Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

新しいタイプのミスリーディング~『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』


備忘録として今年のコナンの感想を。

『ハロウィンの花嫁』総括

今回のコナンは鑑賞直後の満足度が高かった。
ただ、あれ?何に満足したんだっけ?とも思ってしまった。
それは何故かよくよく考えた結果、「それはやっぱり観る前の期待値が低かったからじゃないか」という身もふたもない結論に一度は至ってしまった。
いやいや、何かがそこにはあったはず!ということで、良かったところ、悪かったところをまず書き出してみた。


〇良かったところ

  • 実際の渋谷の地図やビルもたくさん登場させた後で明らかになる、渋谷の地形を利用した大胆な爆破計画(ブラタモリ要素)
  • 劇中に繰り返し出てくる爆発物の液体の種類(色、爆発の方法、危険度)が基本的に同種で、クライマックスまで一貫しているのでストーリーを把握しやすい。クライマックスの爆発の規模が大変なレベルになっているのも順を追っているので理解できる。
  • 首輪爆弾がついた安室さんを閉じ込める地下牢が仰々しくて期待を煽る。携帯ではなく何故か黒電話で対応するのも良い。(よく考えてみると、携帯電話の場合、爆弾の遠隔操作のトリガーに出来てしまう可能性があるためのような気がしてきた)
  • 同期4人で「プラーミャ」を追い詰めた回想シーン、また、やはりプラーミャを追ってヘリコプターに飛び乗るシーンの安室さんのアクションが楽しい。そして安室さん定番の、無茶な場所での格闘(今回はヘリコプター内)。
  • 敵を討つのではなく、復讐の連鎖を断ち切りたいという意図が分かりやすいラスト。
  • 「ナーダ・ウニチトージティ」を率いるエレニカを演じた白石麻衣の、違和感を感じさせない声優力*1


●ダメだったところ

  • 安室さんの首輪爆弾&地下牢がカッコよかったのに全く生かされず、特に何事もなく脱出してしまっているところ。(ヘリコプターで颯爽と登場)
  • 「単独犯行なのに、クライマックスが大掛かり過ぎる(一人でできるわけがない)」という毎度のコナン映画の問題点を完全に放置するどころか、異次元の領域にまで高めてしまった。
  • 爆発を止めようとするコナンのアイデアが観ている方もよくわからないのに、登場人物たち皆が理解し協力するラスト。(サッカーボールが大きくなるパターンにありがち)
  • プラーミャが安室に首輪爆弾をつけたのは、「目撃者」の生き残りがまだいると考えたためと言うことを中途半端に提示した結果、観ている側も「(安室以外の)最後の1人」がこのあと登場するのか?とか、誰かに変装しているのか?とか余計な詮索をしてしまう。(実際には、目撃者4人の生き残りは安室だけ)
  • 「花嫁が爆弾犯だった」それだけのために登場した村中さんが可哀想


サッカーボールの「いっけーーーー」の件だが、サッカーボールを大きくして2種類の爆薬を触れさせない、という意図は分かる。でも相手は液体だし、それが流れるのは渋谷の道路だからどう考えても「すり抜けてしまう」わけで、「それに対しても何か策を考えてるんだよね、コナン君」とずっと思ってしまった。(結局考えてない)
今回、どこまで膨らませれば良しとするかについても分からない(コナン君次第な)ので、いつ時点がゴールなのか分からないまま膨らむサッカーボールを眺め続けてしまった。


また、単独犯行の件について言えば、昨年の『緋色の弾丸』は、この課題をある程度クリアできていて感動*2したので、これと比べるとやはり酷過ぎる。今回の爆破計画に比べれば、単独犯行でダム爆破したりスタジアム爆破したりする方が全然現実的な気がしてくる。


それにしても元警視正の村中さんは、完全にダシにされている感じで可哀想すぎる。


と、並べていくと、やはり去年の『緋色の弾丸』の方が面白かったのでは?と思えてくる。しかし、もう少し考えてみると、映画ではダレてしまう原因になりがちな、事件の背景説明が、松田陣平(+安室含む3名)のキャラクターの魅力で楽しんで観ることが出来たこと。そして松田のキャラと対照的な高木のキャラが引き立つ後半の流れが良かった。つまり、話の展開に全く無駄が無かったというところが大きいと思う。

衝撃のミスリーディング

ところで、今回、本編と関係ないところで、衝撃を受けた場面があった。
目暮警部と同期だった元警視正・村中は、入院中に出会ったクリスティーヌと婚約。2人のハロウィーンの結婚式が、今回の映画の舞台になっている。
初登場時から顔に「犯人」と書いてあるようなクリスティーヌから、友人からの届け物を取ってきて欲しいと依頼される少年探偵団だが、案の定そこには爆弾が。
その後、「あれは、俺たちが取りに行くように仕向けられたんだ」とコナンが推理し、観ている人が全員クリスティーヌの名前を頭に思い浮かべたときに、突如、「村中さんが怪しいのでは?(変装して入れ替わっているのかもしれない)」という話が湧き、全くマークしてなかった村中さんが!!!そっちなのか???とかなり驚いた。
ミスリーディングになった台詞の発言者はおそらくコナンのはずだが、あまりに迷推理過ぎるので、改めて観るときは、本当にコナンなのか確認したい。
本当に、あれは何だったんだろうか。

来年は

灰原の映画ということで、これは楽しみです。
なお、今年少なかった要素としてカーアクションにも期待。

*1:過去のコナン映画を漁っていた中3娘に『11人目のストライカー』って面白いの?と聞かれたので、それは絶対に見た方がいい作品と激推ししました。あそこまでの「棒読み」は他にない。

*2:そもそも『緋色の弾丸』で止めなくてはいけないのは「爆弾」ではなくて「列車」。それが良かったのだと思う