Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「これは酷い」と言わせて下さい〜映画『マジック・ツリーハウス』

ぼくたちの、秘密の冒険のはじまり!

仲良し兄弟、ジャックとアニー。
ある日、ふたりは森の中の大きなカシの木のうえに、ふしぎな小屋を見つけます。中に入ってみると、そこは誰のものかわからない、沢山の素敵な本が並んでいました。ジャックが恐竜図鑑を開いて思わず「わぁ、ここに行ってみたな!」とつぶやくと、たちまち小屋が光に包まれて、ぐるぐると回りはじめました。
目をあけると、窓のそとには見たこともない恐竜たちが住む王国が。そう、そこは、時空をこえた本の世界へとふたりを連れて行ってくれる、“マジック・ツリーハウス(魔法の木の家)”だったのです。

飛び込んだ本の世界で、ジャックとアニーはうつくしい魔法使いモーガンと出会い、本の世界に隠された4つの魔法のメダルを集めて欲しいと頼まれます。
ふたりは、モーガンにかけられた不思議な魔法のなぞを解くために、沢山の試練と出会いが待っている本の世界の冒険へと飛び込むのでした―!


子ども向け映画としては、恒例になっているドラえもん名探偵コナン以外では初めて見に行った。(『ヒックとドラゴン』は一般向けと考える)
この映画を観たのは、ちょうど、よう太が図書館で借りてきたマジックツリーハウスの一巻を読み終えたばかりだったし、よう太と同い年のライバル(笑)芦田愛菜ちゃんが声優として活躍しているから。
公開二日目だけあって、劇場は満員に近く、観終わった感想としても、絵は綺麗、音楽も壮大、声優は初挑戦の北川景子が超ハマり役。愛菜ちゃんもさすがの演技だったように思う。よう太、夏ちゃんの二人も楽しく最後まで見ることができたようだ。
しかし、個人的には肝心のストーリーがダメ過ぎる。高いお金を払って見に行ったので「よかった」と書きたいし、批判するより称賛した方が楽だし気持ちがいい・・・。でもダメだった。以下、苦しみつつも批判的感想。

原作の長所が生かされていない

何が面白くて世界じゅうでベストセラーになっているのか不思議に思ったので原作を読んでみた。
2つの話が含まれる原作1巻を読んでみると、このシリーズのパターンは以下の通り。

  • 本の中でしか体験できないはずの異世界を、主人公兄妹二人が実際に訪れる。
  • 訪れた本の世界で、持ち運ぶ本(恐竜の世界なら恐竜図鑑)のガイドを参考に、記述内容が事実と合っているかどうかを検証する。
  • 学んだことは、逐次メモを取る。

つまり、本を読みながら学ぶということを、バーチャルな体験に発展させた部分がキモで、遠回しに読書の楽しさを伝えているのだと思う。つまり、昔の人の生活や、未知の生き物を想像しながら本を読むと言うことは、ジャックやアニーが冒険をしているのと同じことを楽しめるんだ!だから学ぶことは大切だし、面白いことなんだ!と。今回、ジャックのガイドは少な目で、直接役立つ部分が少なく、またノートを取るシーンがほとんど無い。そのため、読書の楽しさ、学ぶ面白さがほとんど伝わらない。ポンペイのエピソードが、若干それらの要素を含む程度だ。

マジック・ツリーハウス 第1巻恐竜の谷の大冒険 (マジック・ツリーハウス 1)

マジック・ツリーハウス 第1巻恐竜の谷の大冒険 (マジック・ツリーハウス 1)

マジック・ツリーハウス 第7巻ポンペイ最後の日 (マジック・ツリーハウス 7)

マジック・ツリーハウス 第7巻ポンペイ最後の日 (マジック・ツリーハウス 7)



退屈なメダル探し

原作での「学ぶ楽しさ」が、映画で何に置き換えられているかといえば「メダル探し」だ。それ自体はいいとしても、かなり曖昧なヒントにもかかわらず、すぐにメダルが見つかってしまうので、宝探しの楽しさがほとんどない。場所が分かったあとも、どうやって取ればいいかで工夫をするわけではなく、高いところにあるメダルなら壁を登ったりして普通に取ってしまう。
中世のお城のエピソードでは、一か所だけ扉を開けるために暗号が必要なシーンがあるが、頭で考えるのではなく、本に書いてあることをなぞって開ける。どこまでマニュアル人間なんだ!ジャック。
4つの世界を行き来するので駆け足になるのは分かるが、もっと勿体つけてメダルを登場させ、工夫を凝らした末に取らせるべき。何故、暗号や謎解き要素がほとんど無いのか理解に苦しむ。

出会いと別れがない

場所と時間の制限を超えて自分の行きたいところに行って冒険し、元の世界に無事帰る物語は、毎年ドラえもんで見ている。勿論、クレヨンしんちゃんでも「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」(のちに実写映画「BALLAD 名もなき恋のうた」としてリメイク)という名作がある。だから、見る側が、これらの映画と比較してしまうのは仕方のないことだと、まず言い訳しておく。
逆に言えば、製作側としては、当然参考にしておくべき映画。マジック・ツリーハウス製作委員会は、そういった映画の何が面白いのかを全く分かっていない。異世界に行って冒険することよりも、異世界の登場人物たちとの交流が面白く、だから最後にジンとくるのだ。4つの世界を描いた分、感動を誘うような出会いと別れが無かった。(というか名前のあるキャラクタ自体がほとんど登場しない)製作委員会は、それよりもメダル探しが面白いと思っているのだろうか?

オチが酷すぎる

4つのメダルを集めて奇跡を起こし、やっとのことで(魔法を奪われ、ネズミにされた)モーガンを救ったにもかかわらず、魔法世界に戻ったモーガンは、仕返しに、別の魔法使いを同じ目に合わせて人間世界に落とす。つまり、魔法使い同士の悪ふざけのせいで、ジャックとアニーは、またもや命をかけた冒険の旅に出なくてはならない!というのが、この映画のオチ。
4つのメダルでモーガンを救うエピソードは原作にもあるようだが、同じような展開なのだろうか。あまりに人間をバカにし過ぎている。
本来は放置しておくべきこういった出来事に対して、ラストシーンで、喜び勇んでマジックツリーハウスに向かうジャックとアニーは、これまたバカ過ぎて不憫な気持ちになる。無鉄砲は勇気とは異なることを、むしろ教えるべきなのに、この映画は、とにかく前に進めば道は開ける!矢でも鉄砲でも持って来い!という内容。何これ。命の大切さすら教えていない。(実際、海賊編では、数十メートルの高さから、ジャックがアニーを助けるために飛び降りて無傷)
サブストーリーでは、新しいことに憶病なジャックが、冒険を通して、学校生活でも、前より積極的になるという成長も描いているのだが、自分は慎重なジャックの方が好きだった。ポンペイの冒険のあと「ネズミを助けるために、命を懸けてメダルを集めるのは馬鹿馬鹿しい」と考えたジャックの判断は絶対に正しい。


ということで、絵は好きなので、絵だけ見ると苛々した気持ちにはならず和むのだが、映画を思いだすとあまり良い気持ちにはなれない。
繰り返すが、北川景子は本当によかった。上手ということ以上に声質とジャックの性格がぴったりだった。