ATペース」と呼び、これを速くする必要がある。
  • 「ATペース」のレベルを向上させるためにはATペース付近で長距離を走る練習を行う。具体的には、ペース走でATペースかそれをやや下回るペースを保つか、ビルドアップ走で後半をATペースを越えるなど。

特に、「ATペース」の理論は非常にためになり、これを知ることができただけでも本を読む意味があった。サブ4を狙うランナーにLSDの練習が逆効果であることもとても納得しながら読むことができたし、スピードを上げるには、ATペースの向上を意識しながら練習すればいいことがよくわかった。


岩本流との比較で言うと、骨盤の前傾や足裏全体着地(極端なかかと着地をしない)などのランニングフォームの注意点や、ランニング前のストレッチの仕方、ビルドアップ走を重視する練習方法 などは一致。このあたりは、少なくとも市民ランナーのトレーニング理論としては、既に確立されているものなのかもしれない。
一方で違う部分も当然あり、峠走はメニューに入らないし、クッション性の高い靴も否定していない。
このうち、峠走(舗装道路の坂道を長距離登り、下る練習)については、代わりにクロスカントリー(未舗装を走る練習)や坂道ダッシュがオプション的に挙げられている。しかし、大会一週間前の峠走26kmを奨める岩本流とは異なり、大会前2週間は10?以上は走らず疲労回復に当てることが推奨されている。


また、筋力トレーニングを積極的に奨めているところも異なる。自分は週末に一度しか練習ができないので、週半ばにはもう少し筋トレをやらないといけない。
さらに、マッサージやアイシング、クールダウンなどの疲労回復法や食事についても少し詳しい。この中で気になるのは、血液状態をよくする=ヘモグロビン量を増やすために、鉄が豊富な食品を多く摂取し、鉄の吸収を妨げるタンニンはとらないようにする、としていること。タンニンは紅茶、緑茶、コーヒーに含まれているので、これらではなく麦茶を飲んだ方がいいとある。自分はコーヒーを飲むことが多いが、これまで、タンニンの問題点を全く意識しなかった。やや眉唾な感じもするので、他の本でも調べてみよう。


ウェアの選び方も含めて、本当に痒いところに手が届く内容で、しかも市民ランナー同士の座談会が巻末に収録されているなど、まさに4時間台〜サブ4を狙う市民ランナーのツボをついた本で、ここら辺は編集の人のワザなのかもしれない。池田書店の「スポーツライブラリー」というシリーズ本ということで、他の本もこんな感じなのだろうか。ちょっと見ると、ランニング3軸理論はもちろん、『テニスはキャッチボールでうまくなる!』も惹かれるなあ。
ただ、優等生的なので、不良っぽい岩本流に比べると、やったるでーという気持ちにさせる力は少ないかもしれないので、これからマラソンをはじめようという人が読む本ではない。が、すでにサブ4を目指している市民ランナーとしては、言われたことを淡々と試していって、自分にあった練習法を確立していきたい。

テニスはキャッチボールでうまくなる! (Ikeda sports library)

テニスはキャッチボールでうまくなる! (Ikeda sports library)