Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

読みやすい睡眠お悩み相談〜遠藤拓郎・江川達也『睡眠はコントロールできる』

睡眠はコントロールできる (メディアファクトリー新書)

睡眠はコントロールできる (メディアファクトリー新書)

何かの記事を読んでいるとき、極東ブログのサイドバーにあった書名が目に入り、興味を持った一冊。
睡眠障害のさまざまな症例について学び、自分の睡眠のコントロールについて考えることができる。

どのような睡眠障害があるのか

メインは、睡眠をコントロールして成果を出すにはどうすればいいか?というような自己啓発的な内容ではなく、睡眠がコントロール出来ない人に対して処方箋を与えていくという流れ。江川達也の漫画が、各章の導入部に挟まる。

構成としては、遠藤氏が見てきた睡眠障害の事例を9例にパターン化し、その事例をまず江川氏が漫画にする。水野遥も出てくる。そして遠藤氏の解説がある。特徴的なのは、どの事例にも、行動計のグラフが出ていて、各症例の行動パターン化が可視になっている。行動計というのは腕に付けた万歩計のようなもので、実際その人が24時間どう活動しているか、どう寝ているか、寝ているときに動いているかなどが記録される。

紹介される睡眠障害は、睡眠相遅延症候群、過眠症、冬季うつ病夢遊病ナルコレプシーなど。
夢遊病で、寝ている間に親戚のおじさんの墓参りに行ってしまった話や、ナルコレプシーで自転車に乗りながら眠って事故を起こした話などは、ショックだ。もちろんそれほど重くない睡眠障害でも、そのせいで職場を転々と変わらなければならないなど当人は相当つらいだろう。
治療もかなり本格的に行っていて、中でも第9話の冬季うつの治療で出てくる光治療照明器具はインパクトが大きい。

  • 5000ルクスのポータブル型光治療照明器具の眩しい光を
  • 毎朝9時から2時間じっと見つめる
  • これを盆明けから3月まで毎日続ける

苦行のような治療で、これを紹介することで、かえって治療に向かわない人もいるのではと思ってしまうほど。それでも苦行と引き換えに日常生活を取り戻したいということなのだろうから、相当に辛い生活を送っていたということなのだろう。


なお、コルチゾールについては、よく知らなかった。第3話を読むと、これによって定量的にストレスを測定し、職場復帰などの指標にしているとのこと。長期休暇を取っていた同僚なんかも測っていたのだろうか。

副腎皮質から分泌されるホルモンで、糖質コルチコイドの一種です。糖代謝をはじめ、タンパク代謝、脂質代謝電解質代謝、骨代謝、さらに免疫機構にも関与しており、生命維持に不可欠なホルモンです。炎症を抑制する作用もあります。ストレスに関与し、過度なストレスを受けると分泌量が増加しますが、その反応はとても敏感です。ストレスホルモンとも呼ばれています。

これについては巻末対談でも話題に上っていて、「コルチゾールを測れば、その人が完全にグロッキーなのか、まだ働けるのかがわかります」という遠藤に対して、江川達也が「おまえはストレスが溜まっていない。まだやれるはずだ!」とどこまでも働かされることを危惧しているが、確かにその通りだと思う。巻末対談での江川達也は、遠藤医師を牽制して納得しやすい意見が多い。

睡眠をどのようにコントロールするのか

さて、睡眠のコントロールの仕方について繰り返し書かれる内容は以下の通り。(大体の内容は第4話に書かれている)

  • 人間の体内時計は1日25時間だが、朝日を浴びることにより体内時計をリセットしている。*1
  • 睡眠薬は継続的に使用すると、効かなくなるだけでなく、眠りの質が悪くなる。
  • ホルモン分泌などの関係から睡眠のコアタイムは0時〜6時で、その時間に眠れば質の高い睡眠が取れる。
  • 繰り返し現れるノンレム睡眠レム睡眠の最小単位は90分。
  • 寝だめ(貯金)はできないが、睡眠の借金はできるし、それを返済することが可能。(平日4時間半睡眠+土日は6時間+7時間半睡眠が作者の推奨案)
  • 高くなった体温が低くなる時に眠気を催すことを考えて、食事や飲酒は寝る3時間前、運動は2時間前、入浴は1時間前に済ます。

いずれも、以前読んだことのある内容ばかりだったが、時々こういうのを読んで、生活を見直すのもいいかも。作者の言うとおり朝は6時までに起きた方がいいのかもしれない。
自分は大体5時間〜5時間半睡眠のことが多く、推奨されている4時間半と比べてズレがあるので、そもそも90分の倍数というのが個人差がどの程度ある数字なのか、ピタリ4時間半にした方がいいのかというあたりに興味があったが、それについては触れられていなかったのが残念。


なお、このように効率を求める生き方に対して、巻末対談で江川達也がちゃぶ台をひっくり返す意見を述べている部分があり、面白かった。

僕も人生のなかで、どんどん効率を上げるようにした時期があるので、よくわかります。でも、精神的にどうしようもなくなって、他のステージにも移れないときってあるじゃないですか。
(略)
僕の場合、そういうときは、自分の欲を減らすことでバランスをとってきたんです。
(略)
欲を減らすと、何もかもがハッピーに思えてくる。本当のピンチのときって、新しいステージに行くこともできないし、行っても解決になりませんから。

最後にこういう意見も入っていることで、何かとバランスが取れた本になっているように思う。
漫画が入っているので、簡単に読めるし、久しぶりに江川達也の存在感を味わうことができてとてもよかった。
江川達也の最近の作品も読んでみたい。(それにしても江川達也の描く女性はすべて胸が大きい。驚くほどに。)

マンガ最終戦争論 (PHPコミックス)

マンガ最終戦争論 (PHPコミックス)

桶狭間合戦の真実―織田信長物語 (SPコミックス)

桶狭間合戦の真実―織田信長物語 (SPコミックス)

源氏物語 1 桐壺 (愛蔵版コミックス)

源氏物語 1 桐壺 (愛蔵版コミックス)

家畜人ヤプー 1 (バーズコミックス)

家畜人ヤプー 1 (バーズコミックス)

参考(過去日記)

→このエントリで取り上げられている、「ドクター中松 スリーピングメソッド」が素晴らしい。そして6年前の自分の方が文章がうまい。何故?

*1:体内時計が24時間ではなく25時間であることの理由について掘り下げたSFを読んでみたい。多分ありますよね。