- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/02/20
- メディア: 新書
- 購入: 5人 クリック: 37回
- この商品を含むブログ (144件) を見る
そういう感性が完全に確立した、10年前のエヴァンゲリオンブームのときから、大塚英志の文章と付き合ってきたせいか、この人の文章は、非常にツボをつく。作品との向き合い方に共通する部分が多いのかもしれない。(勿論こちらが影響を受けたのだろうが)
この本のメインテーマである「キャラクター小説の作り方」というのは、いくつかあるテーマのうちのひとつで、実際には、「キャラクター小説と私小説の違い」が中心テーマで、『教養としての〜』で取り上げられた「アトムの命題」も大きく取り上げられる。さらに、これの延長として戦争をどう取り上げるか、という問題が提示される。
というように、「作り方」のみを求めた読者には不親切なつくりなのだが、「教養」を深めるためには、非常に役に立つ内容。
ただし、最終講では田山花袋『蒲団』論にかなりのページを割かれているなど、やり過ぎの感はある。
そうは言っても、この最終講も含めて、読み返したい箇所も多かった。文庫版は、さらに内容が追加されているようなので、購入したい。
(補足)テーブルトークRPGについて
なお、この本では、キャラクター小説を書く力をはぐくむ場として、テーブルトークRPGを推奨している。
この流れで、キャラクター小説を書くために必要な技術を以下の3つの役割分担に喩えて紹介している。
- 「ゲームデザイナー」:世界を作る人(この技術に長けた人として清涼院流水を挙げている)
- 「ゲームマスター」:物語を作り、管理する人(同じく、恩田陸を挙げている)
- 「プレイヤー」:キャラクターとして実際に物語を演じる人
これはなかなか面白い。自分は、どれも苦手だなあ(笑)
自分は、テーブルトークRPGは、やったことも見たことはないが、リプレイ作品*1なら読むことはできるので、ちょっと見てみたい。
今後読みたい作品memo
- 『多重人格探偵サイコ』:勿論、大塚英志が原作ということで、本書内でも何度も取り上げられている。実は、『MADARA』も含めて、田島昭宇作品は全くの未見なのだが、ブックオフであればすぐゲットの予感。
- 『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』:近代以降の「写生」を重視する自然主義文学の伝統から逸脱した例として挙げられた、穂村弘の短歌集。いわば「キャラクター短歌」の試みである、と書かれたこの作風こそが、穂村弘と枡野浩一を分ける重要な部分なのだろうと思った。
- 小野不由美『東京異聞』:「ズレた世界」の例として挙げられていたが、この本は読もうと思って10年以上経っている本の一冊。ケリをつけたい。
- 『木更津キャッツアイ』:「アトムの命題」の一例として取り上げられている。『ビューティフルドリーマー』との対比もあり。一話ごとにマメに見ていくことにする?
- 清涼院流水の諸作品。東浩紀『動物化するポストモダン』の中でも大々的に取り上げられていたこともあり、これは読んでおきたいところ。