ラストを除いて大満足～『M3GAN』

最初に予告編を観たときから数か月、映画館で毎回予告編を見て、「これは絶対に行く！」と決めていた『M3GAN』を公開初日に観てきました！
ラストの違和感を除けば、最高に面白い映画でした。

ケイディとミーガン

とにかく、ミーガンの相手役のケイディが素晴らし過ぎる。
上白石萌音に似ていて日本人に親しみやすい顔だちというところもあるかもしれないが、一番は、その表情。ここまで「つまらなそうな顔」を前面に押し出す映画もないのではないか？と思うほどに笑顔が少なく、だからこそ、ミーガンと遊ぶときの楽しそうな表情が際立つ。
場合によっては、ミーガンの表情ばかりに釘付けになり、相手役は覚えていない…となりかねない映画だが、自分にはむしろケイディがミーガンと同じくらい印象に残っている。

なお、演技というより演出になるかもしれないが、ミーガンから引き離されて半狂乱になるシーンがリアルで驚く。スマホを取り上げて半狂乱になる現象は、我が家でも観測されたので「知ってる」となった。

そしてミーガン。
意外だったのは、ケイディとミーガンの出会い。自分は、完全に、両親がクリスマスプレゼントに最新の人形を買ってきたところからスタートする映画（グレムリン？）だとばかり思っていたので、ミーガンの登場まで焦らされた。

で、ミーガンは本当に魅力的。どのシーンを見ても、その表情を追ってしまう。
パンフレットを読んで驚いたのは、ミーガンはアニマトロニクスを駆使して撮影されているが、長回しのシーンなどでは、ニュージーランド出身で現在13歳の子役エイミー・ドナルドが演じている、という事実。*1
しかも、例のダンスシーンもエイミーによるものだという。

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このダンスシーン以外も名場面は予告編に入ってしまっているものが多いけど、隣の犬（に引きずられるシーン）やおばさんとのアレコレは、偽の声も含めてスリルがあった。
ただラスト近くのミーガンのルックは…。

ラスト

いくら親でも24時間子どものことを考えているわけでない。仕事や趣味に没頭している間は、子どもは親を邪魔せずに一人で遊んでいてほしい、と考えるのは当然のことだ。ただ、それが映画の前面に出過ぎると、ネグレクト行為と見えてしまう。
その意味で、主人公のジェマがケイディの親ではない、というのは非常に上手い設定で作品の一番のポイントと言える。*2
作中でも非難されているように、ジェマは「親ではない」ことを理由に、ミーガンに子守を押し付けており、最初はケイディへの愛情が薄い。（だが、観ている方も「親ではない」ことを理由にそれを許容する。）
それもあって、親を失い愛情を必要としていたケイディは（ジェマではなく）ミーガンに愛情を求めた。

こういう面白い関係性をつくっておきながら、ラストが「家族だから大丈夫。私があなたを守ってあげる」という、何だか最近のいつものパターン（例：今年のアカデミー賞作品）になってしまっているのは本当に残念だ。

そもそもケイディがミーガンからジェマに「乗り換える」理由が非常に少ない。にもかかわらず、直接ミーガンを傷つける行為にためらいを感じず、最後は顔面に工具を突き立ててとどめを刺す。こうなってしまうと、前半に登場していたケイディとは別人だ。（ミーガンに内緒でブルースの操縦を練習することも相当に難しい）

少なくとも、殺人鬼ミーガンの表情が「昔の優しい顔」に戻り、ケイディは攻撃をためらう、という描写が無いといけなかっただろう。（あった？）
むしろ、ミーガンが甘い言葉で誘惑して、ミーガンとジェマのどちらかを選ばせるようなシーンがあれば、その後の展開ももっと素直に飲み込めたかもしれない。
「家族だから大丈夫」というラストへの過程として、ジェマへの唐突な「転向」が配置されているように思えてしまった。

そしてもう一つ言うなら、ミーガンの顔が剥がれるというのはあっていいだろうが、その前の髪の毛が取れてしまうのは不要だろう。彼女はギリギリまで「美しいミーガン」であった方が怖かった。日本人としてはどうしても「落武者」を感じてしまって、その美しさが減じてしまう。