Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

深海キター!〜山本省三『すごいぞ!「しんかい6500」』

すごいぞ!「しんかい6500」―地球の中の宇宙、深海を探る

すごいぞ!「しんかい6500」―地球の中の宇宙、深海を探る

仮面ライダー新シリーズは、深海がテーマ。
深海を目指す高校生たちが、「深海キター!」を合言葉に学園青春ドラマを繰り広げる…

そんな仮面ライダーは、嫌だ…笑


地球にもまだ未知の部分がたくさんある。だから深海探査は、宇宙探査と同じくロマン溢れる世界なのだ!
…と、何となくは分かっていても、深海のイメージは、深海魚と、しんかい6500くらいしかない。もしかしたら、ギネスブックに載るためだけに潜る深さを競っているのでは?と思ったりしてしまうほど、深海探査のイメージは湧かない。だから、まだ仮面ライダーには早いのだ…。
しかし、しんかい6500は今年初めに世界一周航海(あとでも触れるがQUELLE2013)に旅立ったばかりだし、「ダイオウイカが深海に生息する様子を世界で初めて映像で撮影することに成功」というニュースが最近も話題になり、週末にはテレビ放映されるというタイミング。(ところで、この番組で使われた透明ドーム型で340度の視界をもつ最新鋭の潜水艇が素敵な未来メカで素晴らしい。どこまで深く潜れるのか…)

幻の深海巨大生物|NHK海 Ocean and Planet

  • 伝説の怪物「ダイオウイカ」。古来より船を沈めると恐れられてきた最大18mに及ぶ世界最大のイカだ。しかし、深海で生きた姿を見た者は誰もいない。地球の海・最後のミステリーといわれる幻の超巨大イカの撮影に、NHK国立科学博物館などの国際チームが挑戦。世界遺産小笠原諸島を舞台に、科学者やエンジニアなど11カ国から50人のスタッフが結集した。


そう、深海!キテる。
そうに違いない!
これに乗り遅れないように読んだのが、くもん出版から出ている児童向けのこの本『すごいぞ!しんかい6500」。
まず、とにかく友永たろさんの挿絵。文字フォントも含めて全体の装丁は、この絵柄に合わせて作ったのかと思うが、本文がアラビア文字で書かれていたとしても買いたいと思わせる凄さ。この人の描く魚の絵はよく見たことがあったが、機械の絵も素晴らしい質感なので、同じJAMSTEC関連で「ちきゅう」本とか出してほしい。本文はアラビア文字でも可(笑)下は、しんかい6500の兄貴分である「しんかい2000」。


さて、この本では、しんかい2000の実績を踏まえ、長い歴史を持ちながら現役活躍中の「しんかい6500」を紹介し、深海の魅力を伝える。
JAMSTECのHPで紹介されているしんかい6500のミッションは大きく以下の4つに分かれている。

  1. 地球内部の動きをとらえる
    • 地球内部の動きに大きく関わる現象を調べ、地球のなりたちを解明する。
  2. 生物の進化を解明する
    • 深海の生態を調べることで、生物の起原や進化の過程を解明する。
  3. 深海生物の利用と保全
    • 深海生物資源の持続的な利用や、多様な生理機能を有する深海生物の遺伝子資源について研究する。
  4. 熱・物質循環を解明する
    • 海底の熱水活動により放出される熱や物質による影響の研究を通じて地球の環境変遷を理解する。

地球内部の動きについて、本の中では、これまで、深海探査が地球のプレート活動の理解に非常に役立ってきたことや、しんかい6500が目指した6500mという深さには、1966年の日本海中部地震を受けて日本海溝の6200〜6300mくらいの深さにある震源地を調査するという目的があったことが挙げられている。
なお、最近では、東北地方太平洋沖地震の震源海域の調査で、巨大な亀裂を発見もしている。


深海生物については、その魅力が分かりやすい。光の届かない深海で、熱水のふきだし部から硫化水素をエネルギーに変える微生物を宿すシロウリガイ。硫化鉄のうろこを持ったSF巻貝スケーリーフットは名前がカッコいい(笑)
しんかい6500の世界一周航海「QUELLE2013(クヴェレ)」のHPでは、ブラジル沖航海の目的について「深海生物パラダイス」という言葉を何度も使って説明する藤倉克則上席研究員の決意表明が、深海という暗い世界のことなのに、ものすごく楽しい気持ちにさせてくれる。

ブラジル沖の天然ガス・油田域を世界で初めて探検し、深海生物パラダイスを見つけます。ブラジル沖の広大な天然ガス・油田域には、さまざまな化学物質がわき出しているでしょう。そこには、極限環境に適応した生物が人知れずパラダイスを作っているはずです。


さて、そんな、しんかい6500。この本には、潜水船の操縦士になるにはどうすればいいか、という話も、宇宙飛行士になぞらえて書かれている。結論としては、操縦士になるのは大変だが、訓練も特殊な免許も不要。研究者としてなら乗りやすい。とのこと。実際、QUELLE2013(クヴェレ)のカリブ海航海部分の紹介を見ると、かなり軽い感じで、しんかい6500に乗れそうな感じです(笑)

そんな時、ワタクシはとある国際学会でアメリカ研究チーム代表のクリス・ジャーマンが熱水発見の発表しているのを聞いて、「あら。調査するROVがないのなら、しんかい6500を使えばいいじゃない?」とマリー・アントワネット風に半分冗談で尋ねてみました。クリスは「そいつぁー、グレイトだぜ。ケン。ぜひしんかい6500で世界最深熱水の調査をしようず」と超ノリ気でした。
それから、「しんかい6500をカリブ海に連れてって」作戦が展開されることになったのですが…

調べてみると、このものすごく軽い文章を書いたのは、「ナショナルジオグラフィック 日本版 」で連載もしていたJAMSTECの研究者、高井研さん。著書も面白そうなのでチェックしたい。

生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る (幻冬舎新書)

生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る (幻冬舎新書)


なお、有人だけでなく、無人探査機として「かいこう7000II」や「うらしま」の紹介、また、地球深部探査船「ちきゅう」についても言及があった。ここらへんの研究については、もっと知りたい。
色々なことに興味が湧く「とっかかりの本」としては最適だった。
繰り返すが、今年は深海がキテるはずなので、関連本をもっと読んでいきたいと思います!

補足(dig)

ちょうど、TBSラジオのニュース探求ラジオDigの1/11の特集が「深海生物」でした。

『未だ知られざる深海生物の生態 その研究の最前線に迫る!』スタジオゲストは、深海調査船『しんかい6500』を所有する海洋研究開発機構上席研究員の藤倉 克則(ふじくら・かつのり)さん!

ラジオでも藤倉さんは「パラダイス」を連発されてました。しんかい2000に初乗船時の話も面白かったし、体内に微生物を共生させるシロウリガイなどの深海生物を、ミトコンドリアを取り込んだ真核生物の成り立ちに重ねて熱っぽく語っていたのが印象的でした。
また、4年間絶食している鳥羽水族館ダイオウグソクムシの話題も良かったです。やはり文字で読むのと違った良さが、ラジオにはありますね。
ポッドキャストはこちら。> http://podcast.tbsradio.jp/dig/files/fujiki20130111.mp3

藤倉さんの著作はこちら↓…これは、見てみたい!!

潜水調査船が観た深海生物―深海生物研究の現在

潜水調査船が観た深海生物―深海生物研究の現在

参考(過去日記)

アピア動画の水中探査は、潜水船じゃなくて潜水艦で、下には潜らない分だけ長い間の調査が可能だ。しかし、しんかい6500は3人乗りでトイレもない。2時間半で下にもぐって、海底に4時間いて、2時間半かけて海上に戻るという流れになる。つまり、世界一周航海は、潜水艦みたいなイメージではなくて、あくまで世界一周するのは母船の「よこすか」であって、「しんかい6500」はピンポイントで潜るかたちになる。ちょっとQUELLE2013には、『南極点のピアピア動画』的な展開は望めないかも(笑)

参考(ほしいなあ…)

Exploring.Lab. 1/48 有人潜水調査船 しんかい6500 (推進器改造型)

Exploring.Lab. 1/48 有人潜水調査船 しんかい6500 (推進器改造型)

Exploring Lab. 1/700 地球深部探査船 「ちきゅう」

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