Yondaful Days!

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遠藤保仁は君に語りかける〜『名探偵コナン 11人目のストライカー』感想

4/21に映画『名探偵コナン 11人目のストライカー』を、よう太と二人で見てきた。
4/14公開で、入場者数ランキングのトップを走る評判の映画だったが、観終えた後、心の中に4つ並んだちゃぶ台を4つともひっくり返してしまった。*1


今回のコナン映画の評価が辛くなってしまった理由を少し丁寧に綴りたい。

私の好きなコナン

まず大前提として、名探偵コナンの主なターゲットは小学生であり、そのことを考えて、死傷者はできるだけ減らしたいという個人的な思いがある。勿論、ああいう漫画だからある程度は許容しているが、物語内でも目暮警部が「また君たちか」と揶揄するように、コナンや少年探偵団の殺人事件遭遇率は度を越しており、もはや光彦や元太の精神状態が気になってしまうほど。ちなみに、リアルコナンを目指す小学2年生のよう太は、「調布は事件が少ないね〜」と、日々不満をもらしている。*2


劇場版作品を全て見たわけではないものの、そんな自分にとって一番好きな作品は『ベイカー街の亡霊』、そして、30分一話のテレビシリーズでは『一年B組大作戦』となる。また、必然的に探偵VS怪盗という展開になる、怪盗キッドが登場するシリーズが大好きだ。
しかし、それらはかなりの少数派で、ほとんどが、犠牲者が複数の殺人事件を扱ったものであり、常に、我が子を含め視聴する小学生への影響を気にしながら見ているのだった。


初めて見に行ったコナンの劇場版作品『天空の難破船』(2010)を非常に好意的に受け止めたのは、そういった理由による。
物語の展開にそれほど無理が無く死者が出ない。そして怪盗キッドが活躍する。理想形だ。

コナンのための映画『沈黙の15分

だから、『沈黙の15分』(2011)は前作とのギャップに驚いた。

  • 物語の展開に無理があり過ぎる(単独犯行でトンネル&ダム爆破)
  • 明らかにされないが死傷者多数(高速道路と地下鉄事故、ダム決壊と雪崩)

念の為に書くと、犯人がある程度合理的な行動を取らないと、遡って推理することができないので、「展開に無理があること」は推理物としては破綻していると思う。トンネルやダムが爆発するような事故は、どう考えても集団によるテロ行為だし、もし資金面に問題がなく、爆弾設置も特殊能力で果たしたとしても、それをやるメリットが犯人にあるとは到底思えない。
さらには、通常は数十年以上かける巨大ダム建設とリゾート開発を、あれだけ反対の多かった場所で数年間で終えてしまっているというのもどうか。コナン劇場版のために、慌てて作ったハリボテダムだとしか思えない。無理のあるトリックの“駒”として、8年間意識不明になっていた少年がいるのも辛すぎる。


いやいや、とはいえ、子ども向け映画に、そこまで本気で突っ込むのはどうだろうか。
沈黙の15分』にも素晴らしいところがあったじゃないか。
コナンが、高速道路内をスケボーで逆走するシーンや、雪山をスノーボードで滑走し雪崩を起こしてダム決壊による洪水の影響を食い止めるシーン。あれほどのアクションシーンを演じ切れるのは、日本において江戸川コナンくらいしかいない。また、通常は間一髪で食い止めるはずのトンネルやダムの爆破を容赦なくボカンボカンと行なえるのも、アニメ映画だからこそのメリットだ。
つまり、無理のある展開や不可解な犯人の行動は、普通では見ることのできないド派手なアクションシーンを成立させるための駒に過ぎない。ド派手なアクションのみに目を向ければ、『沈黙の15分』は、これまでのコナン劇場版の中でもトップクラスの映画だったかもしれない。

遠藤のための映画『11人目のストライカー

そこで『11人目のストライカー』。
見終わってから知ったが、昨年と監督が同じだということだからなのか、前半後半に江戸川コナンでしか果たせないド派手なアクションシーンを2つ持ってくる構成は全く同じ。その意味では、少々難があってもこのシーンが面白ければ『沈黙の15分』は超えられる。それぞれのシーンはこんな感じ。

  1. 暗号が示す爆弾の仕掛け場所は、東都スタジアムの電光掲示板だった。スケボーの超絶技で屋根伝いに爆発を止めに行ったコナンだが、時間的に間に合わない。試合を中断させて観客を避難に導いたが、電光掲示板の接続部分が爆発。しかしコナンの御蔭で何とか観客への被害は無かった。
  2. Jリーグの試合が行われている11のスタジアムで爆弾が仕掛けられた。10は解除したが、最後の一つは復旧中の東都スタジアムにあった。次々と爆発し、崩壊して行く東都スタジアム。最後の爆弾を食い止めるには、瓦礫越しにゴールのクロスバー中央にある解除スイッチに衝撃を与える必要がある。コナンは、サッカー教室で遠藤にならったフリーキックで、見事に爆発を回避した。


結論は『沈黙の15分』を超えていない、というか、かなり分かりにくくなっている。
まず、シーン1は状況が分かりにくい。「爆発を起こさせずに危機回避」というかたちにすると分かりやすいのに、前作同様、あえて爆発させてしまうのが原因だが、映画を見ていて、コナンがどうやって被害を減らそうとしているのかがギリギリまで分からなかった。しかも、あまり危機回避のカタルシスがない。
そもそも、こういう場合に観客をフィールド内に避難させるというのも分からない。スペース的な問題もあるし、芝生の管理の問題もある。避難経路を考えても、スタジアム外に避難させるのが自然だろう。


次にシーン2。まず、クロスバーの裏にセットされた爆破解除装置というのが分かりにくい。ボタンを押せば解除されるというのではなく、表から強い衝撃を与えれば解除されるようだが、既に仕組みが分かりにくい。
また、試合が行われていない無人の東都スタジアムに、サッカーゴールが用意されているのも変だし、そこに解除装置を仕掛ける犯人の意図もよく分からない。
いやいや、分かるよ、「ラストシーンでコナンがスーパーシュートで爆発を止める」。それだけのために、みんなが無理しているのは分かるよ。
でも、それだけじゃない。
このシーンは場をさらに盛り上げるために、ある「お膳立て」がある。
コナンのベルトに収納されているサッカーボールは、一度目のシュートで崩れ落ちる瓦礫にぶつかりパンクしてしまう。もう、解除装置にぶつけるボールが無い。そこで、観客席にいた玄太が持っていたボールを少年探偵団がリレーでフィールドにいるコナンに渡して、無事にコナンがミッションを果たす、というもの。
これは酷い。


最初に述べたように、自分は、少年探偵団の精神状態を非常に案じている。まず、博士の車を降りて、今から爆発することが濃厚なスタジアムに向かう3人を見て「どうかしてる」と思った。さらに、事態が悪い方向へ進行し、既にあちこちで爆発が始まって柱や天井が崩れ落ちている状態で、「コナン、なんだかわかんないけど、ボールが必要なら俺のをやるよ」と、爆炎の中でヘラヘラしている元太を見て、「もう、これはダメだ。元太はもう戻ってこない・・・」と思った。まさか、光彦や歩美まで・・・。
だから、灰原からのボールを受け取ったコナンのメガネが光り、「遠藤選手に教えてもらったフリーキックを思い出すんだ!」とボールに向かっていくクライマックスでは、もう、少年探偵団が心配すぎて本編どころではなかった。(コナンは気にしなくていい。雪崩に巻き込まれても死なないのだから。)
したがって、2つのアクションシーンには、あまり集中できず、それだけ見ても『沈黙の15分』は到底超えることができなかった。
なお、2つのアクションシーンの繋ぎの部分は、寝てしまった。(この繋ぎの部分は、『沈黙の15分』では、しっかりミステリ的な要素で接続されていたが、『11人目のストライカー』は、そういうことはあまり気にしていないようだ。ミステリ的要素は限りなくゼロに近い。)*3
あと、タイトルの意味がよくわからなかった。(多分寝ていたせい)*4


いやいや、とはいえ、子ども向け映画に、そこまで本気で突っ込むのはどうだろうか。
11人目のストライカー』にも素晴らしいところがあったじゃないか。
それはガンバ大阪遠藤保仁選手の熱演(怪演?)。*5
今回、Jリーグから何名か本人役で出演しているが、遠藤の扱いは完全に別格。クレヨンしんちゃんや過去のコナン映画を見ても分かるようにゲスト出演の芸能人は、基本的には一言二言の参加だが、遠藤の出演時間は長かった。
基本的にはJリーグ主催の小学生イベントで少年探偵団にサッカーを教える役回りだが、棒読みのまま喋る喋る。あまりに長いので、劇場内の観客はどよめき出し、自分には永遠に感じたほどだ。正直に言って、今回の映画で一番手に汗握るシーンだった。
そして、遠藤はその語りの中で、「不得意な部分があっても、頭を使って考え、それを得意部分で補うことで夢を叶えることができる」という今回の映画のテーマを口にし、ラストシーンでは、コナンの師匠的な扱いを受けてからの、棒読みリフレイン!これほど特定Jリーガーへのリスペクトを全面に押し出す意味はよくわからないが、遠藤ファンには堪らない映画になったはずだ。
ちなみに、キング・カズも重要な役だったが、無難にこなしていた。容疑者役でのゲスト出演だった桐谷美玲は、良くも悪くも普通。*6あまりに遠藤が目立ちすぎて影に隠れてしまった。


ということで、遠藤保仁選手ファンは見た方がいい映画。それ以外の人が見ると、何かよくわからないままボカンボカンが連続して「何これ・・・?」と思うか、「・・・でもコナンがかっこいいから全部OK」と思うかの両極端に分かれるだろうと思う。
なお、見ている途中で、実は遠藤が犯人だった、という驚愕のラストが頭に浮かんでしまったせいで、犯人が判明してからはかなり退屈だったことも付け加えておく。



今日の日記のタイトルはサンボマスターのアルバムタイトルからつけています。映画主題歌は、いきものがかりで、この曲単体では非常に良かったですが、映画には合っていなかった。たとえ、いきものがかりが作った歌だったとしても、遠藤保仁が歌っていれば上手く締まったのに…。遠藤のための映画という意味でも、「エンド」ロールという意味でも…。

(追記)選手たちによる声優体験への感想コメント

公開前の情報で、出演しているサッカー選手のコメントがいくつか出ていましたので、まとめました。


まずはカズ(三浦知良)。ここでも書かれているように、カズは(もの凄く上手いというわけではありませんが)リラックスして演技てきている様子が伝わってきました。さすがキング・カズ

出演シーンはコナンとのやりとりがメインとなるため、コナン役の声優・高山みなみとともにアフレコが行われた。三浦選手は声量も豊富で、高山も「さすがキング!」と絶賛。音響監督から受けたアドバイスをすぐに反映する柔軟さにも、スタッフを驚かせた。作品のキーポイントとなる長台詞にも挑戦し、コナンとパス回しをするシーンでは、アフレコで難しいとされる「ボールを蹴る」「走る」などの動きのある場面での声の演技もばっちり。予定されていた収録時間よりも30分程早く、アフレコは終了した。 収録を終えて三浦選手は「自分自身に点数をつけるなら、無事終わったので100点満点をつけたいです。自分も普段から使う『ゴラッソ!』(ポルトガル語で、『素晴らしいゴール!』という意味)というセリフもあったので自分らしさも出ているのではないかなと思います」と満足げに話し、「この映画をきっかけにJリーグファンも増えてくれると嬉しい」と願った。


次に、Jリーグを代表?して北澤剛による評価。ここでは何故か、今野だけが槍玉にあげられています。確かに今野が一番ひどかったかも。あと、カズについては絶賛。先輩を立てているのかな。

現役Jリーガーたちの声優ぶりについては「遠藤くんのメッセージはキーになりますね。子供たちの記憶に残ると思う。今野くんは若干“読んでる”気味だったかな」と辛口の評価も。“キング”こと三浦知良横浜FC)も声優として参加しているが、北澤さんが「カズさんは自分であの役を要求したんでしょうかね?」と勘繰るほど重要な役割を果たしている。実際にアフレコで共演した高山さんは「一緒にやってて本当に楽しかったです。本当にカズさんとボールを蹴ってる気持ちになりました」と笑顔で明かした。


槍玉にあがった今野泰幸。カズの100点に対して今野は85点。ショックを受けたか・・・。

今野は「緊張でフラフラになりながらやりました。自分の出来に点数をつけるなら85点。自分の声があまりかっこ良くなくてショックでした。面白い映画になっているので、ぜひ映画館で見てください」とコメント。


最後に最重要人物として遠藤保仁自らの評価。やはりつきっきりの指導があったんですね。もしかして匙を投げられてしまったとか…。

大のコナン好きという遠藤は「緊張もせず、楽しんでできました。(コナン役の)高山みなみさんがつきっきりで指導してくださったので分かりやすかったです。重要なセリフが多いと監督にも言われているので、劇場で見るのを楽しみにしています」と笑顔を見せた。

参考(その後のコナン映画)

⇒2013年のコナン映画は、脚本が変わったこともあり、11人目のストライカーのようなボカンボカンという爆発要素の少ない、全く別次元の話となりました。

*1:ドラえもん映画では4つしかないのに5つひっくり返した。沈黙の15分では4つひっくり返して2つ戻した。

*2:そんなよう太の今年の映画評価はコチラ→「最初から最後まで全然わからなかったよ!あの映画、何だよ!小学生じゃわからないよ!」

*3:ミステリ部分を褒めている感想も目にしたから、自分が完全に寝てたのかもしれない。でも、あの容疑者の絞り込み方はあり得ないと思う。また、警察でコナンたちの背後に映るホワイトボードの絵にミスがあったように思う。(まだ容疑者の絞りこまれていないタイミングで容疑者相関図が描かれていた。)同様のことを感じた方はいませんでしたか?

*4:完全に寝ていました。他の方の感想等を読んで「10人のストライカーが爆弾解除のために試合中にクロスバーを狙っていた」というのは理解しましたが、ここら辺の展開は無理あり過ぎませんか?普通、試合止めるよね。

*5:この文章には、遠藤選手の演技に文句をつけようという意図は全くありません。あの棒読みも含めて、何となく遠藤選手の人の良さそうな感じが出ていて、とても良かったと思います。

*6:『マジックツリーハウス』の北川景子を見てしまっているので、芸能人があてる声には、ちょっとやそっと上手いくらいじゃ驚かない。