Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

その方向なのか…?〜宇仁田ゆみ『うさぎドロップ(8)』

うさぎドロップ 8 (Feelコミックス)

うさぎドロップ 8 (Feelコミックス)

「強く深く心に響いたのは 初めて会ったお母さんより ダイキチのこと」実母との対面を果たしたりん。りんは母親の第二子出産により、ダイキチとの繋がりについて考え始めて――。卒業後の進路、そして恋…。りんにアプローチをしてくる男子も現れて!?(Amazonあらすじ)

やはり、その方向に突き進んでしまうのか…。
突如湧き上がった思いについての、りん自身の困惑がしっかり描けてるから、物語の中での連続性はしっかりしているけど、大吉にとっては寝耳に水だろう。
7巻を読んでから、5〜6巻を読み直して確認したが、りん本人にすら、その萌芽は見つけられない。ましてや、大吉がりんをどう思っているか、については8巻に至るまでほとんど一貫している。5巻で、居間で寝てしまったりんをベッドに運ぶシーンで大吉自らコウキに説明しているように、「父親として」りんを大事に思っている。これは変わらない。りんにとっては負け戦だ。
7巻で湧いた思いは一時の気の迷いだったと矛を収めた方が良かった。そういう勘違いは誰にでもあるから。
それなのに…。


正子は、りんの「妹」を出産。りんが抱く赤ちゃんがあまり可愛くないところは、この漫画の、過度に人生を盛らない誠実さを感じる。
一方で、正子が歌う子守唄で初めて母娘のつながりを感じるのは感動的な場面。
こういった母娘の繋がりを最終巻のクライマックスに持ってくれば、それはそれで素直な展開の物語だったはず…。


さて、この巻では、りんが仕事について考え出す。正子がりんのためにずっと貯めていたお金。りんは、その通帳を見せてもらい、働いて稼ぐこと、誰かのために働くということに関心が向かったのだろう。
学校生活、受験、就職、恋愛、妊娠、出産、子育てと、この漫画は人生の中で多くの人が辿るイベントについて、真っ当なことを教えてくれる。(妊娠、出産、育児は、今回のりんのように、自分が生まれてからちゃんと育つまでの環境を意味していると考えれば、ほぼすべての人が経験しているイベント)
そんな風に、いわば教育的な漫画の中にあって、優等生的だったりんと、自らが決めた「我が道」を行く正子は対照的だった。
それが、7巻になって、りんと正子の立ち位置が(逆転とまでは言わないが)揺らぎつつある。三親等だとかを気にするりんは、もちろん恋に狂っているわけでなく、理性を保ち冷静だ。
しかし最終話では、その思いをコウキに知られてしまうほどブレーキが効かなくなっているのも確か。突然10年経ってしまった5巻、二谷さんのおつきあい報告がある6巻、正子の妊娠が判明した7巻、そして、りん→大吉の思いが確定的となった8巻と、第2部には驚かされてばかりだったので、まだ予断を許さないけれど、何かムズムズが止まらない中、9巻の明るい、納得の行く展開に期待したい。

(ほぼ8巻読後、9巻を読む前に書き留めた感想そのまま)