- 作者: 枝川公一
- 出版社/メーカー: ネット武蔵野
- 発売日: 2004/06/30
- メディア: 大型本
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しかし、自分が日本という先進国の、しかも都会に生まれ、生活するからには、インディアン目線で世界を語ることはできないわけで、むしろ、やや偏りがあるくらいが素直だし、上から目線の方がアトラクションとして入り込み易い。(ディズニーのアトラクションは、自然の大切さや命の尊さ、異文化尊重などという難しいものとは無縁なところが楽しいのだと思う)
この写真集も、その意味では、都会からの目線を貫いた本である。いや、写真集ではあるが、「都会からの目線」という要素がちりばめられた、文章中心の、かなりの癖のある本なのだ。例えばこのような記述もある。
都会に長く暮らしていると、街を離れるにつれて心穏やかではいられなくなる。知らないところへ連れていかれるみたいな不安に駆られる。
東京駅からJR中央線「青梅特快」に乗り、立川を過ぎて青梅までの間は、それでも沿線に家が建て込んでいる。気がかりなことはない。ところが、青梅を過ぎてしばらくすると、どうも辺りの景色が怪しい。駅を過ぎることに、山の中へ運ばれていく気がする。停車しても無人駅だったりして、辺鄙な土地に放り出された気持ちになる。
このように、下町生まれで「多摩は遠い」と思い続けていた作者が、奥多摩通いをして、都会と多摩を行き来しながら作った内容。具体的に取り上げられるのは
といったエリアで、一番東でも多摩川の羽村取水堰(玉川上水の上流端)ということになる。
これらの観光地と、多摩に暮らす人たちの日常風景を、冒頭のジャングルクルーズほどではないが、「都会から」の視点にこだわりながら紹介している。このような多摩の捉え方は、本文中にも出てくるように、田山花袋の紀行文集『東京の近郊』を意識している。描きたかったのは田山花袋の書く「都会からのに向う心の楽しさ」であり、故に本文でも、多摩へ向かう電車やバスなどの交通手段についても文章を割いている。本書のタイトルも『東京の近郊 一日の行楽』という文庫本のタイトルからそのまま持ってきているようだ。
- 作者: 田山花袋
- 出版社/メーカー: 文元社
- 発売日: 2004/03/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 田山花袋,歴史街歩き同好会
- 出版社/メーカー: 辰巳出版
- 発売日: 2011/10/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分は、この本を読んで、確実に、ロープウェイで御岳山に登りたいと思ったし、田山花袋も入った日原鍾乳洞も、廃線となった小河内線も見てみたいと思った。実際に現地に行ってみたいと思わせる、良い文章だったし、写真だった。短い時間で読めるにしては得られるものが大きかった。良い本だと思う。