Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

何度も読み返したい地球科学本〜藤岡換太郎『海はどうしてできたのか』

海はどうしてできたのか (ブルーバックス)

海はどうしてできたのか (ブルーバックス)

これもまたビブリオバトルで紹介のあった本。
ブルーバックスのシリーズは親しみを持っていたが、考えてみると、それをよく読んでいたのは中高生の頃まで遡る。特に社会人になってからはほとんど読まないシリーズとなっていた。最近では、サイエンス・アイ新書のような直接のライバルレーベルもあるが、こういった入門書を定期的に読んで、少しでも科学知識を身につけるよう、進んで読んで行こう。
...ということで久しぶりに読んだブルーバックス

宇宙で唯一知られる「液体の水」をもつ海は、さながら「地獄絵図」の原始地球でいくつもの「幸運」の末に産声をあげた。しかし、それはわたしたちにとっては、猛毒物質に満ちたおそるべき海だった。原始海洋が想像を絶する数々の大事件を経て「母なる海」へと変容するまでの過程から46億年の地球進化史を読み解き、将来、海が消えるシナリオにまで迫る。
Amazonあらすじ)

本書の前半部(第1部、第2部)で、地球史46億年を、地球のはじまりである「1月1日」から、現在の「12月31日」までの1年間の「地球カレンダー」で表す。地球カレンダーで1秒は146年だから、今から1秒前は江戸時代末期になるというクラクラするような時間スケールだ。
後半部(第3部、第4部)では、海についてさらに掘り下げて説明することになるが、「地球カレンダー」の説明が非常にわかりやすいためか、後半部で行われるやや突っ込んだ話も興味を失わず読むことができた。
著者は、しんかい6500に51回も乗船した方で、ブラックスモーカーなどの関連する話も多数登場する。また、気象関連の内容や、スノーボールアースなどの話もあり、これまでに読んだことのある地球科学に関連する本の集大成として読むこともできた。今後、他の本を読む際にも参考書として、たびたび参照したくなる本だ。


以下、気になったところをピックアップ。

  • 5月31日は酸素が発生した日。シアノバクテリアの大繁殖による酸素の大量発生は、当時の生物(嫌気性生物)にとって深刻な「海の環境破壊」だった。このとき、ある種の嫌気性生物が好気性生物を自分の体の中に取り入れて共生関係をつくりあげるようになる。この取り込まれた好気性生物こそがミトコンドリアの起源となる。(p80)
  • 8月3日は超大陸(ヌーナ)が出現した日。超大陸は発生→分裂→発生をおよそ3億年の周期で繰り返す。最も新しい超大陸は、およそ2億5000万年前にできた「パンゲア」。そして次の超大陸は、日本付近に今から5000万年後にできる「アメイジア」(名前は決定済み!)。(p88)
  • パンゲアの形成された1日後にあたる12月11日(ペルム紀末)には種の96%が絶滅。これは何度か起きた生物の大量絶滅の中でも桁違いに規模の大きいもの。原因としては、(1)パンゲアの形成によって大陸と大陸の間の海がなくなったため(2)パンゲアの形成によって活発になったスーパープルーム(湧きあがる高熱のマントル)が火山活動を引き起こし地球活動を激変。(火山灰による寒冷化)(3)スーパープルームの活動による地球の温暖化(寒冷化とは対極の説)などが挙げられる。(p106)
  • 12月26日には直径10?にもなる巨大な隕石がメキシコ・ユカタン半島に衝突。衝突した隕石は地球の地表近くには全く存在しない物質(イリジウム、オオスミウム)をまき散らしており、隕石衝突の痕跡を各地に残している。(p113)
  • 12月27日にインド亜大陸ユーラシア大陸に衝突しヒマラヤ山脈が誕生する。南北の緯度35度付近は中緯度高圧帯と言われ乾燥し、アフリカや南米では砂漠が発達しているが、ヒマラヤ周辺からアジアにかけては、ヒマラヤによるモンスーンが湿潤な気候を創り出している。(p116)
  • 12月31日午後11時37分になってやっとホモサピエンスが登場(p124)
  • 地球史的に見ると、現在、海面の高さは下がってきており、過去の6億年の間で海面が最も低いレベルに下がった3度目にあたる。(1度目は5億5千万年前、2度目は2億5千万年前)(p152)
  • 火山活動によって宇宙空間にどんどん熱が放出されていく中で、地球を温めていたのは、二酸化炭素による温室効果以外に、地球内部の放射性元素の崩壊熱がある。しかし、この熱源がどんどん減っていけば地球は冷えて行くことになる。(例.ウランの半減期は45億年なので、現在、ウランは地球誕生当初の半分の量になっている)マントルが冷えると地下のマントルの中に水がどんどん閉じ込められ、やがては全ての海水が地下深くに没してしまう。(p187)火星は、「水がなくなった地球」に当たる。(p191)


ということで、地球科学と生命誕生という、地球の歴史とこれからについてまとめて学べるお得な本でした。
同じ著者によるコチラの本にも挑戦したいです。

山はどうしてできるのか―ダイナミックな地球科学入門 (ブルーバックス)

山はどうしてできるのか―ダイナミックな地球科学入門 (ブルーバックス)

参考(過去日記)

⇒これは本当に面白い本でした。科学の世界で「仮説」がどのようにして検証されていくのか、という昨今の小保方晴子さんのSTAP細胞騒動のテーマとも関連する本です。この本があったから『海はどうしてできたのか』も興味を持続して読めたのかもしれません。

⇒気象関係の本こそ、ブルーバックスの本を読んでいたことを思い出しましたが、感想を書いていなかったので、こちらの小説を。気象の理解については、専門知識だけでなく「イメージ」が必要とされますが、その部分(イメージや比喩)が巧みな本です。

⇒しんかい6500は、やっぱり偉大ですね。深海を調べることが生命の進化や地球の歴史を探ることに繋がるというのは、すぐにはピンときませんでしたが、今回改めて勉強してみて、その意義が分かってきました。